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ツールの話をしよう  作者: 九曜双葉
校正支援ツール
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Tomarigiのインストール

 自分の欠点は自分では気付かない。

 人は鏡の中に見たい自分を映す。

 見たくない自分は鏡に映さないし映っていたとしても認識できない。

 自分の姿は自然であり自分の声は周囲に違和感を与えないはずである。

 誰もがそう信じている。


 己の自分自身に対するイメージは美化されている。

 どのような悲観的な見方をする者であってもだ。

 ある視点では確かに必要以上に自己を矮小わいしょう化して見るかもしれない。

 しかしトータルでは実際以上に美化して認識している。


 自分の好きな言葉を自分の声で録音してみると良い。

 再生される声に違和感を感じるはずだ。

 再生される口調は薄っぺらく好きな言葉はこんな口調で言うべきではないと感じるはずだ。

 こんなのは違う、こんなのは自分ではないと。


 野生の猿に鏡を見せると鏡に映る己に攻撃するという。

 時には鏡を壊すほどに。

 攻撃するのは見慣れない猿がいるからだ。

 しかし野生の猿は己より強いと見る相手に簡単に殴りかかるのだろうか?

 そんなはずはない。

 鏡像に殴りかかるとしたらそこに映る相手は自分より矮小わいしょうかつ貧弱に見えるのだろう。

 鏡を見慣れない野生の猿には鏡は真実を映してみせる。


 推敲すいこうは楽しい。

 自分の書いた文章をより美しくつややかに磨き上げてゆく行為だからだ。

 よりシンプルにしよう。

 より伝わりやすくしよう。

 より美しく、より芸術的に。

 そういったよりチャレンジしがいのある行為なのだから。


 校正とは己の生み出した可愛いくてしかたがない愛娘まなむすめを愛なく批判的な目で観察する行為である。

 その視線は冷徹で冷静なものでなくてはならない。

 そんな視線でなければあらは見えてこない。

 誰にでもできる行為ではない。


 個人差はあれどセルフレビューには限界がある。

 レビューに客観的な視点が必要なのは言うまでもない。

 ソフトウェアデザインに限らず、ほぼ全ての製造物においてレビューは必要である。

 愛のない批判的な視点が必要である。


 しかしそんな愛の無い視点を家人や友人にお願いするのはどうかと思う。

 相手は貴方の原稿が貴方にとって愛娘に等しい存在であるとは思っていないからだ。

 できの悪いテキストに対して彼らの常識により親切なレビューを行ってくれるだろう。

 それが貴方の正気を削っていく。


 可愛い我が子の欠点をあげつらわれて冷静でいられるほうがどうかしている。


 なぜうちの子をそんなに悪しざまに言うのか?

 それは欠点ではなく個性だ。

 確かにピーマンは食べられないが隣の子も同じだろう?

 毎日歯を磨いている。

 悪いところではなく良いところを見てくれ。

 そう反論したくなるのは人として正しい。


 真実をえぐる適切ではあるが冷徹なアドバイスを得ることで夫婦関係が終了してしまうことは避けなければならない。

 友情が消え失せることは避けなければならない。


 貴方が友人から、もしくは伴侶から小説のレビューをお願いされたのなら深呼吸が必要だ。

 そして言葉を選ぶべきであろう。

 優しいうそも時には必要である。

 そして優しいうそを受け入れるのも愛ある大人の対応である。

 ワナビである私たちは友人や家人に過度な期待をするのは止そう。


 せめて校正は校正ツールに任せて、それで良しとしようではないか。


 私のノートPCにはマイクロソフトのワードがインストールされている。

 ワードには「スペルチェックと文章校正」という機能がある。

 テキストエディタで書いた原稿を投稿前にワードに張り付けて「スペルチェックと文章校正」をかける。

 意外と適切な指摘をしてくれる。

 意外と使える。


 しかし残念なことにマイクロソフトのワードは無料ただではない。

 私がワードを買ったのは家に仕事を持ち帰るという悲しい理由ではもちろんない。

 それは全く真実ではない。

 今ではPTAの資料作りに役立っている。

 だが、ここでマイクロソフトのワードが如何に良いソフトであるかを書きたくない。


 代わりにTomarigiのことを書こう。

 Tomarigiは青山学院大学の日本語表現法開発プロジェクトが開発する校正・推敲すいこう支援ツールだ。

 Windows10のローカル環境(WEBベースではないという意味で)で動作する無料のツールでこれ以上のものを私は知らない。


 インストールはやや難しい。

 Tomarigiの配布サイトはすぐに見つかるはずだ。

 しかしTomarigiのインストールに先立ち、".NET Framework 3.5"、"mecab-0.996"、"Cacboha 0.68"の三つをインストールする必要がある。

 しかしTomarigiのダウンロードサイトではこの三つはいずれも既に一年以上にわたりリンク切れになっている。


 何故リンクを修復しないのか疑問を感じるが、三つともググればすぐに見つかるのでさして問題はない。

 注意事項としては"mecab-0.996"、"Cacboha 0.68"はsift-jisを選択する。

 UTF8ではない。


 ちなみにmecabもCacbohaもそれ単体で偉大なツールであるのだがここでは取り扱わない。


 ここまでくれば後は特に難しいことはない。

 Tomarigiの配布サイトからTomarigi v325をダウンロードしてインストールする。

 素直にインストールが完了する。

 ディスクトップにアイコンを置いておけば良いだろう。


 Tomarigiを起動すると左ペインにテキストエディタが開く。

 テキストファイルをセーブしてロードして編集できるので満足できるのならばTomarigiで編集を完結させることもできる。

 普通は校正したいテキストをコピーしてTomarigiのテキストエディタにペーストする。

 「チェック(C)」から「チェックの実行」を選べば自動校正が開始する。

 あまり大きな文章にするのは現実的ではない。

 PCに積んでいるメモリのサイズとCPUのパワーにもよるのだろうが一万文字を超えるとさすがに辛い。


 結果は右ペインに「各文」のタブでカード形式で表示される。


挿絵(By みてみん)


 今回の原稿をTomarigiにかけてみた。

 指摘数は百六十一個。

 機械による機械的な指摘が並ぶ。

 これを一つひとつ見てゆけばよい。

 必要ならば修正を行い、必要なければ無視すればよい。


 機械は良い。

 余計なことは言わない。

 何を言われても腹がたたない。

 時々のお茶目な指摘には寛大な気分で対応できる。

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ファンタジー小説を連載中です
お楽しみいただけるかと存じます
黒灰色(こっかいしょく)の魔女と時の魔女
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