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機械仕掛けのバーディー  作者: 陸奥守
第8話 オペレーション・シューティングスター
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自分の心の真実

「ほぉ…… 新手か」

「新手と言われるほどフレッシュフェイスでは無いがね」


 相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべたロックの父。だが、その笑みですらも冷ややかな眼差しを湛えた傲岸な笑みで見下すエディ。一瞬だけ憮然とした表情だったのだが、その顔は一瞬にして戦闘モードへと戻った。エディは手にしていたブラスターでロックの父の足下を狙ったのだった。


「少々時間をいただこう。なに、それほど手間は取らせないよ」


 一方的に話しをしたエディは実力でロックの父を後退させた。どう足掻いたところで銃は剣より強い。手の届かない距離でやり合うならそれは仕方が無い事だ。

 一足では届かない距離に下がったのを確かめ、エディはロックへと歩み寄ってからその襟倉を手で掴み、軽々とした様子で無理矢理引っ張り上げた。呆れ果てたような表情を浮かべるエディを、ロックは正視出来なかった。


「ロック。前から何度も言ってると思うが、作戦中は任務の遂行を優先しろ」


 きつい口調でロックを叱りつけるエディ。だが、エディの目は笑っていた。驚きの表情で見ていたロックだが、エディは横たわるロクサーヌにチラリと目をやってから、再びロックを打ち据えるような眼差しで見た。


「……女が斬られたとあっては」


 襟倉の手を離したエディはロクサーヌの様子を確かめた。


「見て見ぬフリなど出来ない。それは仕方がないが……」


 話しに置いて行かれたロックの父は、まるっきり不機嫌そうな表情で襲い掛かってきた。つい先ほど、息子ロックへ襲いかかったのと同じ、恐ろしい速度で。まだ息のあったロクサーヌとロックは、瞬間的にエディの死を覚悟した。自分たちですら対応出来ない速度での攻撃なのだから。だが、エディの余裕は何も変わらなかった。


「邪魔をしないでくれたまえ。いま、大事な部下に指導をしているんだ」


 エディは腰に刺してあった細身のレイピアを抜いて応戦した。その存在をロックもロクサーヌも気が付かなかったものだ。だがその設えは目を奪われるほど上品で上質で、そして優雅さを纏っていた。まるで王家王室など、やんごとなき人々の持つ芸術品の如き出来映えだ。

 そして、そのレイピアを奮うエディはロックの父を圧倒した。全く付け入る隙見せず、むしろロックの父を手玉に取っていた。斬りつける事はおろか、碌な構えを取る事すら出来ず、一方的に攻め立てられて距離を取るのが精一杯だった。


「おいおいロック? まさかとは思うが…… この程度の剣士に苦戦したのか?」


 太刀の威力をモノともせず、ゆっくりと優雅に押し返したエディ。その魔法のような剣捌きにロクサーヌとロックは目を見開いたまま言葉を失ってしまった。技術がどうこうとか構えが云々ではなく、潜った修羅場の数だと。単純に、剣を振った回数の。相手を斬った回数の次元が違うのだと、そう思わされる実戦剣術。


「まぁいい。脱出の頃合いだ。久し振りに剣を振ったがやはり面白いな」


 ハハハと声を上げ、楽しさを溢れさせ快活に笑うエディ。その姿に苦虫を噛み潰したよなロックの父は、恨みがましい目でグッと睨み付けた。


「貴様は何者だ」

「人にものを尋ねるならまず名乗るのが礼儀ではないかね?」


 レイピアを抜きはなったまま、だらしなく両手を下げているエディ。だが、その姿には一分の隙もなかった。斬り掛かれば斬りかえされる。そんな鋭いオーラを放っている。


「死に行く者に名乗るのは無駄というものだ」


 ハハハの笑い出したエディがロックの父を指差す。


「強がりならもうちょっと実力をつけたまえ。まぁ、弱い犬ほどよく吠えるというものだが…… 最近じゃシリウスに組する者はクズばかりのようだな」

「……なんだと?」

「人ならざる人形に期待するだけ無駄と言う物か」


 小バカにするようにクククと笑ったエディは、鋭い踏み込みを見せてレイピアを一閃させながら言った。


「この士官の上司。そして、この士官の父親代わりの、その父親代わりさ。この士官はロックと言うのだがね、どうもまともな親の愛情を知らんと見えて、ロックの上司は随分と苦労したようだが、しかし、それ故に可愛がっている」


 エディが平然と言い放ったその言葉は、ロックの父親を激怒させるだけでなく、剣士に必要な平静さを失わせるのに充分な威力だったようだ。今にも烈火のごとく暴れそうな雰囲気となり、憮然とした表情を浮かべてエディを睨みつけているのだが、当のエディは全くもって涼しい顔だった。


「さて、駄々話をしに来たんじゃない。ビッグストン流槍騎兵剣術をもう少し見せたかったのだが残念ながら時間切れだ。作戦は進行中で、しかも状況は余り歓迎せざるる事態だ。ゆえに少々予定を巻かねばならない。まぁ、記念に指の一本も貰っておこうか」


 今度はエディから斬りかかった。型だとか太刀筋だとかそう言うものではなく、ただ単純に行き足の速さと打ち込みの鋭さが武器の剣術だ。ただしそれば膨大な経験に裏打ちされた『絶対に外さない』という信念に裏打ちされるものだ。

 その姿が理解の範疇を越えたロックは言葉を失う。全く太刀打ちできなかった父親の剣を余裕で圧倒するエディ。そのエディは全く余裕を失うことなくロックの父を圧倒し、焦りの色を浮かべたその間に剣の柄を握る小指を切り落としていた。

 全てのシーンを見ていたはずのロックやロクサーヌですら『何時の間に?』と驚くような一瞬の出来事だった。


「軍務が長いものでね、様々な場所に行った関係で色々コレクションを増やしているのだが、こんな物も久し振りだ」


 エディは懐から葉巻ケースのような物を取り出し、カチャリと音を立ててふたを開いた。白いもやのような冷気が漏れたその中には幾つも人の指が入っていて、そのどれもが節くれだった剣士の指だった。

 ロクサーヌなどは思わず目をそむけるようなものだが、エディは楽しそうにその中へロックの父親の小指を収めふたを閉めた。一瞬高周波音がして、そしてカチリカチリと音を立てて冷えていくのだった。


「さて、仕事も佳境なのでね、そろそろご退場願おうか。あなたが生きていると私の可愛い部下が仕事そっちのけで遊びに夢中になるのでね。色々と困るのだよ。要するに少々邪魔なのだ。故に退場するのはこの基地からじゃ無いぞ? この世からだ」


 明らかに見下すような眼差しのエディ。ロックはどこか複雑な表情だった。


「エディ。それは俺に……」

「馬鹿を言うなロック。お前に任せると、まーた親子チャンバラで時間を浪費する……」


 エディの言葉は冷たくキツいが、その表情は柔和で、そして優しさに溢れていた。


「悔しいが仕切りなおしだ。クソッ!」


 ロックの父は手近に合ったハッチから外へと飛び出した。


「待て!」

「追うなロック! 仕事が先だ!」


 エディの怒声に身を硬くしたロック。驚いてエディを見たロックのその頬をエディの手が叩いた。思わず蹈鞴を踏んだロックはエディを見ている。先ほどの柔和な表情ではなく、厳しく険しい表情を浮かべていた。そしてそれは『父親』の表情でもあった。


「悔しかったら強くなれ。今よりも、もっともっと」

「……はい」

「実力で父親を踏み越えていけ。『父親』にとってはそれが最も嬉しい事なのだ」


 エディの口から出た『父親』という言葉にロックは驚いた。だが同時に、エディにとってテッド隊長が息子にも等しい存在だと気が付いて、そして静かにロックは頷いた。


「……努力します」

「そうだな」


 一瞬だけ俯いたロックだが、ハッと弾かれるように振り返った。そこには頚椎部からいくつもスパークを飛ばしているロクサーヌがいて、表情の無い顔でロックを見ていた。


「……すまない」


 何かを言おうとしたロクサーヌだが、すでに身体が動かなくなり始めていた。僅かに震える唇は痙攣ではなく動作信号の混乱による機械的な作動誤差だ。どうしたものかと一瞬だけ思案したロックだが、その時、無線の中に少女の済んだ声が流れた。


『申し訳ありません。少将閣下』

『……何か言い残す事はあるか?』


 驚いてエディを見たロック。エディはレイピアを鞘に収め、ロクサーヌの傍らに片膝をついて話しかけた。口を使った会話ではどこかぎこちなく片言なのだが、無線の中には優しげな少女の声が流れている。


『Dチーム配属になった時点で覚悟は出来ています』

『そうか。今までご苦労だった。役に立ってくれたよ』

『ありがとうございます』


 無線に流れる言葉の主がロクサーヌである事を嫌でも理解したロック。そんなロックの耳にエディの声が聞こえた。


「Dチームはそもそも使い捨て前提だ」

「使い捨て?」

「消耗品と割り切って生きながらえる事を許された存在だったんだ」


 驚いて言葉を失ったロック。

 沈痛そうな表情のエディが呟く。


「様々な実験やテストの為に作られたアンドロイドの安全装置。それがDチームの正体だ。もっとも危険な現場に投入される自立作動型戦闘兵器の中で緊急時に自爆を選択する為の存在だったんだよ」


 まるで罪の許しを得ようとするかのようなエディ。その姿には懺悔する罪人の姿が被って見えたロック。しかし、エディとロックの無線には、再びロクサーヌの声が流れた。達観したような、澄んだ声だった・


『私が望んだ事だったから後悔はありません。今日まで本当に楽しかった。生きているって素晴らしい。ただ、一つだけ残念なのは…… ロックと決着を付けたかったわ。だけど私はここで終わり。ホントに残念』

『……ロクサーヌ』

『ロックの使っている身体の駆動系は私がテストベッドだったの。私以上になってるかどうか確かめたかったわ』


 何かを言おうとしたロックだが、咄嗟に何を言って良いのか解らなくなって、そして膝を突いてロクサーヌを後ろから抱え上げた。右手一本でロクサーヌを抱えたロックにロクサーヌが言葉を掛けた。


『彼女に…… バーディって言ったっけ。あの子に恨まれるわよ』

『それとこれとは話が別だ』

『Dチームに配属されて30年…… あっという間だった』


 ぎこちなく笑ったロクサーヌの笑み。そこに母親の慈愛をロックは見た。


『何度もパーツを換装して反応速度と応答性を確かめて、研究して研究して、どういうわけか、もう普通の人間じゃこの機体を使いこなせなくなって、そして、高反応速度の適応者を集めたのがBチームだった。だから……』


 驚きの表情で見ていたロック。その肩にエディが手を乗せた。


『あなたは負けないで。CQB向け機体の中でも最高の物をあなたが使っているんだから。私の努力を無駄にしないでね』

『……わかった』


 それ以上の言葉がなかったロックは、優しく笑みを浮かべてロクサーヌを見た。そのシーンにエディは、男と女ではなく母と息子を見た。母親から血と肉と骨を分け与えられこの世に生れ落ちた息子を、母は死ぬまで心配するのだから。

 だが、現実は非情だ。ここは戦場で彼らは兵士なのだ。必要な結果のみの為に容赦なく磨り潰される事を悄然と受け入れなければならない。任務を遂行し必要な結果を生み出し、その上で自分が生き残る努力をする。

 金星の空に浮かぶジェフリーは着々と墜落しつつある事を、突然流れた無線の言葉によってロックも思い出したのだった。


『エディ! メインフローティングユニットを停止させた。浮力限界に達して墜落開始まで推定35分だ!』


 広域戦闘無線の中に流れた言葉はブルらしい。ジェフリーの中を走り回っていて、何事かを工作しているのだろう。それ続いてアリョーシャの声が響く。やはり何かを確認するように。


『レプリの大半は最下層だが、レプリにまぎれて作業員やジェフリーの制御員が居るはずだ。バーディー! 探し出して捉えてくれ! 緊急浮上コードを持ってるはずだからそれを封じる!』


 直後に僅かなホワイトノイズが流れ、そしてバードの声がロックにも聞こえた。ふとロクサーヌを見たら、顔から完全に表情が消えていた。


『了解! 現在メインフロアです。最下層へ向かいます!』


 無線の中に流れる会話を聞いているロックとロクサーヌ。だが、そのロックの肩を掴んでいたエディの手に僅かながらも力が加わった。僅かに首を振り目だけでエディを見たロック。そこにいるエディの目は、ロックへ決断を促していた。


『エディ! 見つけたぞ! 座標を送る!』


 ブルの声が無線に流れた。


 ――――見つけた? なにをだ?


 一瞬ロックの頭に疑問符が浮かぶ。そして高級将校たちは何かを隠している。その何かを探す為にここへ来たのではないかと推測を立てたロック。だが、エディは何も言わず立ち上がった。


「ロック。三分以内に行動を開始しろ。良いな!」

「イエッサー!」


 エディが立ち去った後もロックはロクサーヌを見つめていた。青い瞳の南欧系人種をロックは美しいと思った。だが、当のロクサーヌは完全に表情を失い、ただの機械に成り下がっていた。


『ここへ置いていって』

『だが』

『これを持って行って』

『え?』


 突然ロクサーヌの右耳辺りにある小さなハッチが開き、メモリーチップが姿を現した。切手ほどのサイズだが大容量のモノだ。そしてこのチップの存在理由は大体察しが付く。


『これって?』

『戦闘メモリーだからきっと役に立つわ。彼女に渡してあげて』

『ロクサーヌ……』

『私は全ての女性型サイボーグのプロトタイプでもあるのよ』


 段々と無線の出力が弱まっていた。そもそも近距離無線は低出力だが、それ以上に脳が発するシグナルが弱くなっているのだちお気が付いた。つまり、ロクサーヌはいま、『死』を迎えつつある。


『彼女を大事にしてね』


 ロクサーヌの言った言葉の意味を。本当に言いたい事をロックは理解した。そして、抱えていたロクサーヌの身体をそっと床に横たえたロック。戦闘メモリーを引き抜いたあと、柔らかにロクサーヌの頬へ手を添えたロック。ロクサーヌは最後にぎこちなく笑った。


『最後に出会えてよかった。さぁ行って。時間が無い。彼女に。バードによろしく言ってね……』


 それがロクサーヌの最期の言葉になった。生体反応がだんだんと消えていき、ぎこちない笑みのまま表情がロックされている。そんなロクサーヌをロックは思わず抱き上げた。心からの感謝を込めるようにして。


「……ありがとう」


 そう静かに呟いたロック。だがその時、唐突に部屋のドアが開いた。そして、その開いたドアの向こうにはバードが立っていた。ロックがロクサーヌを抱きしめているところへ……だ。

 瞬間的にバードはロクサーヌが死んだ事を理解した。だが、それとは別の所で、胸の中の何処か表現できない所で、何かが沸騰して爆発しそうになった。安全ピンを抜き放った手榴弾が爆発する瞬間を見ているような、そんな瞬間だ。

 おそらくロクサーヌはロックの父に斬られた。彼女ですらも太刀打ちできなかったのだろうし、ロックは今回も遅れを取ったのだろうと思う。その証拠にロックは左腕が無い。

 

 だが、それで心の整理が付く問題ではなかった。


 ロックが自分以外の女を抱きしめていた。その事実にバードは表現できない不快感を覚えたのだった。そして、自分でも良く分からない部分で怒りを抑えられない状態になりつつあった。しかし、ロックとて慌ててロクサーヌを捨てるわけにも行かない。

 僅かな間だけバードを見たロックが力なく首を振った。そして、右手一本でそっとロクサーヌを床へと横たえた。その右手は切りつけられ剥がれ落ちそうなロクサーヌの通信アンテナあたりをもぎ取ったのだった。


「ロック……」


 何かを言い掛けたバード。まるで戦闘中のような緊迫した表情だったのだが、ロックはロクサーヌを見つめたままだった。


「バーディ」

「なに?」


 バード自身が自分でも驚くくらい刺々しい空気だと思った。

 だが、その棘をどれ程隠そうとしても、抑える事が出来なかった。


「ロクサーヌは…… バーディのプロトタイプだったそうだ」

「……どういう事?」


 ロックの言葉に冷たい空気で聞き返したバード。だがロックは静かに言葉を続けることにした。言いつくろっても仕方が無い事なのだから、むしろ開き直る作戦に出た。


「全ての女性型サイボーグのプロトタイプで実験台だそうだ。しかも、俺たちBチームの使う機体のテストを請け負ったマザーマシンだったらしい。そして、万が一にも暴走したり制御不能になった時、自爆させる係りだったそうだ」


 ロックの言葉に全く抑揚が無く、淡々と語るその姿は嘘じゃ無いとバードは直感で思った。だが、それでロックの()()()()()()()を許せるほどバードにも余裕があるわけじゃ無い。


「いまここで親父と斬りあった。また負けたよ。実はエディが助けてくれた。俺とロクサーヌと二人掛りで挑んで手玉に取られたが、その親父をエディが圧倒したんだ。正直、俺も理解不能だ。何が起きたのか分からないくらいだ」


 半ば呆然としていたロック。その姿を見ていたバードは少しずつ平静を取り戻しつつあった。床にこぼれた銀の雫はロックの父の流したものだろうとバードが気が付き、首に巻いていた戦闘ショールでふき取った。これをキャンプの施設で分析すれば正体が分かるだろうと思ったからだ。


「ロクサーヌからバーディにこれを預かった」

「……なに?」

「今ここで親父と切りあった時のものだ」


 ロックの手にはロクサーヌから預かったメモリーチップがあった。通常ならば基地へ戻らない限り回収しないメモリーカードだ。


「ロクサーヌは支援に入ってくれたんだが…… 見事にこのザマだ。俺の代わりに死んでくれた。俺が死ぬとバーディに申し訳ないって。彼女はそう言ってた。CQBプロトタイプで女性型プロトタイプ。そして、ガイノイド人生30年だったそうだよ」


 ロックはバードの手にロクサーヌの戦闘メモリーを手渡す。咄嗟に口を突いて出た嘘だったが、ロックはそれが間違いないと確信していた。『ロック』と静かに呟いたバード。その時、突然ガクッとジェフリーが姿勢を崩した。各所が大爆発を始め、姿勢制御が効かなくなりはじめていた。間違いなく自爆モードだとバードは思った。各所で激しい戦闘を行ったのだから、その断末魔だと直感する。


「最下層へ行かなきゃ!」

「バーディ! 待て!」

「え?」

「俺と一緒に逃げろ! 脱出だ!」


 そう叫んだロックの言葉にバードの心が震えた。


「だけど最下層へ行く命令なのよ!」

「中国の時と一緒だ。出来ないと判断して逃げろ! まだODSTも居るんだ!」


 右手しか残っていないロックがバードに手を差し出した。俺の手を握れと言わんばかりに。その瞬間、無くなった筈の心臓がドキリと動いた。脳の中心に表現できない電撃が走り、そして、つい先ほど見た『ロックがロクサーヌを抱きしめているシーン』で沸騰した理由を理解した。






       ……バードは自分の心に気が付いた


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