廿 爺ちゃんからのアドバイス
「可能ですよ。ただ――」
コイブミ」は、ここでちょっと勿体ぶるように、ゴッホゴッホと咳払いをした。
「ただ、雲吉さんは今のあなたの惨状をよく御存じでしてね」
「爺ちゃんが……?」
「ええ、一部始終をご覧になっています」
「あっ、そうか。老子の掛け軸の中から――」
「はい、あなたのことをひどく案じておられます。もともと手紙の中にしたためられていたことなんですが、実は直接伝言するようにも頼まれています。ほら、この最後のほう、モンジ老さんに食われてしまった部分なんですけどね、雲吉さん、こうなることを予測していたんでしょうなあ」
何だ、そんなことなら余計な講釈ばかり垂れていないで、最初から言ってくれたらいいのに。
「で、祖父は何と?」と急き込むように聞くと、
「まあまあ、お待ちなさい」とたしなめるように言う。
それからまた、勿体ぶるようにゴッホゴッホと咳払いをした。
仕方なく、じりじりしながら相手の答えを待っていると、ようやく厳かな御託宣が告げられた。
「あやかしに頼らず、自分で解決しろ。雲吉さんはそう仰いました」
「えっ?」
すっかり拍子抜けしてしまった。さんざん焦らしておいて、答えがその一言だけとは。
コイブミはこちらの反応を楽しむかのように、微笑んでいる。
おれは、いささか気分を害しながら言った。
「しかし、自分で解決するにも、向こうさんの気持が分からない以上、こちらにも手の打ちようがないじゃないですか」
「たとえそうだとしても、あやかしの力を借りようなんていう料簡は、よろしくないですな」
「…………」
「そういう人間が一番怖い。何かとんでもない、取り返しのつかないことを仕出かしてしまう。そうじゃありませんか?」
「いや、しかし、蛇の道は蛇ともいうじゃないですか。だからこそ……」
だからこそ、バスガールと取引をして、乱れ髪の追い出しにかかったのだ。
言われなくても自分で解決すべく、化野不動産に尻を持ち込んだが、一蹴されてしまった。
それならばと、イソベンにも相談してみたが、法律では解決できないとこれも体よく断られてしまった。
これ以上、おれに何ができるだろうか。
すると、
「あなたにはできるはずですよ」
とコイブミが言う。
一体全体、何だってこう、どいつもこいつも、いかにもおれの心中を見透かすかのようにタイミングよく話をするのだろう。




