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異世界転生で打倒勇者の勇者になりました  作者: 雨宮 静
1 幼少期編
1/6

1ー1 プロローグ

前半部分が自分とダブっていて胸が痛いですわー。

そういえば、必死に何かをする事、なくなりましたよ、えぇ。


私の他にもこれを読んでくださってる方の中で同じような方がいるかもしれませんね。

必死に何かを成そうとしなくなったのはいつ頃からだっただろうか。


中学生の時?それとも高校生の時か?

---否だ。


中学生の頃は部活や高校受験の為にあまり頭の出来がよろしくなかった俺は必死こいて勉強していた覚えがあるし、高校生の時は部活にバイトに、何よりダチと遊ぶ事に熱を注いでいた一番充実していた時期だ。



小学校より前となるとイマイチよく覚えていないが、きっと何をするにも一生懸命だった事だろう。



そう考えれば、答えは自然と社会人になってからということになるが・・・


だが高卒で働き始めた俺は新入社員当初、他の社員に差を付けたいが為必死になって仕事を覚えていなかっただろうか?


それこそ仕事を任される事に喜びを覚え、慣れる事に安心していた筈だ。



では一体いつから---あぁ、分かった。


きっと答えは「この世界に飽きた時から」だ。


毎日毎日代わり映えのしない日々を過ごし、ただただ時間を浪費していくだけの日常。


そしてそんな人生を少しでも変えたいと、今あるもの全てを捨てて新しい事でも始めてみようと考えはするものの、中途半端に築き上げた社会的立場が邪魔をして保身に走ってしまう自分自身。


それら全てに嫌気が差し世界そのものに希望が持てなくなった時からきっと必死になる事を辞めてしまったのだ。


(あぁ・・・もっと、必死になれる何かを見つけてりゃ良かったな)



重力に従い落ちていく中で、ふとそう思った。


これがきっと、後悔という奴なんだろう。

だがもう戻ってやり直す事なんて出来やしない。


だから後悔なんて言葉があるんだ。


まぁ駅のホームから絶賛落下中の俺には尚の事どうしようもない事だな。


そう、俺は今駅のホームから落ちていた。


ちなみに、別段自殺しようと思ったわけではない。

ただ単に、押されただけだ。

トンっと。


それが害意があってなのか、単なる事故なのかは分からないけれど少なくともホームの最前列にいた俺が落ちるには十分な衝撃的だったみたいで・・・



いとも簡単に俺の身体は弾き出されてしまっていた。


(あーあ、これで終わりか。呆気ないなぁ)


鳴り響くブレーキ音に、金属同士が奏でる甲高い金属音。


耳に入ったそれらの音で既に俺は生きる事を諦め、なるべく痛くなきゃいいなぁ、なんて考えていた。


だって電車との衝突だぜ?


普通に考えて助かるわけがない。



なのでせめて痛いのは勘弁して貰いたいと思ったのだ。

逝くなら一瞬で。


うん。それがいい。



まぁ結局、俺は最後の最後まで必死になれなかったのだろう。


「生きる」っていう人として、生き物として必要最低限の事でさえ。


咄嗟に「生きたい」だとか「死にたくない」と思うよりも楽に逝きたいと思ったのがその証拠だ。


でも、仕方ないだろう?


それが俺なんだから。


ほら、そんな事を思ってる内に電車がもうすぐそこまで。


やはりといっていいか、咄嗟にかけたらしいブレーキも虚しくそのままの勢いで突っ込んできた電車。


それと同時に何処からか悲鳴らしきものが聞こえるが、いや、申し訳ないね。

あなた達は今からグロ画像よろしくエゲツない光景を目の当たりにしてしまうでしょう。


晴れ後々血飛沫。


なんてね。


最後の最後で本当どうでもいい事を考えていた俺は幸か不幸か願った通り、体が車両とぶつかったと感じた瞬間に特に痛みらしい痛みも感じず、アッサリと意識が遠のいていくのをどこか他人事のように感じていた。





♢♢♢





気が付くと、俺は誰かに抱えられていた。


いや、抱かれているといった方がいいか?


だがそれが誰かなのかは分からない。

視力は悪くない筈なのだが、まるで視界に靄が掛かったようにボヤけてよく見えないのだ。


前に何かの講習で「視力の悪い人世界体験メガネ」をつけた時と同じような感覚だった。


そして聴覚の方も不安定で、時折周りから音は拾えるものの正確な「言葉」や意味のある「音」としては到底理解出来ない程度にしか聞き取れない。


というかそもそもだ。


俺は助かったのだろうか?


走る電車に体当たりぶちかまして?


現実的に考えて有り得ないと思うのだが、それでもこうして意識があるんだから奇跡的に助かったのだろう。


・・・あーあ。


出来れば死にたかったなぁ。


不謹慎な事かもしれないが、俺は本心からそう思ってしまう。


だって目も耳も元とは比較にならない程悪くなってるみたいだし、何よりさっきから身体が思うように動かないんだもん。



なのにこうして考えられるという事は意識だけはしっかりしている、と。



きっと助かったのは助かったんだろうけど本当に「命」だけ繋がったって感じなんだな。


俺は医学の知識なんてからっきしなので素人判断にはなるけど、状況を考えればあながち間違いでもないだろう。


正直考えられる限り一番最悪なパターンだ。


もしかしたらリハビリを頑張ればこの身体もそれなりに回復するのかもしれないけど、絶対とは限らないし、何よりかなりしんどいって聞くよな、リハビリ。


オレ、シンドイノ、イヤ。


こんな不自由な生活を強いられるならいっその事死んでしまった方がよっぽど楽だったと改めて思う。


本当神様って奴は空気を読まない奴だよ。全く。


俺は相変わらず誰とも知らない人に抱えられながら内心でそう愚痴った。


とにかくこれからどうなるか・・・。


この先の見えない未来を想像して不安になった俺は取り敢えず--盛大に泣き喚いた。


え。


あれ?


なんで俺泣いてんだ?


いや、不安なのは本当だけど全然泣くつもりなんてなかった。


だけど何故か感情の制御が全く出来ずに哀れにも泣き喚いてしまう。


うわぁ、成人男性が泣き喚いてる姿とか滑稽どころの話じゃないんだろうな。

・・・恥ずかしいぃー!!今すぐ消えて無くなりたいッ。ぁ、リアルに死に体でした。


と、それはそれとして。


うーん。


冷静に考えればこれって手足だとかだけじゃなくて脳にまで障害を負ってしまったという事だろうか?


確か前に、脳に障害を負った人で今の俺みたいに感情の制御が出来ない人がいる、というのをテレビが何かで見たような気がする。

もしそうならより状況は悪くなった事になるな。


目も見えず耳も聞こえず身体も動かない。


挙げ句の果てに感情の制御も出来ないと。


それって生きてる意味あるのか?

なんて思ってしまう。


もはや、今の俺って死に体というよりもまるで生まれたての赤ちゃんみたいだ。


ふと、俺はそう思った。


ん?


赤ちゃんみたい?


普通に考えてまず助からないだろう事故にあって、目が覚めたらこんな状況に・・・何処かで目にしたような展開だな。


---まさか?


・・・いや、いやいや。


そこまで考えた俺だったがすぐにその考えを否定する。



きっと俺の考えすぎだろう、と。


まさかそんなアニメやラノベみたいな事がある筈ない。

あるわけが、ない。


でも。


もしこれが俺の想像している通りだったとしたら。


それはきっと---





♢♢♢





あの不慮の事故からおよそ一か月と少しが経っていた。


俺は相変わらず生きている。


あの目覚めた時と状況は全く変わっておらず、手足も自由に動かせなければ感情の制御も上手く出来てないけど。


あぁいや、視力と聴力に関しては若干良くなったかな?

あの時と比べてある程度は見えるし聞こえるようになってはいた。


まぁでもその程度の進捗だ。


そんな絶望しか待っていない現実に次第に身体窶れ痩せ細り、精神が擦り切れてしまった俺は改めて今か今かと死を待ち望んで---いなかった。


むしろこれからの未来に希望を抱き、一日一日を楽しみにしている俺がそこにいた。


世界に飽きた?


早く死にたい?


挙句に神様は空気を読まないだとか。


そんな事を言ってる奴がいたら一発ぶん殴ってやりたいね。



いやぁ生きるってのは素晴らしい事だよ、本当。


世界に飽きたとか、意味が分からない。

こんな世界、飽きる方がおかしいぜ。


こんなファンタジーな世界を!


そう、ファンタジーな世界。


言葉の通りだ。

アニメとかラノベとかでよく出る、アレである。



よくよく思い返せば、自分の状態を把握したあの時、俺はまさか、と思った事があった。


それはよく読んでいたラノベやアニメのように俺ってば「転生」したんじゃね?という事だ。


読んでいた転生もののラノベやアニメの状況に余りにも酷似していたためふと思ったわけだが・・・。


まぁ現実的に考えて可能性はゼロに近いし、そもそも普通のリーマン(営業課長)26歳だった俺がそんな不思議体験を出来る特別な存在だとかも思ってもいなかったので「だったらいいなぁ」程度にしか考えていなかった。


だけどそのまさかでした。


いやぁありましたよ奇跡。


最初の一ヶ月は「まさか」と思うだけで拡散なんてまるでなかった。



だけどここ最近のある事がきっかけで確信を得る事が出来たんだ。


それにここまで覚めない夢ならもう現実だろう。

誰がなんと言おうと現実なのだ。


うん。もう間違いない。


俺は、ファンタジーな世界にいるんだ。


それもハイファンタジーもののテンプレなアレを経験して。







そう、どうやら俺は---異世界へ転生したようだった。

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