作戦中断
――――金星イシュタル高地上空 高度100キロ付近
金星標準時間 4月7日 2200
戦闘の準備を終えたバードは袋入りの菓子をボリボリと摘んでいた。地球からの嗜好品にあったスナック菓子を独り占めしたバードだが、誰もそれに文句を言わなかった。
「少しくれよバード」
「はい。少しだからね」
「案外ケチだな」
そんなヘラヘラとした会話を楽しむバードとダニー。ふたりしてスナック菓子を摘みながら眺めている先。ウォードルームで出撃待ちをしていたBチームを訪ねてきたティアマット大佐相手に、ジョンソンとドリーのふたりが激昂している珍しいシーンをバードは見ていた。
「間違いなく疲れてる。それは事実です!」
「ですが、ここで畳み掛けなきゃ意味が薄れちまうんですよ! 大佐!」
ハンフリーの艦内にあるシェルデッキには再調整を終えたBチームのシェルが並んでいた。弾薬と大気圏内飛行用の反応材を補給し、細々とした不具合を修理したシェルたちは出撃準備を整えている。
その姿を横目にウォードルームでブリーフィングをしていたBチームは、突如として統合作戦参謀本部からイシュタル高原への出撃差し止め命令を受けた。信じられない!と皆が激昂したのだが、その全員を宥めた後で大尉ふたりがチームを代表して抗議しているのだった。
「諸君らの憤りはもっともだが、軍全体としての被害が看過出来ないレベルになり始めている。要するに戦死者の数が全体で許容範囲を超えたということだ。特に今日は酷かった」
淡々と説明しているティアマット大佐は、書類をめくりながら落ち着いた声で辛抱強く語り掛けていた。ここまで獅子奮迅の働きをしてきたBチームだ。一気にたたみ掛けて寄り切って、勝ちをその手に掴みたい部分が強い。だが、現実問題としてBチームだけで戦争は出来ないし、Aチームと合同したとしても、サイボーグだけで戦争が出来るわけでもない。
何時の時代でもどんな軍隊でも、最後は歩兵が重要なのは言う間でもない事だ。そして、歩兵の大半は、いや、歩兵のほぼ全ては生身の兵士だ。個人の資質が大きく能力を左右するサイボーグだが、その多くは501大隊へと集められている。つまり、地上軍でも宇宙軍でも、501大隊以外のサイボーグはそれほど数がいる訳ではなかった。
「ならせめて、向こうの反撃体制が整い切る前にある程度の先制パンチを入れさせてください」
「基地上空へ達し何かしらの活動をするだけでも、向こうに与えられる心理的プレッシャーはあるはずですよ」
ふたりの大尉が口を揃って出撃を進言するのだが、ティアマット大佐は首を振るばかりだった。どれ程抗議しても意味が無い事など解らないふたりではない。だが、チームを預かる隊長の側近ふたりが猛烈に抗議したと言う事実を参謀本部に持って帰ってもらう事が重要なのだ。
「諸君らの意見は重々承知しているし、参謀本部へ持ち帰って話をする事も約束する。だが、実際に出撃を見合わせろといっているのはマーキュリー少将なんだよ」
控えめに言ったティアマット大佐だが、ドリーもジョンソンもエディの名が出た事により、続きの言葉を飲み込んでしまう。そんな様子のふたりを見つつ、ティアマット大佐は話を続けた。
「そして、マーキュリー少将へ進言したのはテッド少佐だ。細かい話は分からないが、相当酷い事になったらしい」
――――相当酷いことってなんだ?
ティアマット大佐の言葉に怪訝な表情を浮かべたバードは、説明を求めるようにチラリとジョンソンを見た。だが、そのジョンソンとてドリーを見て説明を求める風だった。チームの目が全部集まったドリーだが、その口から出た言葉に皆が改めて驚いていた。
「ところで隊長は今どちらに?」
説明を求めるようにティアマット大佐を見るドリー。その姿にバードを含め皆が悟った。ドリーすらも教えてもらえない極秘任務についているのだ……と。
「私の聞いている話では、そろそろ帰還すると言うことだった。残念だが私の口から言えるのはここまでだ。情報取り扱い機密レベルでも最上級のひとつ下だから、全体像を見ることすら出来ず、断片的な情報にしか触れる事が出来ないんだ」
困ったような表情を浮かべて苦笑いしたティアマット大佐。その姿をBチーム全員が見ていた。ちょうどそんなタイミングでハンフリーの艦内放送には、艦載機の着艦セクションスタッフを招集する声が流れた。
「隊長かな?」
バードを見ながらロックがそう言うのだが、バードより先にリーナーが答えた。
「シェルデッキに行ってみればわかるだろ」
「そうだな」
相槌を打ったビルが立ち上がった。それにつられ皆が立ち上がって、一斉に移動を開始した。Bチームの意向がどうであろうと隊員の希望がどうであろうと、大佐の言ったとおり参謀本部の決定ならば出撃は無い。シェル用の搭乗服を脱ぐべくロッカールームへ行こうとしていたタイミングでもあったのだから、ちょうど良い機会だったとも言えるのだが……
廊下を歩み行くBチームの隊員はそれとなく愚痴をこぼす。思う様に作戦が進まない苛立ちであったり、或いは、全体像の説明が無いままに振り回される事への憤りだったり。そして、直接の部下である自分たちにですら教えてくれない、テッド隊長の秘密任務についても……
「隊長の秘密任務ってなんだろうね?」
「俺も聞いた事がねぇんだ。何時聞いても教えてくれねぇ」
バードとロックの率直な会話にライアンが口を挟む。
「うちのチームの誰も知らねぇよ。隊長の極秘任務は」
「前に話したろ?」
ライアンに続いてペイトンもそう言った。ある意味、皆諦めている部分があった。絶対に教えてくれない秘密の任務についてはバード自身も色々と想像はしている。だが、ソレよりもなんとなく感じる疎外感の方が強い。或いは、手の内の全てを見せてくれないという、ある意味で『裏切られている』または『騙されている』という屈辱感。そして、秘密を打ち明けてくれない隊長への疑念。
決して敵ではないが、こんな時には絶対の味方とも思えない存在になる。如何したものかと思案していたバードは何気なくチームの仲間達を見た。皆同じような事を考えているのだと直感しながら。
だが……
「おぃ…… ウソだろ……」
シェルデッキに到着したとき、ちょうどそこへグレーに塗られたシェルが着艦してきた。そのシェルはグレーの機体に黒い炎が描かれた見たことの無い機体で、今まで見たどんな姿よりも重装備だった。そして、普段Bチームが使っているシェルより一回り以上大きいデザインだ。最小限のバックリバーサーを使った、全く無駄が無い動きでハンガーへと飛び込み、待機位置で機体をロックさせるその一連の動きを、バードは芸術的ですらあると思った。
とてもじゃないけどこのような滑らかな動きは出来そうにないと思うほどで、僅かでは無い嫉妬心をバードは感じた。
だが、よく見ればそのシェルの左肩には、テッド隊長気を示す白い狼のマークがあった。もしかしてと思う前に、冷静に見ればその滑らかな動きもデッキの中の落ち着いた振る舞いも、テッド隊長だと思わせるに十分だった。
「テッド隊長かな?」
疑心暗鬼なバードの言葉。だがソレは無理も無い話しだ。両手に一基ずつ抱える大型火器はバードどころかロックやライアンも使った事の無い、巨大な無反動砲だった。それだけで無く、巨大な無反動砲と共に腰の辺りのハードポイントには動力パイプが接続されたビーム兵器をぶら下げていた。
「あれ…… なに?」
驚きに満ちたバードの言葉。それに答えたのはドリーだった。
「今は使わなくなった重装備型のシェルだ。しかし、実機が残ってるとは知らなかったな」
ボソリと呟くように言ったドリー。その姿を見ていたバードの眼差しに気が付き、ドリーは解説を続けた。
「あのシェルが手に持ってるバズーカは、最近じゃ使わなくなった280ミリ対艦攻撃バズーカだ。俺は一度しか使った事が無い。あいつを両手に一本ずつ持って飛ぶなんて変体機動は隊長じゃなきゃできねぇだろうな」
「俺は一度も無い。存在は知っていたけど装備品リストに載らなくなって久しい代物だ。ただ、まだ実物があったんだな。俺も知らなかった」
ドリーに続きジョンソンがそう答えた。そしてこの時、バードを含めた少尉たちはジョンソンよりドリーのほうが古株だと言う手がかりを得た。
「あの腰の奴はなんだ?」
指を指して訊ねたライアン。やはりドリーが先に答えた。
「大出力陽電子砲だ。荷電粒子砲と比べさらにエネルギー密度が上がっていて、対象物に衝突した瞬間、対消滅してぽっかりと穴が空く。あれで破壊できない装甲はない。なんせ装甲そのモノが原子崩壊するんだからな」
シェルの持つ恐ろしい兵器を目の当たりにした皆が言葉を飲み込む。だが、そんな彼らが見守る先、ハンフリーのシェルデッキへ次のシェルが着艦した。機体の全てを濃淡なグレーのツートンに塗ったそのシェルは、左の肩にオッドアイなシベリアンハスキーの顔があった。口元の牙には得物を加え、血を滴らせる恐ろしい姿だった。そして、そのシェルもまた芸術的に美しい着艦を見せ、そのまま場所を開けて後続を待つ様子を見せた。
「あれって……」
指を刺して首をかしげたスミス。だが、それに続き、今度はグレーとブラウンに塗り分けられたシェルが着艦した。これまた芸術的な着艦だったのだが、前二つに比べれば、どこか荒々しく勇ましい着艦だった。
個性的デザインに塗られた3機のシェルだが、そのどれもがあちこちに被弾痕を付け、さらにはアンテナを折っていたり、或いは両脚の各所についている姿勢制御スラスターのノズルを失っている姿だった。激しい混戦を経験しなければそんな姿にはならない筈だが、少なくともまともな相手とやりあったとは思えない姿だ。
「あ、もう一機……」
ダニーが指さした先には着艦コースに入ったシェルが見えた。流れるような動きでスッとハンガーに納まった後、ごく僅かにしかスラスターを使わず動きを止め、そしてロックポイントに背中を預け機体を固定した。その最後に入ってきたシェルは余りに異形な姿だった。全身をつや消しの黒に塗り、左の肩にはウォータークラウンのマークを書き込んでいる。
それだけでは無く、全身に被弾痕を残しながらも致命的な部分には一切の痕が残っていない。撃たれた全ての弾丸を安全な部分で受け、そして任務を果たしたのだろうと思われた。
シェルハンガーのシャッターが閉まり、ハンフリーのシェルデッキに宇宙服を着た整備スタッフがワラワラと出てきた。だが、その整備スタッフもどう接して良いのか分からない様子だった。そんな中、一番のヴェテランである整備班長の上級曹長が先頭切ってコックピットに接近していく。
音も無く開いたコックピットから出てきたパイロットを見て、Bチームのメンバーは皆凍りついたように言葉を失った。次々と各シェルからパイロットが降り始め、無重力空間を流れていって艦内へと入るべく気密隔壁の中へ収まった。
「……嘘だろ」
ボソリと呟いたジャクソン。シェル装備を調えるロッカールームに姿を現したのは、エディ少将以下、501大隊の重鎮と言うべきアリョーシャとブル。そして、テッド隊長だった。
「諸君、テッドを勝手に連れて行って済まなかったな」
笑いながら装備を脱いでいくエディ。機体と同じく全身つや消しのシェル装甲服を脱いだエディはテッドから飲み物を受け取ると、実に旨そうに飲み込んだ。
「いやいや、一仕事した後の一杯は実に旨いな!」
テッド隊長が渡したのはビールの缶だった。そして、同じようにアリョーシャもブルもビールを一気に飲み込んだ。
「おい小僧。お前も一本やれ」
「俺は何時になったら小僧を卒業出来るんだろうな」
ブルに一本進められテッド隊長も一気に飲み干した後、笑いながらぼやいた。そんな言葉を聞きていたアリョーシャが冷やかすように言った。
「そうだな、俺とマイクが死んだ後なら卒業じゃ無いか?」
「ンじゃ、当面先だな。殺しても死にそうに無い」
テッド隊長の軽口に驚きまくるBチームメンバー。新鮮な驚きに包まれている皆を見ながら、エディはおもむろに切り出した。
「君らも戦闘を継続したかったろうが、実は…… 作戦の停止を提案したのは私なんだよ。理由は色々あるんだが、まぁソレはこれから説明しよう」
エディの言葉の真意を計りかねた皆がキョトンとした顔で居たのだが、エディは旨そうにビールを飲み干し、ロッカールームを出て行った。その後をブルとアリョーシャが続き、最後に出て行ったテッド隊長が振り返って言った。
「10分後にウォードルームへ集合しろ。言っておかねばならない事が山ほど有るからな。とりあえず俺抜きでも作戦をこなせる事が解って安心した。皆ご苦労だった」
満足そうな笑みを浮かべたテッド隊長は明らかに疲れ切っていた。
だが、部下の成長を喜ぶ姿には満足感すら漂っているのだった。
――――10分後
ハンフリーのウォードルームに揃ったBチーム士官達。涼しい顔をしているエディ以下の高級将校達はBチームに正対していた。
「そろそろ説明しておかねばならないだろうが……」
部屋の中をグルリと見回したエディだが、ニヤリと笑ってテッドを見たその表情には満足そうな部分が多分にある事に気が付いた。テッドが鍛えてきたBチームはテッド抜きでもちゃんと機能して、そして任務を果たしている。その事に満足しているのだろうとバードは思っていた。
「実はな、テッドを含めこの4人と外太陽系に展開していたFチームのメンバー12名の合計16名でな、シリウス軍の宇宙軍艦艇を攻撃してきた。土星の衛星にあるシリウス軍傘下の量産工場でハンガーアウトされた重戦闘機材とレプリを処分する作戦だったんだよ。ここしばらく何度か継続的に出撃し叩いてきたのだが、今回はちょっと酷い有様だったな」
両手を僅かに広げ『どや?』と言わんばかりのエディが笑った。
その後を受けてアリョーシャが説明を続けた。
「外太陽系の木星・土星・天王星にはシリウスの息が掛かった工場がいくつかあって、そこでは地球文明圏向けに戦闘兵器を作っている。と言っても、その大半はレプリ向けで指揮官だけがシリウス人という有様だ。工場を直接叩ければ良いのだが、あいにくと各衛星の工場は中立を宣言してしまって、地球の国連政府によるコントロールを受けていない。で、建前としてはこちら側も金を払えば兵器を買えるのだが、シリウス側が長期契約を結んでいると言う事だ」
驚きの余り言葉を失って居たBチームだが、ブルもまた薄笑いを浮かべ説明を始める。エディやアリョーシャとは違う雄弁な語り口に、バードは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「木星軌道上で大型輸送船4隻を撃沈し、木星へ向けて墜落させたんだ。木星中心核へ墜落していった輸送船は木星の巨力な重力の底で圧壊した事だろうと思う。全部で7隻の輸送船団だったが、いま言ったように4隻は木星で重力の藻屑だ。2隻は土星系へと引き返したのだが、輸送中だった重機材と完成間近のレプリを木星に捨て逃げ帰った。結局、金星までたどり着いたのは一隻だけで、コレもなんとか撃沈したかったのだが、悪い事に取り逃してしまった……」
恥ずかしそうに肩を竦めたブル。その背中をテッドがポンと叩いた。
ハードラックだったと言わんばかりの姿だが、そのテッド自身も苦笑いだ。
「結局な、金星のジェフリーへ大量のレプリ陸揚げを許してしまった。おそらく10万近い数字だ。最後まで何とかしようと思ったんだが、ジェフリー自身の持つ強力な防御火器に阻まれてしまったよ。Aチームやお前達の為にもなんとかしたかったんだが、さすがに4機じゃどうしようも無かった」
テッド隊長が4機と言った事でバードは僅かに首を傾げた。Fチームの12機はどうしたんだろう?と思ったのだった。だが、その説明はアリョーシャが引き継いで続けた。
「Fチームは本来の任務の為に土星へと引き返した。我々4機でベルトの内側へ戻り追跡したんだが、高機動で重武装型のシェルを使っても外宇宙向け艦船に追いつくのは不可能だったんだ。結局、ジェフリーに荷物は運び込まれ、俺たちは接近する事すら出来なかった。幾らシェルでもあの強力な荷電粒子砲を受ければ蒸発は避けられないからな」
小さく溜息をついて皆を見たアリョーシャは、申し訳なさそうに肩を竦めた。
恐らく酷い言葉が出る。それも取って置きの酷い情報だと察しが付いて、Bチームの全員が露骨に警戒する表情になった。
「普通に考えれば…… AチームにBチームを足して、そこに10万そこそこの生身を足したところでレプリ20万に勝てるわけが無い」
アリョーシャの言葉に驚いたバードはボソリと呟いた。
「もしかして、運び込まれたのって……」
「そうだ。君の想像したとおりだ」
困った様な表情のエディだが、事も無げにサラッと言った。
「間違い無く、全部ネクサスⅩⅢだ。はっきり言う。直接やり合うのは愚策以下と言って良い。艦砲射撃で焼き払うのが上策だ。ただ、ジェフリーの持つ荷電粒子砲の射程圏内に入るのは…… 宇宙軍も歓迎しかねるだろう。故に、何らかの手立てを考えねばならない」
渋谷の中でやり合ったネクサスⅩⅢの戦闘能力を思い出し、皆が引きつった表情を浮かべだす。だが、戦闘は不可避だと気が付いているし、逃げるつもりもない面々だ。大隊のお偉方が出す方針を受け容れるしか無い。
「で、どうするんですか?」
興味津々と言った風な雰囲気でバードは訊ねた。そんなバードをエディも頼もしそうに見ていた。勿論、ブルもアリョーシャも、そしてテッドですらも。
「そう楽しそうにされると俺も困るな」
軽く受け流したエディが笑う。
そしてアリョーシャが口を開いた。
「まぁ、それはこれから参謀本部でじっくり検討する。情報も色々集まっているはずだからな。ただ、確実に言える事は当初プランで事を運ぶのが無理と言う事だ。従って何らかの形で別の手段を使わざるをえない。つまり」
アリョーシャはそっとバードを指さした。そして部屋の中をグルリと見回した後、エディを見て涼やかに笑った。続きはあなたが言うんだと言わんばかりに。
「まぁ、つまりだバーディー」
アリョーシャの後を受けたエディはボリボリと頭を掻いて、そして一つ溜息をついた。
「作戦は仕切り直しって事だ。ここからは正直、相当悲惨な局面に入るだろうな。出来る限り我々501大隊から死人を出さないようにしてきたのだが、CチームDチームに死人が出た。少々ではなくかなり残念だ。私個人の本音としてはこれ以上死人を出したくないし、諸君らもこのメンツが掛けるのは歓迎しないだろう?」
絆を確かめるように言うエディ。その言葉に皆が首肯する。
満足そうに頷いたエディはテッドを見た。
「やはり、つくづくとBチームは良いチームだな、テッド」
エディの言葉にニヤリと笑ったテッド隊長。だが、そんなウォードルームにティアマット大佐が突然入ってきた。そして、カバーの付いた報告書をエディへと差し出し部屋から消えた。
怪訝な顔でその後ろ姿を見送ったエディだが、報告書のカバーを開けて中身を読んだ後、深く溜息を一つ吐き出して床へと視線を落としたまま、その報告書をアリョーシャへと見せた。
素早く読んだアリョーシャも驚愕の表情を浮かべた後、ブルへと回し読みする形になり、そして最後にテッド隊長が読んだ。眉間に深い皺を寄せ、厳しい表情になって……
「諸君、見ての通りだ。予想通り厳しい展開になり始めた。宇宙軍の戦列艦が砲撃するべくジェフリーへと近づいたのだが、案の定、荷電粒子砲で攻撃を受けたようだ。直撃を受けた戦列艦が一隻、コントロールを失って金星の表面へ墜落したらしいな。なんてことだ……」
深い溜息を一つ吐き出したエディ。
何事かの言葉を待っていたBチームだが、エディは顎をさすりつつ思案に暮れていて、皆はそれに続く言葉を辛抱強く待ち続けたのだった。
思わぬ形で仕切り直しになった金星攻略作戦だが、酷い戦闘になると聞いていた割に拍子抜けだったバードは、この先も大したことが無いだろうとすら思い始めていた。
ただ、その根拠の無い予測は最悪の形で裏切られる事になるのを、バード自身が予期すらしていないのだった……
ここで折り返しです。明日はお休みします。
続きは13日に公開します。




