第二段階
――――金星アフロディーテ高地上空 高度10キロ付近
金星標準時間 4月7日 0700
夜明け前の様に薄暗い金星の空へ飛びあがる前から、バードはずっと不機嫌だった。普段より早起きが辛いと言うことではなく、工程として無駄じゃ無いかと思っているのだった。気を紛らわすようにチラリと辺りを見れば、自分の機体から薄く伸びるコントレイルが見える。バードは無意識のうちにスロットルを少々絞り、リアクターへ投入する反応材を抑えた。これだけで飛行の痕跡はウンと減っていくのだが……
『……なんで先週のうちに来なかったんだろう?』
のっけから不機嫌なバードの声にメンバーが失笑する。モニターに映るアフロディーテ高地の上空は、金星特有の強い気流に巻き上げられた、黄色い砂塵に被われていた。
『そりゃ生身の方は休息が必要だからな』
『ODSTも全部サイボーグにしちゃえば良いのにね』
ダニーの言葉にますます不機嫌っぽい空気のバード。棘混じりの言葉に皆が失笑するなか、バードは相変わらずモニター越しの世界を呪っていた。
『コストってモンも考えろよ。戦争だって結局は経済活動の一環だぜ』
『そりゃそうだけどさぁ……』
宥めに掛かったビルだが、バードの言いたい不平不満はよく理解出来る部分でもある。Dチームのナーダ基地突入を支援した翌日。生き残った生身の海兵隊員やODSTを再編し、それに地上軍の精鋭をミックスした兵士らを率いたCチームは、アフロディーテ高原の広大な航空基地へ突入する予定だった。金星最大の航空基地があるはずのアフロディーテ高地は全く雪が無い砂漠のような環境で、昨日のうちに来ていればまだ対抗準備も整っていないと思われたからだった。
だが、突然作戦は一週間延期された。その理由は士官であるバードたちにも一切公開されなかった。参謀本部が検討を重ねて出した結論なのだから、それに従うだけ。抵抗する理由はないし動機もない。ただ、先週のうちに来たほうが楽だったと、そんな事を思っているのだった。
『とりあえず事前情報じゃシリウスの戦闘機が300機近く居るって話しだ』
アリョーシャレポートのページを捲っていたドリーの声は溜息の入り交じったボヤキ気味で、臨時と言う立場を差し引いても本来はチームリーダーにあるまじき姿だった。
『どっからそんなに持って来たんっだろうな?』
『さぁな。やっぱり金星で組み立てたんじゃ無いか?』
『マメな奴らだぜ』
『全くだ。戦争の準備じゃ無くて金星の改良に熱を上げて欲しかったもんだ』
メンバーが口々に無線の中で愚痴を言う。そんな言葉を聞きながら飛行するバードは、深く深くため息をつき、睨み付けるように地上を監視していた。
『バーディ、そんなため息してたら運が逃げるぜ』
『ハードラックは慣れてるから平気よ』
『不幸自慢なら負ける気しないんだけどな』
精一杯強がりを言うのだが、ロックに声をかけられどこか嬉しくもあるバード。前夜に聞いたロックの独白をベッドの中で何度も反芻して、そして、少しでもロックを分かろうとしていたのだ。いまはロックと話を出来るだけでも嬉しかった。
『おぃ見ろよ! ロックとバーディーがお熱いもんだから――
ふたりを冷やかすダニーの言葉に再び皆が失笑した。気が付けばロック機とバード機だけが金星の空に飛行機雲を引いて飛んでいた。もう少しスロットルを絞って反応剤を多く入れて推力を作れば良いのだが、どうも注意散漫になっていたようだった。
そんな事に少しだけ照れつつも、バードは地上監視を怠ってはいない。まだまだ仲間達がアレコレと囃し立てているのだが、そんな言葉の最後でリーナーがボソリと言った。
『アフロディーテの基地を占領したら前線基地にするそうだな』
金星最大の航空拠点でもあるこの基地は、広大な気密ハンガーを持ったドームが特徴だ。茶褐色の乾いた大地に存在する純白の基地。壁もデッキも全て白く塗られていて、とにかくやたらに目立つのだった。
『おっ! Cチームが降下するぞ!』
ペイトンの声が聞こえバードは地上監視の最中にもかかわらず、チラリと横目で降下艇を見た。後方の降下ハッチが開き、降下準備が整ったようだ。
『俺たちも行こうぜ! 警戒を怠るなよ! そーれっ! 急降下だ!』
ドリーが先頭切って降下を開始し、それに続きBチームが一斉に急降下した。空裂音が響き、ベイパーを引いて降下していくシェル11機。前週のナーダ基地攻略から1週間。テッド隊長は今回も参戦していなかった……
『地上拠点からの迎撃兆候なし!』
ジャクソンの声が訝しげだ。
『全域で通信無線なし。有線通信リークもなし。どうなってんだ?』
ジョンソンは全バンドで通信信号を探しているのだが、全く電波が漏れていなかった。警戒しつつもそのまま着陸したBチームのシェルは飛行用エンジンを切り地上戦モードへ切り替わった。
『どういう事だ?』
分散陣系となって基地の周辺に展開したBチームのシェルは、全てのスキャナーで基地の中を探索する。航空機ハンガーには戦闘機どころか連絡機や哨戒機の陰すらなく、管制塔にも建物内にも人影が全く無かった。
『Bチーム諸君。護衛に感謝する。さて、じゃぁ家捜ししますか!』
無線の中にウッディ少佐の声が流れ、Cチーム隊長を先頭にゾクゾクとタッチダウンを決めているCチームメンバー達は、手分けをして建屋に入って行った。地上を移動しハンガー部に集合したBチームの背後あたりへODSTが降下を開始し、ややあって大型降下艇で運ばれてきた海兵隊が展開を始めた。
『なんだか嫌な空気ね』
ボソリと呟いたバード。その言葉に皆が緊張のレベルを上げた。チームの中で誰よりも直感が鋭い彼女の言葉は、皆に緊張を強いるには十分な威力だった。
『今まで色々見たけど、こんな時って間違いなく罠だよな』
ライアンの声が不自然に緊張していた。ライアンだけでなくBチームの面々は生唾を飲み込むような緊張感に包まれていた。理屈ではなく肌感覚として、異常なまでの殺気を感じていた。それはまるで大型肉食獣と対峙した時のような、思わず後退りしたくなるようなモノだった。
『火星のあの病院基地の地下みてぇだ』
なんともべらんめぇな口調で言うロックだが、あの空気を経験したライアンやペイトンや、そしてバードも同じ気配を思い出している。『何か』が確実にそこに居る。だけどその姿は見えない。そんな恐怖心と戦いながらも、Bチームのシェルは鷹揚と周辺を警戒していた。続々と建物内へ吸い込まれていく海兵隊を見送りながら、バードはレーダー反応をジッと見つめていた。
『あれ?』
基地の北東側。なだらかに広がる平原は各所に段々が形成されていて、イシュタル高原が火山隆起で作られた構造である事を示していた。そんな段差の影の部分に何かが動いたのだった。
『え?』
ロックも何かを見つけた。基地北西側の段差部分。その向こうに何かが居る。構造的に大きく螺旋を描いて高度を上げてくる渦巻状の道。基地へと続くその道は基地の側から見れば段差の陰になっていた。
『なんか居るぜ!』
ロックに続きペイトンが注意を促した。基地の南西側にある大きなギャップに隠れている何かがチラリと見えた。ドライアイスの雪が積もった海へ消えていく斜面の途中には、天然の塹壕とも言うべき溝があったのだった。
『おい! ちょっとまて!』
ジャクソンが絶叫しつついきなりチェーンガンを発砲した。毎分6000発の射撃能力を誇る30ミリチェーンガンが猛然と降り注いだエリアには、真っ白い霧状になったレプリの血が舞い上がっていて、ミスト状になったその血液は周辺の茶褐色な大地に降り注がれた。
『基地周辺全域に敵兵! 包囲されている!』
ジョンソンが全無線バンドに警報を出した。それと同時にRPGが発射され、ジョンソンはシェルの身をよじって弾頭を交わした。だが、その弾頭が進んでいった先には海兵隊の突入した建物の出入り口があり、見事に着弾した弾頭によって、大型ドアの一つが完全につぶされてしまった。
『FUCK!』
ジョンソンのFワードが発端となったのかどうかは知らないが、基地の周辺に潜伏していたらしいレプリカントによる一斉飽和攻撃が開始された。これといって重火器や戦車と言ったシェルの脅威になるモノは少ないが、その数だけは夥しいという表現ですら足りないと思わせる物だった。
『周辺のレプリ反応、推定5万以上!』
バードも無線の中へそう叫んでから、チェーンガンを使ってとにかく数を減らす方向で迎撃を開始した。だが悲しいかな、チェーンガンはその発射サイクルがあまりに早すぎる為、1分掛からず全弾を撃ちつくしてしまう。
予備弾薬を収めたユニットに交換し、さらに迎撃するのだが、とにかく数が多すぎてどうしようもない状況に陥り始めた。全シェルの持つチェーンガン用の装備弾薬よりも敵の方が多いのだ。地面一面を覆いつくすようにやってくるレプリカントの津波とも言える状態で、文字通りの人海戦術だった。
『ジョンソン! 砲撃支援を要請しようぜ!』
『オーケー!! 幾らなんでもこれじゃ磨り潰される!』
ドリーの声にジョンソンが賛同し、同時に広域戦闘通信を使って上空へ砲撃要請をジョンソンは上げ始めた。
『ガーダー! ガーダー! こちらBチームジョンソン大尉! 支援砲撃を要請する! 砲撃座標は――
その間にも続々と迫ってくるレプリカントの津波に対し、Bチームは全ての火器を動員して対抗し始めた。レプリの兵士は恐怖など無いかのように接近し、次々とRPGを使って攻撃してくる。
とにかく接近を許したらやられる。その事実が段々と重く圧し掛かり、やがてそれは恐怖と言う感情へと変貌を遂げるのだった。
『冗談じゃねぇぞ!』
いきなり無線の中にジョンソンが吼えた。
その声にペイトンが叫び返す。
『どうした』
『砲撃誤差圏内に基地がすっぽり入るんで艦砲射撃できねぇとよ!』
そんな会話の中だが、レプリは基地まで3キロ程度まで接近していた。チェーンガンの残弾は幾許も無く、モーターカノンで迎撃するにしたって効率が悪すぎる。その上、ここには居ない戦闘機が帰ってきた場合、モーターカノンの弾薬も使いつぶしてしまっては、シェルは戦闘機を攻撃する手段がなくなってしまう。
だが、このままではジリジリと距離を削られて行くだけだ。決断するなら早い方が良い。とにかく上空へ逃げて、それから基地内の海兵隊と地上軍兵士に迎撃させる方が良策だ。
『ウッディー少佐!』
チーム無線ではなく宇宙軍汎用バンドでCチームリーダーを呼んだドリー。だが、その返答は突然響いた断末魔の声だった。
『ドリーか!』
『ウッディ隊長! どうしました!』
『トンでもねぇのが基地の奥に居た!』
『トンでもねぇって?』
レプリの迎撃で忙しいはずのBチームだが、その面々の視界にウッディ隊長の見ている視界がオーバーレイされた。そこには刃渡り1メートルを軽く越える長刀を装備し、まるでレオタードの様に身体へぴったりとフィットする強化繊維の戦闘服を着たレプリカントが写っていた。そして、その動きは訓練を受けていないものでは対処すら出来ない速度だった。
そんな速度で基地の通路を一気に駆け抜け、基地の中へ突入した生身のODST兵士を次々と惨殺している。また、Cチームの隊員がすでに10名斬られていて、その大半が正中線に沿って縦に真っ二つと言う状態だった。サイボーグとはいえ、文字通りの即死だ。
『ドリー! こっちを支援できるか?』
『いや……』
ドリーは現状を素早く説明した。完全に罠だったと付け加えて。
『わかった! 戦術的撤退に入る。生身を外へ出すからレプリはそっちに任せよう。銃列を敷いて連中を蜂の巣にするんだ。俺たちは基地を爆破しつつ後退し、向こうのソードマンを生き埋めにする。最後は艦砲射撃だ!』
『了解!』
手短なブリーフィングを終えたドリーはBチーム全員にレプリの外側へ移動の指示を出した。空中退避し、そのままレプリの裏へまわって基地から出てくる海兵隊の迎撃と挟み撃ちにする作戦だ。
『とりあえず空中へ退避だ!』
各機が続々と離陸していくなか、バードもエンジンを点火して上昇を始めた。まさにそのタイミングで脳内に空戦警戒のアラームが鳴り響く。仮想パネルの上に広がるレーダー計器には、高速で接近してくるシリウス戦闘機の反応があった。
『散開しよう! 味方を撃たないように注意だ! 射程圏内に入ったら確固判断で迎撃を開始してくれ! 生きて船へ帰ろうぜ!』
ドリーの気休めみたいな声が響き、続々と戦闘機を撃墜するシェル各機。だが、いかんせん数が多すぎて多勢に無勢となり、散開陣形の筈だったのに、ジリジリと後退し始めていた。
『これさ、もしかして基地ごと自爆する腹じゃ無い?』
どうにかして基地へ押し込めておくように振舞うシリウス側。なんとなく思惑を理解したバードがそんな事を叫ぶ。だが、レーダーには戦闘機群のさらに遠くからアンノウンと表示されたもう一つの航空機集団を映し出していた。
『こりゃぁ年貢の納め時かも知れねぇぜ!』
ヒャッヒャッヒャと変な笑いを始めたロック。そんな声に憮然としつつも、レーダー画面をガン見したままバードは凍り付いていた。今までアンノウンと表示されていた航空機集団は、その全てがシリウス側の戦闘機だった。
レーダー画面に表示されているモノだけで200機以上居るらしく、続々と撃墜してはいるものの、いっこうに総数が減ってこない状態だった。地力で勝っては居るのだが、いかんせん『戦いは数』なのだ。撃墜しても撃墜しても、後から後からワラワラと迫ってくる。
『賑やかな団体様のご到着みたいよ!』
バードの声がイカレはじめたと皆が思った。こんな声を今まで聞いた事が無かったからだ。だが、当のバード自身も薄笑いを浮かべている自分に驚いた。痺れるようなスリルを味わいながら、次々とシリウスの戦闘機を血祭りに上げていた。
『なんだかこう楽しくなってくるな!』
『全くだ! 次から次へと楽しましてくれるぜ!』
スミスとビルは笑いながらモーターカノンの射撃を続けていた。その全ての射撃がシリウス側戦闘機を撃墜していて、もはや戦闘と言うより単純作業と言った方が良い状態になりつつあった。
『こちらODST103! ハンガー部分に出る!』
『同じくODST104! 東棟から出て火線を敷く!』
ODSTの曹長など下士官達が広域戦闘無線で皆に呼びかけていた。基地の奥深くへ入っていたODSTや海兵隊の隊員が続々と基地の外へ出て、そこで3段構えの銃列をつくり制圧射撃を始めた。
どれ程兵器が高性能になっても、どれ程圧倒的な破壊力を持つ兵器が登場しても、戦争の真実として最後には『戦いは数』であり『数は力』なのだ。そしてそれは、兵士の持つ自動小銃の数で左右されるのだ。なぜなら、都市や基地やありとあらゆる戦略目標の全てにおいて、最後は人が占領する必要があるのだから。
『ODST各大隊は上空に注意されたい! めんどクセェ物を落っことすからあたらねぇように! 申しわけねぇ!』
地上の各隊へ通達を飛ばしたジョンソン。同じタイミングで基地の中から大爆発が発生した。Cチームが基地内部で剣士と遣り合っているのだと皆が思う。ふとバードはロック機を見た。そして、コックピットの中のロックを思った。きっと自分が行きたいと思っている筈だ。
だが、それはどう考えても不可能だと認識せざるを得ない状況だ。現状ではまず生き残る為に最大限の努力が必要だと、そう痛感せざるを得ない事態だ。Bチームのシェルに襲い掛かるシリウスの戦闘機は、その動きに一切の迷いが無い。攻撃手段が命中しなければ体当たりのカミカゼ攻撃も辞さない行動パターンだ。
『どうでも良いけどよぉ! こいつら体当たり前提じゃねぇ?』
ライアンの言葉には隠し様の無い怒気があった。撃っても撃っても終わらない敵の攻撃が段々と精神を蝕み始め、後退するにしたって下がりようの無い事態に陥りつつあった。文字通りのジリ貧だ。
『こりゃダメだ! サイドチェンジだ!』
後退するのを止めたスミスとリーナーは、モーターカノンを乱射しつつもグッと前に出てシリウスの戦闘機を押し返し始めた。基地の上空で海兵隊の盾になる事を諦め、こっちから動く事でスペースを作り有利なポジションへ移動したのだ。
こうすれば格段に攻撃しやすくなり、パッシブではなくアクティブな攻撃を可能とする。だが……
『こちらODST102! 直援支援求む! 直援支援求む!』
無線の中に響く金切り声。Bチームの半分が基地の上空を離れた瞬間、シリウスの戦闘機は地上への直接攻撃を始めた。つまり、地上の歩兵戦力を人質に取られた形とも言える。地上では次々と小規模爆発が続き、上空からの対地攻撃とレプリの兵士による飽和攻撃に晒され、海兵隊が磨り潰されつつあった。
『全くもって親切な奴らだ!』
『地獄で呪ってやろうぜ!』
基地上空へ戻ったペイトンとダニー。無線の中に二人の言葉が流れ、それを合図にするように、続々と基地の上空へBチームが戻ってくる。シリウスの戦闘機はクモの子を散らすように散開し、地上戦力は再びレプリ兵士に専念できる体制になったのだが。
『ジャクソン! ビル! ライアン! ロック! リーナー! 一旦基地の上空を離れろ! ぐるっと円を描いて再突入だ! ペイトン! スミス! ダニー! バーディー! 突入してきた連中に場所を開けて基地を飛び出せ! 波状運動するぞ! ジョン! 俺と勝負だ!』
ドリーはパッと作戦を切り替え全員に指示を出す。そのニュアンスを理解したかのように、ジャクソン以下の5機が基地の上空を離れた。ドリーとジョンソンを中心に残りのシェルが全方位へ砲を向け迎撃する中、再びシリウス戦闘機が襲い掛かってくる。
『引っかかったな!』
襲い掛かってきた戦闘機を迎撃していたビルが叫ぶ。基地上空を離れたシェルと入れ替わりでシリウスの戦闘機が一斉に襲い掛かってきた。それに対処していたシェルが突然上昇し基地上空を離脱する。
一瞬対処に遅れの出た戦闘機が空虚な時間をすごし、その油断が決定的かつ致命的だったと彼らは理解した。ぐるっと周回した残りのシェルが後方から一斉に襲い掛かったのだった。
航空機と言う戦闘兵器はどれ程進化したとしても、後方からの攻撃にはからっきし弱いのが宿命だ。紙の様に次々と撃墜され、シリウスの戦闘機は慌てて基地から距離を取った。そして、その距離を取った戦闘機は散開していったジャクソン達によって離れた所で撃墜され始める。
『あんがい上手くいったな』
『流石だぜドリー!』
一瞬の間にゲラゲラと笑ったジョンソン。その直後、再び基地側で大爆発が起きた。相当強力な爆薬を使ったらしく、莫大な量の破片が撒き散らされ、地上戦力へ瓦礫が降り注ぐ。
一瞬息を呑んだバード。そしてBチーム全員も。Cチームのウッディー隊長が送ってきた基地の中の映像には、ロックの父親が幾人もの弟子を連れ、ソードを抜いて立っていたのだった。




