1ー3 観察する元営業課長(笑)
投稿ぅ!
三日以内に間に合いました!
時が過ぎるのは早いもので、俺がこの世界に転生してからおよそ半年が経った。
まぁ早かったとはいってもこれまでは基本的に寝てる生活だからな。
起きてる時間のが短かかったくらいだから、そりゃ過ぎるのも早く感じるか。
ただこの世界の赤ちゃんも元の世界と成長速度が変わらないのか、四ヶ月程が経過してから出来る事が一気に増えた気がする。
まず手足をある程度自由に動かせるようになった。
前までは痺れて動かなくなった時のように微かに感覚があるだけで、自分の意思で自由に、とはいかない申し訳程度にしか動かせなかったんだが今はもう普通に動かせる。
無事に首もすわり、寝返りや一人で座る事も出来るようになった。
一人立ちまで後一歩といったところだろう。
・・・文字通り一人で立つ事は、な。
決して独り立ちではないのであしからず。
だが順調なのは身体の成長だけではない。
言語についてもかなりの進捗があった。
むしろこれが一番変化した部分かもしれない。
最初この世界の言語がまったく理解出来なかった俺だがここ最近、ようやく日常的な会話が理解できる程度には覚える事が出来ていた。
まだ偶に分からない音はあるものの、ひらがなでいったら五十音の殆ど分かるって感じかな。
いやー、赤ちゃんの脳が優秀なせいだろうけど、それでも新しい言語を数ヶ月でほぼマスターできる俺ってちょっと凄くないですか?
俺はやれば出来る子なのだ。
褒めてくれてもいいのよ?
・・・あ、そうそう。
褒めるといえば言葉が分かるようになって例のメイドさん達の会話も聞き取れるようになったのだが、いや正確にはこのメイドさん達の会話のお陰で言葉を覚えれたので逆説だけれども。
とにかくそこで分かった事があった。
例えば、例のケモっ子メイドさん達は俺に甘々のデレデレであるという事。
どうやら俺のこの世界での名前はアルナスというらしく、事あることごとに「アルナス様は凄いですね〜!」とか「アルナス様は本当可愛いですぅ〜!」だとか何かにつけて褒めてくれるのだ。
基本的に俺は褒められて伸びる子なので個人的にはこの待遇は全然アリなんだけど、この猫可愛がりぶりはこの世界では普通なんだろうか?
もしそうならなんてステキな世界なんでしょう。
ちなみにこのケモっ子メイドさん達の名前も判明した。
金髪のホワホワ系犬耳メイドがミリで、クールビューティな猫耳メイドがハルアだ。
自信はないが、恐らく間違っていないだろう。
各々の細かい性格なんかはまだ完全に把握しているわけではないが、元営業課長の鋭い観察眼(笑)から見れば二人共見た目通りというか、雰囲気通りという感じかなぁ。
犬耳メイドことミリはまさに「犬」のようで、あんまり細かい事は気にせず尻尾振り全力全開で俺を愛でてくる。
スタイルも抜群なので抱きしめられたりした際は俺もとても良い心地になれるのだ。えへへ。
だが不思議と邪な気持ちは湧いてこない。
ただ純粋にいい匂いがするなぁ、とかあぁ柔らかいなぁとか思うくらいだ。
あれ、純粋だよね?
ともかくこう、一切情欲的なものは湧いてこないんだよなぁ。
きっと年齢のせいだろうとは思うが、ここまで反応しないと少し将来が心配だ。
いや生後半年で反応したらしたで怖いんだけどさ。
今はいいとして、大きくなったらちゃんと機能してくれよ?マイサン。
ま、それは今から気にしてもしょうがないか。
俺は生涯付き合っていく相棒を信じて待つのみだぜ。
んんっ
気を取り直して。
次はハルアについてか。
ハルアは、簡単にいうとミリと対照的、である。
クールビューティな見た目通り普段は冷静沈着そのもの。
はしゃぎっぱなしのミリとは正反対だ。
家事スキルもカンストしているのか、普段から常に暴走気味なミリを窘めつつもせっせと俺の身の回りのお世話をするというなんとも器用な事をソツなくこなしている。
ミリもやってくれる事はやってくれるのだが割合でいうなら愛でる八、お世話ニって感じかな?
なのでお世話のメインはハルアでたまにその補助をミリがする形だ。
ミリに関してはハルアに窘められても全然懲りないからな。
だけど俺だけは知っている。
ハルアの秘密を。
ミリが俺を抱きしめたり頬ずりしているのをしっかりと窘めてはいるが、その実自分もしたそうに猫耳や尻尾がウズウズしている事。
そしてミリの目が無くなった隙に我慢していた分を取り返すが如く、とても緩みきったニマニマした顔で俺を抱きしめているのを。
・・・まぁ、まとめると。
なんていうかさ。
対照的な二人ではあるけど可愛いよね、本当。
前世の俺であれば二人の美少女具合に下の方は元気になりそれも合わせてキョドりまくっていただろうが、今は性欲がないからかそんな二人をとても落ち着いた気持ちで見れる。
まるで可愛い妹を持った気分だ。
もしくは可愛い娘かな?
俺に娘なんていなかったけど。
俺にいたのは息子くらいだな。主に下半身に在住の。
とまぁ俺から見た二人は大体こんな感じだが、相変わらず両親に関してはその姿さえ見ていない。
だけどもしかしたら?というのはあった。
ミリとハルアの会話で偶に出てくる「ウィンフィード伯爵」という名前。
まだまだ信憑性はないけど、俺の予想ではこのウィンフィード伯爵が俺の親だ。
ただそうなってくると嫌な予感しかしないんだよね。
俺はそういう事には全く詳しくはないが、俺が読んだラノベやアニメを参照するなら伯爵ってかなり位の高い地位のような気がする。
なので相応に忙しいから姿を見せられない、って可能性も無くはないんだろうけど・・・
生まれて半年以上その親を見ていないとなればもう厄介ごとの匂いしかしない。
出来ればこの世界でそういう人間関係のゴタゴタに巻き込まれたくはないので何事もなければいいんだけど・・・
そういうのはもう前世で懲り懲りだよ。
営業ってかなり人間関係に神経使うからな。
とにかく、言語を理解したお陰で情報に色々と進展があったわけだし、これからも要チェックでいこう。
今はそうするしかないからね。
♢♢♢
「アルナス様ぁー!ミリが来ましたよぉ!」
「あぁノックもせずに!そしてミリ声を荒げないで下さい!アルナス様がビックリしたらどうするんですか!全く」
俺が度々くる睡魔に負け惰眠を貪っていると、ガチャッという音と共にミリとハルアが入ってきた。
ミリの方は相変わらず元気一杯な様子で、ハルアはそんなミリに苦言している。
大丈夫だよハルア、いつもの事だからもう驚かないさ。
「もうっ相変わらずアルナス様は可愛らしいですねー!」
ハルアの苦言にもなんのその。
ミリはビックリするくらいのスピードで俺に近付くと抱き上げて頬ずりをした。
これで一回も走っていないというのだから驚きだ。
何故そのスピードが出るし。
武術か何かなのかな?
しばらく俺がその事について考えていると、俺にひたすら頬ずりしていたミリがふと顔を上げた。
「でもアルナス様って、時折私達の言ってることが分かってるんじゃないかなって時があるんですよねー。そんなわけないんでしょうけど」
ギクリ。
「何です、急に?」
「いやぁふと思ってねー。ハルアは感じたことない?」
「思うところがないわけでは無いですが・・・」
「でしょでしょ!!きっとアルナス様は天才なんだよぉ〜」
えへへ、と大変可愛らしい笑顔を見せるミリ。
本当なら「その笑顔にプライスレス!」とサムズアップを決めたい俺だが内心ヒヤヒヤものでそれどころではなかった。
ミリはアホの子ではなかったのだ。
くそぅ!アホっぽく見えて実は鋭いとかそこまでテンプレに添わなくてもいいのに。
俺の内心の焦りを感じたわけでも無いだろうがハルアも慈愛を感じるような笑みを浮かべて俺の方を見た。
やめてっ
今は見ないで!
「きっとそうなのでしょう。あの方の血を引いているのですから。もしかしたら魔法の才をもお持ちなのかもしれませんね」
そうだね!うん、きっとそうだよー!と返事をするミリ。
だが俺はそれどころではなかった。
先程の焦りを完全に忘れ、困惑する俺。
今、ミリはなんて言った?
・・・魔法、とな?
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次からようやくファンタジー感だせそうです。
ちなみにミリとハルアに関しては今のところヒロイン候補になる予定はありません。
大切な人枠の予定です。
[18.11.28 文章を修正しました]