深夜のN分小説執筆 2017-07-29 投稿分
ザー………………
「ねえねえペーター? 昨日ね、世界が終わったんだって!」
寄せては返す波を前に、浜辺で一人、少女は鳴り止まないラジオに語り掛ける。
「今夜、とうとう世界が終わるんだ! 歴史的瞬間よ? そんな場面に立ち会えるだなんて、素敵なことだと思わない?」
くるりと回って踊る少女は、ただただ楽しそうに言葉を紡ぎながら、陽の光に煌めく水面にステップを刻む。
活き活きと、軽やかに。
パシャ パシャ と水飛沫が煌めいて、緩やかに弧を描いては水面に消え行く。
「そうだ!」
少女はぴたりと足を止め、大慌てで『ペーター』を掴んで丘を駆け上がる。そよ風に揺れる緑のさざ波に、裸足のまま足跡を刻んで。
「お爺さんにお手伝い頼まれてたんだった! 世界の終わりどころじゃないわ! お爺さんに怒られちゃう!」
少女と一緒にガタガタと揺れる『ペーター』は、少女に世界の終わりを告げてからずっと、電子のさざ波しか響かせることはなかった。
彼は壊れなかった。
少女も終わらなかった。
彼に届かなくなった電波だけが、彼等以外の世界の終わりを告げていた。
さざ波が響く。
壊れなかったRadio と共に、絶え間なく、終わらなかった世界で。
彼女の名はハ○ジ