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機械仕掛けのバーディー  作者: 陸奥守
第6話 オペレーション・トールハンマー
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医務室(後編)

「これは……どっちがやったんですか?」

「公式にはテロリスト側が自爆したと言う事になっている」


 モニターの向こうでは日本政府の公式記者会見が行われていた。官房長官がフリップを指しながら解説している。


『警察による突入が行われたのですが全ての人質を救出する事は叶いませんでした』


 記者が手を上げる。


『ビル内部に国連軍が居たと言う情報がありますが』

『現在確認中です。私の手元にはそのような報告が来ていません』

『最上階に居た人質は国連機関のエアランチで地上に降りたそうですが』

『それも確認中です。速報では人質の生死や状況だけしか把握できません』


 別の記者が手を上げる。


『実際に突入したのは自衛国防軍の特殊部隊だと言う情報については』

『こちらの動画にあるとおり、突入したのは機動隊の特殊作戦チームです』


 モニターには黒尽くめの男たちがビルへ突入するシーンが繰り返し流れている。ビル前で激しい銃撃戦になっているのだが、実際にこんなシーンがあったらしい。


『向かいのビルから狙撃を行ったと言う情報が有りますが』

『現在調査中です。公式報告書は週明けに公表の予定です。それを待ってください』


 やんわりと断って肯定も否定もしない公式会見が続いている。


『ビルを爆破したのはテロリスト側ですか?』

『私が把握している情報ですと、そうなります。爆薬の解体を試みている最中に銃撃戦が発生し、引火爆発に至ったようです。爆薬の解体を試みていた隊員は巻き込まれ殉職しました』


 画面が切り替わり、崩れ落ちたビルのすぐ近くから中継が行われている。微妙な表情で画面に映っている女子アナが放送を始めていた。

 

『現在、崩れ落ちた渋谷テンナインの非常線ギリギリへ来ています。ここから先への進入は警察官により止められています。ですが、ここに居ても血の臭いがして来るほどの酷い状況なのが見て取れます。各所の瓦礫の中に真っ赤な血液の跡が見られます。また、各部には真っ白い塗料のような物が付着しています。これはレプリカントの人工血液かもしれません。人型建設機械が運び込まれ、慎重に瓦礫をどかしながら遺体の収容が進められています。ここで収集した情報によりますと、上部のホテル部分に居た人質は逃げるまもなく巻き込まれたようです』


 モニターの電源が落とされ、小鳥遊は状況把握を終えた。


「発火させたのは我々ですね」

「いや、発火させたのは我々海兵隊だ」

「え?」

「地下も48階も、我々が火をつけた」

「そうだったんですか」

「あぁ。ホテル部分に居た人質はシリウス側のシンパだ」

「……つまり」


 あまりにショッキングな言葉が出てきて小鳥遊は息を呑んだ。だけど、そんな事を気にせずエディが口を開いた。小鳥遊を真っ直ぐに見ていた。


「うん。シリウス側の人間も纏めて処分した。いい機会だった」


 先ほどまでの暖かかな口調ではなく、冷徹な軍人としての言葉が出てくる。そのギャップに小鳥遊は驚くのだが、すぐにハッと気が付いた。軍隊としての真実。軍人としての核心部分。


「戦争は時にどれ程の非道をも肯定する。大切な事を忘れていました」

「我々しか出来ない事だから我々がこの手を汚す。聊か要約が過ぎるかね」

「いえ。軍人に必要な事です。教育隊を思い出します」


 小鳥遊は少しうつむいて唇を噛んでいる。


「ミスター小鳥遊。あなたの同僚や友人の遺体もあの中に多数あるだろう」

「はい。20階前後で激しい銃撃戦があったのは知っています」

「そうそう。その件だが」


 エディは再びビルへ話を振った。ここから先はお前の出番だと言わんばかりだ。


「実は20階に有る吹き抜けフロアで激しい銃撃戦が行われた後も生き残りが居た様で」


(三人か四人が暗闇に隠れてうずくまっていたんだが……)

「Three or four man were hiding and shuddering at darkness. but……」


「実際にその中から救出できたのは一人でした」


(みんな勇敢に戦った。最高の男たちだった)

「All members have good fought.They were wonder men」


 ビルとジャクソンが状況を説明している。

 日本語と英語が入り乱れて理解できるかな?とバードは心配するのだが。


「I think that……」


 テッド隊長が何かを言おうとして口をつぐみ、エディを見た。


『なんだ?』

『日本語の使い方として心配なんだが』

『構わず言ってみろ。同時通訳してやる』


「こっちのテッドが言うには、勝てた負けたの話ではなく、責任感を持って良く戦った君の仲間は実に立派だったと。はっきり言えばネクサスシリーズに対し生身で戦闘を挑んでそれなりに戦果を上げたと言うのが信じられないと。仲間の死を踏み越えて同胞救助に向かった君らの努力は称賛される事はあっても非難される様な事は無い筈だと。つまり、その貴重な犠牲を捧げてまでも勝ち取った人質の命なのだから、あの中で押しつぶされてしまったとしても、本望だろう。兵士である以上は、仕方が無いことだ。回収出来なかったのは残念だ。しかし、遺体を回収する事よりも遥かに重要な事が残った筈だ。テッドはそう言っている」


 エディの目が『お前の番だ』と言う風にテッド隊長を見た。


「Duty. Responsibility. Obligation. ギム ヲ ハタシタ スバラシイ コトダ」

「有り難うございます。仲間も浮かばれるでしょう」

「そうだ。義務を果たしたからこそ得られる最上の物を彼らは得たはずだ」


 エディは優しく微笑んだ。


「名誉だ」

「……名誉」

「そう。金では買えない物だ。汗を流し血を流し危険を犯して得られるもの」

「………………」

「人殺しとなじる者も居るだろう。失敗したと糾弾する者も居るだろう。だけど」


 小鳥遊は真っ直ぐにエディを見ている。


「名誉や栄誉を得られると困る者が喚いているに過ぎない。どれ程喚いても無駄だ」

「そうでしょうか」

「そうだとも。死んだ隊員以上の人質を助けたじゃ無いか。それは事実なんだ」

「…………またテレビ番組で色々と言われるのが目に浮かびます」

「そうかもしれんが、ならばむしろ、君は胸を張って帰るべきだ。義務を果たしたと」

「はい」


 小鳥遊の目がテッド隊長に移った。


「Captain Ted. Please tell me your name. full name. Please」


 小鳥遊の目がビルやジャクソンにも向かった。

 一瞬どうしようかとテッド隊長も迷った。


「Why? My name is Ted」

「No No No fullname please」

「My name is Ted」 


 テッド隊長がニヤリと笑う。


「Only」

「ミスター小鳥遊。これは重要な問題なんだが」


 話の続きはビルがはじめた。

 聞きたい事は分かっているけど、答えられないものはしょうがない。


「我々サイボーグスコードロンは軌道降下強襲兵としてシリウス側との戦闘の最前線に居ます。そのメンバーは実は全てニックネーム・コードネームで呼ばれているのです。何故かと言うと、地球の地上にいる我々の家族がテロの対象になる可能性が有るからです。或いは誘拐や人質立て篭もりといった手段をとられる危険性を考慮しているのです。だから、テッド隊長の本名を私は知らないし、私のビルと言う名前も実は偽名です。フルネームなんてものは実はトップシークレットなんですよ。申し訳ありませんが諦めてください」


 ビルの口から出た言葉に小鳥遊は驚く。最前線に居る覚悟とはこういう物なのかと、改めてそんな事実に身震いをする。そして、暗に『消耗品』扱いされている部分に気が付き言葉を失った。


「……私は気が付いたらここに居ました。銃声で僅かに目を覚ました時、誰かに担がれて階段を駆け上がっていきました。出来ればその方に、直接お礼を申し上げたいのですが」


 エディはチラリとテッド隊長を見た。その仕草に不思議そうな表情を浮かべるビルやジャクソン。もちろんテッド隊長も意味を理解していない。


「ちょっと待ってくれ。今ここへ呼ぶ。ただちょっと、困った問題があって」


 ボリボリと頭をかいたエディ。


『ビルとジャクソンはガンルームへ戻れ』

『なぜですか?』『そうっすよ。バード呼べば済む事で』

『いいから戻れ。すぐに理由は分かる。俺の口からは言えないだけだ』


 やおら立ち上がったテッド隊長ら三人。黙っていきなり立ち上がったので、小鳥遊は少々驚く。


「ミスター小鳥遊。とりあえず、ゆっくりしてください。では」


 ビルはそういい残して部屋を出て行った。

 ジャクソンも手を上げて部屋を出て行く。


『エディ なぜ俺だけ残る?』

『テッドは知っているべきだからだ』

『なにを?』


 オープン無線で会話しているエディとテッド。それを余所に、小鳥遊は不思議そうに見ていた。


「あの、今の部屋を出て行った方二人にはどうやって指示を?」

「我々は無線で話が出来るから。SF的だがテレパシーのようなものさ」


 エディが笑っている。

 だけど、舞台裏では緊迫したやり取りが続いていた。


『ロック。手が空いたか?』


 エディはチーム内無線に割り込んで直接指示を出し始める。


『あ。はい。大丈夫です』

『じゃぁバードと一緒に来い』

『了解』『了解しました』


 ガンルームの中。バードは拳銃を抜いて弾を確かめた。降下装備はとっくに脱いでいる。アンダーウェアの上につなぎを着てる状態なのだが。


「おいバーディー…… 何考えてんだ?」

「え? あ、いや…… 万が一にもレプリの場合は戦闘になるかな?って」

「まさかそんな訳あるかよ」

「でも、用心しないとね。ゾーラの件もあるし」


 ニコッと笑ったバード。その笑顔が不自然に歪んでいるのを気が付かないロックじゃ無い。ぎこちなく歩き始めたバードを目で追うロック。廊下を歩きながらチラリとバードの横顔を見た。その不自然に思いつめ緊張する表情に、尋常ならざる事態だと理解する。

 エディの指示がもう一度飛ぶ。チーム内無線全部に聞こえる声だ。


『バード いきなり撃つなよ』

『イエッサー』


 ガンルームの中に場違いな緊張が走る。


「エディは何を警戒してるんだ?」


 不思議そうにしているスミス。ジョンソンもリーナーと顔を見合わせながらモニターを見ている。そんな中、アリョーシャはブルと僅かにアイコンタクトした。


「全員よく聞いてくれ」


 アリョーシャが強い口調で言い切った。


「これから起きる事は絶対に報告書には書くな。いいな」


 ブルの言葉に皆が頷く。全員がカメラの向こうで血が流れるのを覚悟した。医務室のカメラ画像に全員が釘付けになっていて、通路画像にバードの姿が見えた。


    コンコン


 バードはまず部屋をノックする事から始めた。中からエディの声が聞こえる。


「入れ」

「失礼します」


 ドアを開けたけど、バードはロックに先に入るよう促した。不思議そうにして先に入ったロック。バードはどうやっても足が出なかった。


「あれ? あの……」


 小鳥遊も不思議がっている。だが、エディだけは極限の緊張を浮かべていた。僅かに腰を浮かし、いつでも飛びかかれる状態だった。


「おぃ! 何やってんだよ」


 ロックは笑って手招きしたのだけど、バードの振る舞いに凍り付く。バードはもう一度拳銃を確かめて、セーフティを外したままホルスターに納めた。抜けばそのまま撃てる体制だ。

 顔を上げたバードの表情に悲壮感が漂っていて、その表情に何かを感じたロックはバードと小鳥遊の間に立つのを避けた。意を決し部屋の中に一歩進んで入ったバード。下を向いていたのだけど、出来る限りの笑顔を作って。バードは顔を上げた。


「生き残って…… よかったね」


 最初、小鳥遊は事態を飲み込めなかったようだ。だが、その次の瞬間には口をぽかんと開け、ワナワナと震えている。目を大きく見開き、そのまま次の言葉を言わんとしているのだけど。


「そんなに驚いちゃ傷に触るよ。大人しくしてないと……」


 バードの顔が不自然な笑顔だった。引きつっているようで、泣き顔のようで、でも、満面の笑みでもあるようで。


「おっ お前…… 嘘だろ」

「たぶん本物よ。久しぶりだね。3年ぶりくらいかな?」


 ガンルームの中が一瞬凍り付いた。


「おい。バーディーは何しゃべってんだ?」


 日本語を理解できないメンバーが通訳を頼んだ。だけど、通訳をしたビルともう一人日本語を理解できるダニーが首をかしげている。


「久しぶりって言ったな。3年ぶりって」

「バーディーの旦那かボーイフレンドか?」

「いや、そんな雰囲気でも無い」


 皆が事態を飲み込めず黙り込んだ。そんな中、チーム無線の中にバードの声が流れる。


『正解はね。私の兄貴。お兄ちゃん』


 部屋に『え?』と言う声があがり、声にならない驚きで埋め尽くされる。ロックもテッド隊長も一斉にバードを見た。驚いてないのはエディだけだった。


「ほんと、久しぶりだね。お兄ちゃん」

「なぜ? なんでだ?? お前は……」

「うん。公式には死んだ事になってるはず」


 そのまま歩み寄って小鳥遊の腰掛けていたベッドに腰を下ろす。サイボーグの重量に耐えられる筈ではあるが、それでもベッドがミシリと軋む。


「さっきビルが言ったと思うけど。私の名前は内緒だからね」


 ニコッと笑ったバード。小鳥遊は震える手でその顔を触った。


「つっ 冷たい……」

「当たり前じゃない。サイボーグに毛細血管は無いんだから」

「おっ お前……」

「私はバード。よろしくね」


 泣き出しそうな顔をしている小鳥遊を笑って見ているバード。だけど、心の中でバードは号泣していた。


「バード…… バーディ…… じゃっ! じゃぁ!」


 ロックが驚きのあまり二人の顔を何度も見た。


「言われて気が付いた。良く見れば似てるよ。確かに。目がそっくりだ」

「ダメよロック。そんなに驚いてちゃ。CQBスペシャリスト失格よ」


 ふんわりと笑みを浮かべて居るバード。だけど、どこか寂しそうな笑みで、しかも、今にも泣き出しそうな表情だ。バードの声が無線の中に流れる。


『みんな黙っていてごめん。だけど』

『わかっているさ。バード。心配するな。少なくとも俺はお前の味方だ』


 無線の中にテッド隊長の声が流れる。だが、間髪入れずに反応があった。


『あ! 隊長(オヤジ)キタネェ! 一番美味しい所持って行きやがった!』


 ジャクソンが最初に文句を言った。


『そうですよ。少なくともチームはみんなバーディーの味方だ。だよな?』


 ドリーが確かめるように言った。その声にメンバーが一斉に声を上げた。


『当たり前だ』『良かったなバーディー!』『そうだ。兄貴が挽肉になる所だった』『あの必死な表情で担いできてたのはこういう事だったのか』『死ななくて良かった』


 医務室の中、バードは笑みを浮かべてテッド隊長を見た。


『みんなありがとう…………』


「け…… じゃないな。バードと……言うのか」

「そう。間違えないでね。色々まずいから」


 小鳥遊の声にバードが答えた。だけど、その手と目はまだ緊張している。


「兄ちゃん。ごめん、これも仕事なんだ」


 バードの手が小鳥遊の顔をしっかりと捉えた。恐ろしい程の握力で顎を捕まれて小鳥遊が狼狽える。だけど、バードは兄、太一の目をしっかりと見た。

 

「仕事って……」


 バードの視界に反応が出ない。ネクサス反応も無い。ホッとした表情で手を離し、拳銃を抜いてセーフティをかけ直した。


「レプリカントが監視の目をかい潜って潜り込む例が頻発してるの。それを確かめた」


 ベッドから立ち上がってエディの隣に立ったバードは、ホルスターから拳銃を抜いてセーフティを確かめ、もう一度ホルスターへ収めた。


「顔を見た瞬間に名前を呼ばれたら撃つつもりで居たの。私だけじゃなく仲間の為に」


 驚きと悲しみの入り混じった表情で小鳥遊はバードを見ている。


「今の私は海兵隊のブレードランナーよ」

「ブレードランナー ……レプリハンター!」

「そう。こう見えても結構良いスコアよ?」


 女性的な優しい笑みで応じつつ、エディの隣で腕を組むバード。ずっと黙っていたエディは、バードの様子を確かめてから、ようやく口を開いた。


「本来であれば身内の時間を取ってやりたい所だが」

「いえ。私は。我々は、残念ながら軍人です。公私混同はよくありません」


 小鳥遊はベッドの上で居住まいを正した。


「エディ少将閣下。並びにテッド少佐殿。ロック少尉殿。バード少尉殿」


 小鳥遊が敬礼した。教科書のような美しいフォームで。そして、一度言葉を切って目を閉じ、心を鎮めた。大切な言葉を言う為の、大切な間。


「小鳥遊兵曹長。心より感謝いたします。自分はもとより、仲間の為、同胞の為、危険を冒し、泥にまみれる汚れ役を引き受けてくださり、どれほど感謝しても足りません。お世話になりました。まことにありがとうございます」


 エディはいったん立ち上がって部屋に居たBチームに発令する。


「attention!」


 Bチームの3人が士官らしく胸を張り居住まいを整えた。


「小鳥遊兵曹長。辛い任務、ご苦労だった。よくやった」


 エディが敬礼で答えた。テッド隊長もロックも。そしてバードも。同じく敬礼で答える。その手が降りるのを待って小鳥遊は手を下ろした。


『エディ。メンテに行くが良いか』

『あぁ。そうしてくれ』


 無線の中でテッドが確かめる。


「まだメンテの途中だから戻るね。養生して。寝てれば治るのは生身の特権よ」


 手を振りながらバードは部屋を出た。


「言われてみれば仕草がよく似てるな。バーディーの兄貴だとは思わなかったよ」


 ロックもそう言い残して部屋を出た。


「Good Job!」


 サムアップしてテッド隊長が部屋を出た。通路に出て隊長を待っていたロックとバード。医務室のドアが閉まり、歩き始めた時だった。


「……ロック」


 バードの声が震えている。ロックはその僅かな言葉にバードの心情を理解する。


「どうした?」


 いつもはどこかぶっきらぼうでキツメな口調のロック。だけど、この時ばかりは優しい声だった。







「……ごめん」








 短くそう言って、そのままロックに首に抱きついて、そしてバードは声を殺して嗚咽している。

 バードは思う。今日この時ほど涙が出ない事を悔しいと思った事は無い。

 

「つれぇよなぁ」


 ロックの手が優しくバードを抱きしめた。ソードのグリップを握りしめ、バッサバッサと敵を斬るロックの手は、まるでグローブだ。その無骨な手がバードの頭を優しく抱く。


「お兄ちゃん……」


 数分だけの役得。普段ならそんな声が飛び交うだろうチーム内無線。だけどこの時だけは、皆、黙って事の成り行きを眺めていた。


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