七拾八 個人事業主たちの悲哀
「おや、本当だ。早く支度をしなくっちゃ」
と清さん。
「私たちも手伝いますよ」
米さんと美登里さんも、一緒に台所に向かった。
寅さんとヤンマーは、早速、縁側に上がってくる。
床下を覗いた寅さんが、驚いた。
「おい、欽之助。一体何をやってるんだ。白蟻を調べるのに、何で土を掘り上げてるんだ?」
「いやあ、アハハハ……」
おれが誤魔化していると、
「ついでにお宝探しをしようってことになりましてね」
と、キョンシーが馬鹿正直に言う。
「こんなお化け屋敷に、お宝なんてあるものか。なあ、誠」
「そりゃ、そうだ。人骨が埋まっていることはあっても、お宝はないな」
ヤンマーが、当たらずとも遠からざるような怖いことを言う。
「そ、そうだよな。おれが馬鹿だった。さあ、早く片付けてしまおう」
おれはスコップを使い、掘り上げた土をさっさと穴に戻す。
キョンシーが、また尻をからげて、鍬で土を均し始める。
つる坊は、手持ち無沙汰気味に突っ立ったまま、何かぶつぶつ言っている。
耳を澄ましたら、
「今日は一体、何て日なんだ……」
と言っているのが聞こえた。
キンケツは縁側の柱に寄りかかり、片膝を立てて座っていた。不貞腐れたような顔で、外のほうを向いている。このまま何もしないつもりだろう。
二人のことは放っといて、四人で杉板を並べていった。
キョンシーが、率先して釘で打ち付け始めたが、すぐに、
「イタタ」と悲鳴を上げる。
自分の指を、金槌で叩いてしまったようだ。
「ああ、もう、これだから……。先生方はもう休んでいてください。あとは我々でやりますから」
寅さんが言う。
「それがいい。良かったらシャワーでも浴びたらどうですか?」
と、ヤンマー。
二人とも口に数本の釘を咥えながら、片っ端から金槌で叩いて張り付けていく。
「器用なものですね」
キョンシーが感心している。
「百姓は、一見使い物にならないような端材だろうが、何だか分からない部品だろうが、皆捨てずに取っておくんです。それで農機具でも家の中でも、自分で直せるものは何でも直します。だからこそ、何とか食っていけるんですよ」
「へえ、そうなんですか」
寅さんが珍しく真面目に喋るので、キョンシーも神妙に聞いている。
「何の仕事でも、食っていくのは大変なんだなあ。僕だって、いつ飢え死にしてもおかしくない」
「先生がですか? 和服姿でテレビなんかに出て、華やかな生活をなさっているように見えますがね」
「これは仕事道具ですよ。あなたの使う鍬やスコップみたいなもんです」
両手で着物の袖をひらひらさせながら言う。
「華やかなようには見えても、明日をも知れない身です。将来の保証なんて、何もありません」
「キョンシー、僕は先にシャワーを浴びてくるよ」
さっきから所在なさそうにしていたつる坊が言う。心なしか、憂わし気な表情をしていた。
「僕はその次にさせてもらおう。もう少し見学していたいから」
と、こちらも何となく沈んだ調子で言う。