表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

タピオカと王さま


王「暑いのー」


 王さまは今日もせっせと外交です。行きつけの大使館から外に出ると、

日本の真夏の陽ざしが、王さまの肌をこんがり焼こうとしてきます。

 慌てて王さまがリムジンに乗ると、クーラーがガンガンに効いていて、

ほっと一息つきました。


王「ここ、我が家に決定!」

SP「いや、車ですから。王さまは本宅と別宅、全部で8軒あるじゃないですか」

王(…ふむ、そういえば実際使ったことがあるのって、本宅と3軒くらいだな…)


 王さまは残りの4軒がどこにあったかを思い出せないまま、

リムジンの冷蔵庫を漁ります。


王「シャンパンしか無いのー」

SP「あ、冷えてないお茶もありますよ」

王「…え…わし、そういう気分じゃない」

SP「なんてわがままな王さまなんだ」


 面倒そうにSPがため息をつくと、運転手が声を掛けます。


真面目な運転手「王さま、自家用ジェットの出発まで時間あるので、

コンビニ寄りますか?」

王「そうじゃのー。コーラ買うかー」


 そう言って王さまが、窓の外を眺めた時でした。


王「レディがいっぱいおる!」

SP「え?どこ?」

王「ほら、あのお店、すごい行列じゃのー」

真面目な運転手「私はよそ見ができないので分かりません」

SP「あ、ほんとだ。若い女の子達がめっちゃいる。夏休みって感じですね」

王「なんのお店なんじゃろー」

SP「うーん…何かを飲んでいるようですが…日本語全然分かんねぇ…」

真面目な運転手「私はよそ見ができないので、近くに停めます」

王「え、あ、うん…」


 リムジンを停めて、王さまとSPは、店をチラ見しに向かいました。


SP「これはお茶、ですかね?ミルクティー?」

王「わし、ミルクティー大好き」


 しかし、近づいてみると、容器の底には黒いツブツブが入っています。


SP「…え、何あれ、カエルの…」

王「いかん!それ以上は言ってはいかん!わしもそう思ったけど、

それ以上はいかん!」


 王さまは、キラキラした乙女達が何枚も写真を撮り、

それを口にする光景になんとなく恐れを抱き、

やっぱり暑いしもう我が家(キンキンに冷えたリムジン)に帰ろう、と

SPにアイコンタクトを送りました。しかし、SPはスマホを

操作していて気づいてくれませんでした。


SP「あれはツイッターでバズッてる台湾発祥の飲み物で、

黒い粒はタピオカっていうらしいですよ」

王「TA・PI・O・KA…」


 王は朝食べたキャビアのブリニ添えを思い出しながら、フラフラと

その行列に並びました。慌ててSPが止めようとします。


SP「王さま!まさかこの列に並ぼうというのですか?

このJKばかりの列に!大柄で、立派な白ひげを蓄えた、

180cmはある巨体の、まるでサンタクロースのような容姿の王さまが!」


王「うん、だってタピオカ飲んでみたいもん。SPは?奢ってあげるよ?」


 そうして2人は仲良く列に並びました。思ったよりも素早く列は進み、

ディズニーランドで例えると、カリブの海賊くらいのスピード感でした。


 一口飲んでみると、本格的な台湾のミルクティーと、

もちもちとした歯ごたえ。


王「タピオカって、味無いね」

SP「う、うーん…いや、薄っすらと…味がするような?」


 王さまとSPは「美味しい美味しい」と、口をもごもごさせながら戻りました。


真面目な運転手

「おかえりなさい。もしかしてそれ、今流行りの

タピオカミルクティーですか!私も飲みたかったんです!」


王「あ、ごめん、買ってくるの忘れた。

代わりにシャンパン飲んでいいよ、冷えてるよ」


 運転手は悔しそうな顔をしながら、かぶっていた帽子をSPに渡し、

交代してもらいました。


元SPの運転手

「自家用ジェット機だから乗り遅れませんけど、もう出発しますよ」


王・元運転手「「はーい」」


 そうして王さまは自国に帰ると、お抱えシェフにタピオカを

作ってもらうようになり、国民からは「カエルの卵を飲む王さま」と

呼ばれるようになりました。


 その頃日本では、サンタクロースのコスプレだと思われた王さまが、

JK達と行列に並ぶ様子が、インスタでちょっとだけ話題になりました。


王さまからの一言

「おおさまじゃないよ、おうさまだよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] タピオカの列が進む速度をカリブの海賊くらいってのが面白かったです☆ あと、カエルの卵を飲む王様ってかわいそうf(^_^) おうさま、了解ですー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ