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機械仕掛けのバーディー  作者: 陸奥守
第5話 国連宇宙軍を10倍楽しむ方法
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自己との対話


  漆黒の闇……


  光も……


  音も……


  熱も……


  なにも感じない






 まったくのブラックアウト(全感覚喪失)状態。

 バードの意識だけがここにある。

 それ以外はなにもない。




 ――――死んだのかな?




 不思議と恐怖は無い。

 悲しみも憤りも感じない。

 諦観にも似た、どこまでも透明な心。




 ――――まぁ……いいか




 何となくイメージしていた事だ。

 痛みも苦しみも無い世界。

 全てから解放された世界。


 戦う日々の中でバードの思っていた……



 『すべての終わり』



 とは、こんな状態だった筈だ。





 ――――何でこんなことになったんだろう?





 だんだんといろんな事を思い出し始める。





     あの時ゲインズは『ありがとう』と言った

     そして『お世話になりました』とも言った





 ――――あいつはレプリだったはずだ

 ――――自分が憎むべき敵

 ――――打ち倒すべき敵






 自分の護るべき世界や人々や、そして仲間たちを脅かす存在だったはずだ。

 だけどあいつは、ゲインズは最期に笑っていた。満足げに笑っていた。


 『お世話になりました』

 




 ――――なぜだろう?




 バードの思考はまとまらない。


 さんざん走り回り、部下を統率し、この島を駆け巡った日々。

 仲間たちと笑いながらシャワーを浴びた。

 たいして美味くない飯を食べ、そして埃まみれで、眠った。

 散らかった部屋を片付け、衣服を整え……

 連日の室内検閲や衣服査察を受けたはずだ。




 死ぬのが前提の作戦だったのだろうか?





 突発的な事態だったのかも知れない。

 もしかしたら自爆するつもりは無かったのかも。

 

 見つかるはずがない潜入。

 純粋に訓練目的の潜入だったのかも。


 或いは、内部を調査し情報を持ち帰るとか。

 その上で新たな作戦へ向けた準備を。

 テロの支度をするはずだった。




 そんな可能性は無いだろうか?





 そう言えば……

 慌てて逃げ出したパット中尉は、どうやって逃げ出すつもりだったのだろう?

 このサンクレメンテ島は、絶海の孤島だ。

 泳いでどこかへ行けるほど生易しい場所ではない。


 つまり。

 最初から逃げ出す積もりなど無かった。

 文字通り偶発的に。

 意図せざる形でレプリであることがバレてしまった。



 ――――では、あの二人の目的はなんだろう?



 レプリではあるが訓練には積極的だった。

 限りある命の筈なのに、恐ろしく真面目に取り組んでいた。

 また、仲間たちを導いていた。


 チャウタイムもシャワータイムも、いつも笑ってジョークを飛ばしていた。


 レプリカントは人類の敵。

 地球人類を滅亡に追いやる為の存在。

 私はその脅威に対抗する為の剣。

 護るための盾。




   だけど……


   だけど……


   だけど……





 ――――だまされている!





 ふと思い浮かんだ言葉。

 そう思いたくはない。

 

 しかし。

 状況的には騙されてると言うのが一番正しい。




 ――――宇宙軍は私を騙している




 不要な戦争に駆り出し、やりたくもない戦闘を強要している。

 その証拠に、今まで遭遇したレプリは……



   いや

      それは詭弁だ



 ふと思い浮かぶだけで、両手両足の指じゃ足りないくらいに撃たれている。

 至近距離から大口径な銃で撃たれている。


 本当にシリウスは悪の組織なんだろうか?

 あの夜、ゲインズは。何か思いつめていたゲインズは……

 シリウスを誤解するなと言いたかったのではないだろうか。


 だから『スカウト』という言葉に。

 その言葉に妙な反応をしたんじゃないだろうか?


 シリウスとは、本当はもっともっと穏やかな組織?

 これは彼らシリウスの自己防衛?


 つまり、彼等から見たら、私は、私たちは。

 攻撃者であり抑圧の支配者であり、そして、捨て身の抵抗をするべき侵略者。


 命がけで立ち向かうべき存在。


 ならば、自分がしていることはなんだろうか?

 自分でも気がつかないうちに、私は悪魔に魂を売った女かも知れない。

 それだけじゃない。

 護るべき人達のために立ち上がった者達を殺してあるく(オウガ)

 悪魔の使い。いや、悪魔そのもの。死と破壊を司る魔女。



 生身の人間には出来ない芸当で命の束を刈り取る存在。

 そして、恨み辛みや憎しみ悲しみをぶつける為の的。

 象徴的存在としてのサイボーグ。


 バードの思考は益々混乱していく。




 ――――あれ?





  それじゃ

   私は

   私達は


   シリウス人が地球人を恨まないように作られた……の?

   憎悪の対象として作られたの?





 家族や友人がテロの対象となら無いように。

 それは詭弁でもなんでもなくて、文字通りの意味?

 とにかく恨まれる役で、しかも報復の対象にされかねないから。




 何度やっても家族を思い浮かべられないのは。

 家も街も太陽の光も思い出せるのに。

 家族の顔を思い浮かべられないのは。


 全部、テロの対象となりかねないから。

 だから、変なところでアシが付かないように。

 その為にこんな手の込んだ事を……




 ――――じゃぁ




   私とはいったいなんだ?


       私が私であるべき理由は?


    最初からレプリにやらせれば良いじゃ無い


           根無し草の存在に………


                     根無し草………


                          根無し………




 ――――今の私は根無し草だ!




  家族も友達も無い

   あるのは同じサイボーグの仲間だけ


  サイボーグをレプリに置き換えてみよう

   あるのは同じレプリカントだけ




 ――――あっ!




    やっぱり……



  我々は海兵隊は


   無辜の市民を護る砦


  剣となり


   盾となり


  市民に仇なす敵を打ち倒す


   この身体と精神の全ては市民の為に


  常に忠誠を


   我らの市民を護る為に

 

    すべては無辜の市民の為に


     常に忠誠を





   だけど





      それを行うべき存在が人間であるべき理由は無い……よね?






 バードの中にドス黒い何かが溜まる。

 腐臭を放ち横たわるソレはバードの心を蝕む。

 癒せない傷から拭えぬ血が流れる。




 ――――シリウスとはなんだ?




 火星で聞いた、あのレプリの男の言葉。

 ブリキのおもちゃと言われ蔑まれた。




        あいつは真実を知っていたのか?


 サイボーグとレプリカントの境界は実は酷く曖昧なのかも

   そもそも私はサイボーグじゃなくてレプリカントに入るはずだった


             入るはずだった

                       入る……

                             は……




 バードの……

 恵の中にあった何かがフォルム()を帯びる。

 そうか!と気が付く。



 レプリカントもサイボーグも『目的を持って作られた存在』だ。

 つまり、そのオペレーターとして人間が入るかAIを使うか。

 その境目は非常に曖昧であやふやで、そして、外部からは解らない。


 作った人間しか『絶対的断定』が出来ない仕組み。

 つまり、私が人間かAIかは、私を作った人しか解らない。


 そんな時、バードはふと月面基地へやって来たシーンを思い出した。

 案内してきた広瀬技官は何処か言葉を濁していた。




『 そ う い う 風 に 僕 が 作 っ た 』




 ――――やっぱり私は作られた存在?




 なんの為に?と考えるまでも無く、今まで戦ってきた敵を思い浮かべる。

 アチコチで銃を取って立ち向かってきたシリウス派と呼ばれる『敵』の存在。


 バードが打ち倒すべき敵もまた、市民の為に戦っている。

 つまり、正義と正義の戦い。

 バードと同じ様に彼らもまた、微塵の疑念なく自らの正義を信じている。




   ならば正義とはなんだ?

   私は何を信じれば良いんだ?

   絶対的な正義とはどこにあるんだ?


     わからない


     わからない


     わからない



    だけどそれも……


     もう

        関係無いかもしれない。




 ふと思ったバードの仮説。

 自分は死ぬ課程にあって脳が極限のクロックアップ中かも知れない。

 いま自分は、自分自身が着々と死につつあって。

 そのなかで自分との対話をしているだけかも知れない。


 この全感覚喪失は脳とサブコンのインターフェースが機能停止しているだけ。

 実はいま、サブコンがダミーモードで大暴れの真っ最中かも……


 パットフィールド中尉とゲインズ曹長以外にレプリが居たとしたら、今ごろは大騒ぎになっているかも。

 いや、私が大暴れで候補生と隊長達が全力射撃で機能停止させたかも。




 ――――誰にも迷惑かけてなきゃ良いな……




 実に日本人らしい思考的結論に到達したバード。

 今はただただ、仲間たちと候補生の無事を祈るしかない。


 サイボーグの基礎教育過程で体験した全感覚喪失は、パニック防止が主題だった。

 そのトレーニングのおかげで、バードはギリギリだが正気を保っていた。

 しかし、普通の人間とて全感覚遮断を行うと狂を発してしまう。

 いくら訓練されてるとはいえ、バードとて精神的負担は限界に近い。





 ――――死ぬなら死ぬで早く死にたい




 ふとそんな事を考えた時、バードは逆の視点に気がついた。

 自分はもう死んでいて、今は霊魂(ゴースト)だけの存在なのかも。

 肉体を失ったのだから感覚があるほうがおかしい。




 ――――あぁ そうか……




 妙に納得できる結論に達して、バードはそれ以上考えるのを止めた。

 自分が幽霊になったのであれば、波長の会う人が来るまで寝ていればいい。




 ――――つまんないなぁ……




 退屈感に気が触れる一歩前で悶えているとき、突然激しい耳なりを感じた。

 高周波と低周波が同時に襲いかかって来るような音だ。

 例えるなら、巨大なベル()の中にいる状態で、鐘を鳴らされたような。

 目の前で大推力のジェットエンジンがリヒートしているような。


 そんな状態だ。


 拷問状態でパニックを起こしていると、突然脳内にテッド隊長の声が聞えた。

 バードはソレを妙に懐かしいと感じた。


『バード。俺の声が聞こえるか?』


 一瞬、言葉がなかった。

 余りの感情的昂ぶりに言葉を失う。


『隊長………』


 何とか絞り出した一言。

 いま何を言うべきか、頭の中で上手くまとまらない。


『私は生きてるんですか?』


 不安の言葉を口にしたバード。

 一瞬、テッド隊長の空気が変わった。


『自分の状況が飲み込めるか?』

『全く分かりません』


 自分の声が情けなかった。

 涙声に近いと思った。

 だけど、一番素直な言葉だった。


『俺の目に入れてやる。ちょっと待て』


 今まで真っ暗闇にいたバードだが、突然太陽を直に見た様な眩しさを感じた。

 それはテッド隊長の視界情報がバードへ届いたからだ。

 光とはこんなにも美しいのかとバードは感動した。


 だが、次の瞬間にバードが見たモノは、肩口から下が完全に無くなった自分。

 テッド隊長の視界を共有しているバードの外見は、脳殻ユニットと最低限の頭部装甲と、そして頸椎連結トラスフレームに連なる僅かな上肩部基礎フレームだけ。

 胸部は胸の辺りから下が完全に失われていて、この状態で即死しなかった事が奇跡だとバードは思った。

 

 リアクターや内蔵バッテリーや油圧循環ポンプなどがそっくり失われている。

 脳殻内の酸素供給や生存機能部分は、後頭部の非常電源が頑張ったようだ。

 最大で五分しか機能しないはずの最後の手立て。

 これが動く時は『最期の言葉』を仲間に伝える時だけの筈だ……


『生き残ったんですか?』

『あぁ、そうだ。ロックなら、また死ね無かったと悔しがるレベルだ』

『まだ死んじゃだめって事ですね』

『そうだな。ほんとにきわどい所だった』


 肩口の下辺りから様々なケーブルやパイプが接続されたバード。

 それにより生体部分の機能が維持されているのだ。


 もう一度自分の脳殻部分をしげしげと眺めたバード。

 脳体の格納された強靱な特殊チタン製の容器の中に、自分が居る。

 そう思うと、なんだか非情に不思議な感覚になった。


 脳殻部分へのパイプは真っ赤な血液と澄み切った脳漿と。

 そして、生体ブリッジへと繋がる夥しい数の信号ケーブル。

 完全球体となっている脳殻容器の外部装甲には鋭い破片が刺さったままだ。


『無茶をしたな』

『すいません』

『だが、良い判断だった。お前を誇りに思う』

『え?』

『俺のチームに来てくれて本当にありがとう』

『隊長……』

『海兵隊で一番のブレードランナーだ』


 テッドの言葉がバードに痺れるような感動をもたらした。

 言葉を失って、ただただ、その言葉に酔った。

 何時も叱ったりモノを教えてくれたりする隊長が、自分へ感謝を口にした。


『なんだか…… 私にはもったいない言葉です』

『何を言ってるんだ。お前はそれだけの事をしたんだ』


 テッド隊長の言葉に続いてジョンソンとペイトンの言葉が聞える。


『バーディー! 良かった!』

『気が付いたか!』


 心の底から安堵するような言葉が届いた。

 泣き出す直前の、あの胸が一杯になる気持ちを、ふと思い出す。


『……ごめん。心配してくれてありがとう』

『良いって事よ!』

『そうだぜ! 隊長に取っちゃ孫娘みたいなもんでも、俺には妹感覚だからな』


 ジョンソンとペイトンの言葉がジンワリと染み込んでくる。

 だが、ちょっと不機嫌な咳払いと一緒に……


『俺を年寄り扱いするたぁ良い度胸だ』


 隊長の言葉が流れ皆で笑う。

 自分が何者かはこの際どうでも良い。

 ただ、今はこの仲間達の存在が嬉しい。

 バードの思考実験はそんな結果へと辿り付いた。


『今から新しい身体(ボディ)を組み立てる。それまで臨時休暇扱いだ』

『でも、休暇でも遊びにも行けません』

『それもそうだが、まぁ、それについては問題ない』


 珍しく隊長が快活に笑った。


『まぁ、たまにはゆっくり寝ているのも良いもんだ。三日間ほど脳を休めろ』

『……はい。ところで、アレンとシンプソンは?』

『あぁそうだ。あの二人を忘れていた』


 テッドの視界にジョンソンとペイトンが入ってきた。

 頭部しか残っていないバードを見て二人が驚いている。


『こりゃヒデェな』

『あぁ。トニー並だな』

『だけど、バーディーは生き残った』

『だな。やっぱりバーディーは持って生まれた運が良いんだな』


 新鮮に驚く二人の会話が収まるのを待ったテッドは、ポケットから書類を出した。

 テッドの視界に相乗りしているバードは、その書類を読んだ。


『あの二人はCIAの潜入調査員だったそうだ』

『CIA?』

『あぁ。先のカナダの一件で内部にレプリが居るって気が付いたらしい』

『じゃぁ、宇宙軍は好い面の皮だったって事ですね』

『まったくだ』


 はき捨てるようなテッド隊長の言葉。

 ジョンソンもペイトンもウンザリ気味だ。


『まぁ、終わった事だし、仕方が無い』

『そうですね』

『それで、CIAのお偉方から直筆サイン入りでお詫び状が届いた』

『ほんとだ』

『お前にもプレゼントがある』

『そうなんですか? なんだろう?』


 真剣に考えるバードだが、ジョンソンもペイトンもニヤニヤとしている。


『まぁ、三日後には動けるようになる筈だ。それまで役に立つだろう』

『え? なんだろう? え?』

『以上だ。俺達は候補生の訓練に戻る』

『続行ですか?』

『当然だ。ただ、お前は基地へ帰って良い。変わりにビルが来る』

『……研修終了ですか? 私のせいで』

『あんまりレベルが低すぎて、帰って来たそうだよ。心配するな』


 テッドの視界の中でジョンソンとペイトンが立ち上がった。

 急に視界がぐらりと揺れて、隊長も立ち上がったのだと気が付いた。


『気を付けてください。他にもいるかも』

『まぁ、それは心配ない。CIAは二名だけと言って来たからな』


 ちょっと安心したバードだが、再び不安が沸き起こってくる。

 またあの、全感覚遮断が来るのかと思うと気が滅入った。


『今からシミュレータータウンにログインさせる。ブラックアウトは嫌だろ?』

『はい。実は今、それを言おうとしました』

『それは心配ないさ』

『え?』

『まぁ、カフェにでも行ってゆっくりすると良い』

『……はい』


 意味が解らず、生返事をしたバード。

 だが、バードの視界には、フロリダの市街が広がった。


「しばらくね」


 バードの視界に現れた女性が微妙な笑みを浮かべていた。


「えっと…… どなたですか?」

「カナダの山荘前で一度会ってるでしょ?」


 ちょっと冷たい口調で言われて、そしてバードは思い出した。

 ケーブルだらけになって椅子に座っていたCIAの女だ!


「うちのボスからのプレゼントって事よ」

「ここは?」

「CIAが使っている仮想タウンの中。新人訓練や大規模追跡訓練なんかに使うシステムよ。この中にいる人は全部実在人物で、ネットワーク接続出来る人だけが集まる仮想世界だから、まぁ、第二の現実世界って事。全部CIA関係者かその家族のボランティアで運営してる閉じた世界よ」


 驚天動地に驚いたバード。

 ある意味でここは機密の塊りの筈だ。


「そこへなんで私が?」

「あなたには色々とお世話になったからね。三日くらい遊んで行ってって事」


 その女性はバードへカバンを押し付けた。


「だいたい、休暇だってのに仕事先のシミュなんか入りたくないでしょ? だからボスが気を使ったって訳よ。まぁ、必要な物は全部そこへ入ってるから後で確認したら?」


 ちょっときつめの口調だったのだけど、じっとバードを見たその女性が笑った。


「戦闘中の時とは随分違うわね。オンオフがハッキリしてるわ」

「そうかしら?」

「傍目に見てる分にはね。まぁ、そんな訳で私の仕事は終わり。じゃね」


 フッと目の前から女性が消えた。

 宇宙軍のシミュでもそうだったように、ログアウトしたのだろう。

 とりあえずカバンの中を見るバード。


 ホテルのパンフとクレジットカード。

 そしてアメリカドル紙幣が幾らか入っている。


 グルリと街を見渡せば、フロリダへ降下するときに見た華やかな街並みだった。

 もう一度ホテルのパンフを読んで場所を確認する。

 視界には何時も見えている支援情報が一切無い。

 つまり、擬似的に生身へ戻ったような状態だ。


 ―――― ふーん……


 ニヤリと笑って街を歩き出したバード

 道行く人々が誰も自分へ気を使わない気楽さを感じた。

 基地でも何処でも、士官であれば気を張ってならないのだが。


 ――――だれか遊んで欲しいな……


 ふとそんな事を呟く。

 チラリと見えたガラス張りの建物はチェーンのカフェだ。

 そこへ向かって歩いて行くと、そこに写る自分の姿は一人ぼっちだった。


 隣に誰か居れば。

 それが誰であるかを何となく意識したバード。

 だけど、僅かに首を振って妄想を振り払う。

 カフェの扉を開け、思わぬ臨時休暇を楽しもうと決めた。

 

 その内きっと、そんな日が来ると確信しながら。




 第5話 国連宇宙軍を10倍楽しむ方法 ―了―

 以上。起承転結の『起の章』が終わりました。

 約50万字ほど続きました。ここまでお付き合いありがとうございます。

 

 続きまして『承の章』を開始します。

 ただ、少々都合もありまして10月1日からの公開となります。

 それまでの間、地球とシリウスについて語っておこうかと思いますので、よろしくお付き合いください。

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