初降下
~承前
――――ODST降下十分前 降下用意!
中隊無線に声が響く。
バードは無意識に生唾を飲み込むようなフリをした。
サイボーグには有り得ない事だが、それでも生理反応的な振る舞いが顔を出す。
――――緊張する……
内心でそう呟いて気を紛らわすのだが、眼は泳ぐように艇内を見た。ヴェテラン海兵隊員はパラシュートの最終確認を続けている。空中へ飛び出してしまえば、不具合があっても対処出来ない。
そしてそれは、逃れようの無い死に直結している。パラシュートは、空中を漂って地上を目指す海兵隊達の命綱でもあった。
「遅くなりました! 第一遠征師団! マスターチーフ バリーボンズ! 参りました!」
マット大佐に呼び出されやって来たのは、第一遠征師団の名物兵曹長だ。
バードはこのバリーボンズ兵曹長を知っていた。もっとも、バリー兵曹長はバードとは初対面なのだが。
「ボンズ兵曹長。こちらは今回めでたく初降下になる新任のバード少尉だ」
ティアマット大佐は軽い調子でバードを紹介した。
細く小さく、そして線の細い女の子がそこにいる。
バリーは表情を変えぬよう必至になりつつ敬礼した。
新任とは言え相手は士官だ。その間には深く大きな川が流れているのだ。
「バリーボンズであります。新任の少尉殿は女性でしたか! いやいや!男臭い海兵隊の中に綺麗な花が咲いているようでありますな」
本音のような建前のような、そして、いざ危険な現場になった時、本当に役に立つのか?と言わんばかりの事を眼が語っている。
だが、実際にはバードがサイボーグである事などとっくに承知の上だ。生身じゃ到底出来ない事を軽々とこなす化け物であるとも知っている。本気で闘ったならボンズ兵曹長もなす術なく一方的に殺される事になる。
「バードです。今回初降下で初陣です。手間を掛けますが、どうかよろしく」
士官らしく美しいフォームで敬礼するバード。
慌ててバリーボンズ兵曹長が敬礼で応えた。
「はい! あの、ところで少尉殿。自分の不細工な顔に何か付いていますか?」
バードは柔らかい笑みでバリーを見つめていた。
懐かしさと嬉しさが入り混じった複雑な感情で……だ。
「どうしてですか?」
「先ほどからジッと見つめられていまして、その、照れるであります」
バリーボンズ兵曹長はやや大げさに笑った。
まるで新兵の耳に入れと言わんばかりに大声だ。
激しく緊張していても、笑い声で場は和む。
少しでも緊張を和らげようとするその努力をバードは気が付いた。
「実は以前、私は兵曹長に会っているのです」
気遣いをしていた兵曹長は一瞬にして最高レベルの緊張を強いられた。新任とはいえ、士官から会った事がある……など言われれば、必死で思い出すしかない。
「……申し訳ありません。小官は失念しております」
絞り出すようにそう応えたバリー。
バードは柔らかな声音で返答した。
「いえ、兵曹長は覚えて無くて当たり前です。私が会ったのは、シミュレーターの中でしたから」
花のように笑みを浮かべたバード。
その姿にボンズはドッと汗をかいたような気がした。
「……シミュレーターですか?」
窓から射し込む光に照らされて、バードの顔が輝いた。
その顔を見ていた艇内の者全てが、掛け値無しに美しいと思った。
「そうです。サイボーグになって目を覚ました日。シミュレーターの中の兵曹長にガッチリしごかれて身体を動かしました。あれはサイボーグのリハビリなんですがその中で教官殿と呼んでいたんですよ。今思い出しました」
「教官ですか。いやいや、実に名誉な事であります」
どう取り繕って良いか困惑したボンズは、通常の数倍で頭を回転させそんな言葉を吐いた。サイボーグ士官の無聊を囲えばどうなるか。それを知らないボンズでは無いのだ。
ただ、うんうんと笑って頷くバードの姿に、どこかホッとしているのもまた事実だった。そしてそれが、多くの新兵に対する気遣いでない事を祈った。
「ですから、今回の降下も私は知らない事だらけです。至らぬ所があったなら指摘し、遠慮無く指導してください。よろしくお願いします。バリー教官」
バードの言葉にバリーは雷に打たれたようだった。
一歩下がって天井を見上げるように胸を張り、敬礼で応えた。
「承りました! どうかお任せください! ただ、指導するからには生徒は教官を信頼し、その指示を素直に聞いていただく必要があります。よろしく有りますか少尉殿?」
バードの言葉にこの全てが海兵隊の新兵達を率いる兵曹長へのサービスでもあろうと気がついたのだ。新任とは言え士官からも頼りにされる下士官の存在を新兵に見せておく。その辺りの心配りは士官にとって重要な資質のひとつだ。
軍隊の兵卒を指揮するのは下士官の重要な仕事で、その為の配慮をバードは行なったに過ぎない。つまり、はっきりと見えないバードの内心がボンズ兵曹長に最大級のプレッシャーとなって圧しかかっていた。
「もちろんです。実際問題、私は一ヶ月前までは士官どころか兵士ですら有りませんでした。ですから、まず。ヴェテランの言葉は素直に聞こうと思います。遠慮無くやってください」
バードの言った素直な言葉にバリーはポカンとした表情になった。
そして天井を見上げるほど上を向いて精一杯に驚いた顔を隠した。
間違い無く本音だった……
そう気が付き、バリーはバードの内心を感じ入った。いくら訓練を積んだサイボーグ士官だって、処女戦は絶対的恐怖との戦い。バードだって怖いのだ。
だが、士官は無様な姿を見せてはいけない。怖くて逃げ出したくとも立派なフリをしなければいけない。まだ線の細い、幼い女の子がその葛藤と戦っている。そこを感じ取ったボンズは、バードの責任感の強さにも感心していた。
「バード生徒殿 バリーボンズ兵曹長確かに承りました!」
敬礼してバードを見た兵曹長。その背丈は二メートルに手が届くほど。
実質身長170センチ少々のバードは見上げるほどだ。
「お願いします。まだまだ勉強中なのでビシビシ指摘してください」
「はっ! 誠心誠意、指導させていただきます!」
「ところで少尉殿。その体験されたシミュレーターというのは?」
「あぁ、あれです、バリーボンズ兵曹長監修の」
「バリーズブートキャンプですか?」
「その通りです、あれは楽しかったですよ」
「そうですか。実は自分はアレを見た事が無いのであります」
「たぶん見られないと思いますよ。私達みたいな専用バスを持っているサイボーグ向けですから」
カラカラと鈴を転がすように笑うバードは、ガチガチに緊張している新任少尉の肩の荷を下ろそうとしているボンズ兵曹長の気遣いを感じた。ヴェテランらしく振舞い、初降下になる新人の緊張を少し緩めておきたい。
そんな意図が見え隠れする雑談に花を咲かせ、その配慮をありがたく受け取る事にした。
「……でも、あの時は本当に酷いトレーニングだと思いました」
「そうでしたか。それは大変失礼しました」
「でも、役に立ちましたよ。初めて月面基地へ配属された時の着任訓練はもっとヤバかったです。でも、一度はバリーズブートキャンプを耐え抜いたと言う自信で乗り切れましたから」
「そうですか。ならば小官も救われます」
バードはうんうんと頷く。
少し心が軽くなったと感じ、バードは信頼の溢れる眼差しでボンズを見た。
「じゃ、私は先に降下します。地上ではよろしく」
「イエスッマム! お気を付けて!」
「マスターチーフも」
手を振って歩き始めたバード。
艇内で空中へ飛び出す指令を待つ海兵隊の間をバードは歩いて行く。
「少尉! たのんまっせ! 気を付けて」
名も知らぬ軍曹が気遣って声を掛けてきた。その声にバードは手を上げ、笑顔で応えた。花の様に笑って、余裕風を吹かせて歩いた。今にも卒倒しそうなほどだというのに……だ。
『総員降下ヘルメット装着!』
艇内に響く号令。兵士達は一斉に気密ヘルメットを被った。
降下艇の後方にあるハッチが開かれ、艇内の気圧が一気に降下する。
まだ気圧の低い火星上空十五キロの辺り。ズッシリと重い筈の装備を背負ったまま、二つあるカタパルトの左手に向かってバードは平然と歩いた。
その最中、何かふと視線を感じてバードはふと振り返った。バイザー越しにジッと見守るマット大佐と一瞬目が合った。大佐は僅かにあごを振り、青い瞳を新兵達に向けてフィッシュになんか言ってやれと合図してきた。
バードの眼がバイザー越しに笑う。
「じゃぁ先に行ってるから。空中を楽しんでらっしゃい」
柔らかな言葉を残して、バードはカタパルトに足を乗せた。
ヒール部分をリフトさせ、強い前傾姿勢で打ち出しに備える。
このカタパルトは僅か10メートルの加圧距離で、一気に時速百キロ程度まで加速する。高速で飛ぶ降下艇の後方乱流を一気に抜け、水平方向への速度を安全に殺して降下出来る場所まで撃ち出されるのだ。
開け放たれた降下艇ハッチの向こうに、火星の青い空が見えた
「カタパルト・ワン! スタンバイ! レディ!」
「カタパルト・ツゥー! スタンバイ! レディ!」
右の手首を左右へ振りながら加速準備モードを指示していたシューターの指が、出口を指さし腰を屈めた。左の手がサムアップになり、射出を告げた。
艇内の視線が集まっているのを感じながら、バードは無意識にC-26ブラスターライフルのグリップを握り直した。恐ろしい程の激しい加速で問答無用に空中へたたき出される瞬間を静かに待つのみだ。
どこかリラックスし、流行りの歌を鼻歌に口ずさんでいた。
「GO!」
一瞬視界が黒く染まる。黒い世界の中にカラフルなノイズが浮かぶ。
脳殻中の脳液が加速によって後方へ集まり、視界がブラックアウトした。
ただ、実際それに対しどうこうと言う事は無い。カタパルトに加速されはじき飛ばされる十秒間はコンピューターの自動制御だ。どれ程訓練を重ねても、この瞬間ばかりは生体限界を超えてしまうから。
故に本人は鼻歌など歌いながら、コントロールが帰ってくるのを待つしか無い。実はこの時、サイボーグの体内にあるサブ電脳は通常の四倍ほど高速な駆動モードに入っている。
つまり、バードの時間感覚は四倍程度へ引き延ばされる事になる。カタパルトが加速し始めた瞬間からコントロールが返ってくるまでの約十秒間をサイボーグ達は四十秒ほどに感じるのだった。
長い長い『無』の時間。自分の意識だけがそこにある不思議な感覚を味わう。ややあって、その身体に込められていた力が、フッと抜けるのを感じた。それはサブ電脳から生体脳へ身体のコントロール権が帰ってきた証拠。だが同時に、自分自身の精神に起きている異変にふと気が付く。
――――恐怖も苦痛も不快感も全て失っている
サブ電脳が勝手に精神的インターフェイスを戦闘モードへ強制移行していると気が付く。
――――あぁ またこれか……
どこか諦観にも似た敗北感をバードは感じた。火星大気圏を急降下している最中なのにそれが不快だった。しかし、AIは常に脳波をモニターしている。そして、その精神が正常ではないと機械的に判断しているのだから仕方が無い。
そんな時、ふとバードの視界の隅に小さく別窓が開いた。
パッと映ったそこにはB中隊の隊長、テッド少佐が顔を見せる。
『バード 気分はどうだ?』
渋い声音で隊長が聞いて来た。隊長の声を聞いたバードは少しだけ冷静さを取り戻したような気になった。サイボーグになって最初の戦闘シミュレーターをやった時から、バードにとってテッド隊長は父親代わりと言える存在だった。
『鳥になった気分です』
全く抑揚の無い声にバード自身がおかしいと思った。でも、自分ではどうしようもない。自分では解除できない特殊モードに陥っている。
中隊を指すカンパニーと言う言葉は企業と言う意味もある。その隊長はつまり社長だ。そして、社長だけに絶対的な権限を持っている。社員と言うべき隊員の作動モードを変更する権限は隊長しか持っていない。
『上出来だ。でも、分かってるな』
念を押す様にテッド大佐は言った。
自分自身を自分の制御下に置く訓練だ。
『はい、ダミーモードに強制移行中ですね』
『そうだ』
ダミーシステム。
それはサイボーグの兵士が標準で装備している自立戦闘システムだ。
恐慌状態や、或いは、生体脳の機能不全。生体脳と機械体のブリッジ部分が故障した場合に作動を始めるセーフモードの総称だ。そして、恐慌状態でも強制的に精神を安定化させる機能を持っている仕組み。
『解除するか?』
少しだけ不安そうなテッド隊長の声がバードの耳に届いた。
疑っているのではない。心配しているのではない。ただ純粋に恐れている。
ダミーモードは別名バーサーカーモードとも呼ばれるから。
サイボーグが暴走を起こすと、普通の方法では止める事など出来やしない。ましてや、ODSTの高性能サイボーグともなると洒落にならない事になる。その戦闘能力は駆逐戦車級と言っても良いほどだから。
一瞬、バードは迷った。
戦闘モードに身を任せてしまうと自分に戻れなくなる気がした。訓練中にその経験もしていた。完全殺人鬼モードのまま地上に降りて、民間人まで皆殺しにしてしまうかもしれない。血も涙も無い殺人マシーンになって、一人残らず殺してしまうかもしれない。
それだけは絶対に避けたい。
『解除してください。お願いします。大丈夫です』
バードは力強く言い切った。
士官学校で叩き込まれた全てが彼女自身を支えていた。
『本当か?』
一瞬の間。
痛い程の沈黙。
バードは解っていた。隊長が迷っている事を。
ダミーモードに陥った時の戦闘力を思えば仕方の無い事だ。
彼女はただ黙って、審判を待つだけ。
ただそれでも、バードは自信をもって言い切った。
『私はODSTのブレードランナーです。迷いは降下艇の中に置いて来ました』
痛いほどの沈黙が続いていた。十秒ほどだろうか。実際それはクロックアップによる時間の引き延ばしを体感してるに過ぎない。実際は二秒か三秒ほどだ。
ただ、少なくともバードたちは時速三百キロ近くで地上に向けて落っこちているのだから、あまり悠長な事は言ってられないのが真実でもあった。
『OK わかった バード お前を信じる』
テッド隊長はバードの心に掛けられた魔法を解いた。ピッ!と電子音が聞こえた次の瞬間、背筋に電撃の様な衝撃が走る。堪えようの無い恐怖がバードの心奥深くからわき上がってきた。
―――――ッッッッッ!!!!!!
一瞬、バードはパニックを起こしかけ、寸前の所で自分の精神を押しとどめた。
――――気を失ったら負け!
――――それはダメ!
隊長や仲間達の信頼に応えたい。一人前だと認められたい。そんな事を考えていたのだが、恐怖は全てを塗りつぶす。どうしていいのか解らずパニックを起こしかけたその時、何処かから声が聞こえた。
『バァ――――ドォォォォ――――!』
耳を劈く声がいきなりバードの元に届いた。これ幸いと恐怖を誤魔化すように首を振って音の元を探したバード。気が付けば、はるか上空からスナイパーのジャクソンが落っこちてきた。
――――あれ?
――――私とドリーが殿だと思ったけど?
恐怖を振り払うように降下手順を思い出しているバード。
そんな彼女の脳内に再びジャクソンの声が響いた。
チーム内無線を使い、彼等はテレパシーの様に会話していた。
『俺の一発芸見とけよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!』
『……え?』
――――HA/LOで落っこちていく途中だって言うのに……?
理解の範疇を越えた声が聞こえ、バードの脳内には?マークが浮かぶ。
突然、チーム無線に映画スーパーマンのテーマソングが鳴り響いた。
『え? なに?』
チーム無線にメンバーの笑い声が混じり、すぐに大爆笑になった。そして、事態を飲み込めないバードの視界遠くに小さな点がみえた。あまりに不思議なその姿を見て、バードやっと意味を理解した。
『ッシャァァァァァ!!!!!』
妙な叫び声をあげてジャクソンが落っこちていった。スーパーマンことクラークケントが空を飛ぶポーズで。真っ赤なマントを両肩に縛り付けて、バタバタとさせながら。
『……バカ』
バードの一言で、再びB中隊のメンバーが大笑いを始める。
ドリーが空中でひっくり返って、そのまま腹を抱えて大笑いしている。
恐怖を忘れ一瞬楽しく感じたバード。だが、気が付けばあっと言う間に対地距離三千メートルを切っていた。垂直に落っこちていったジャクソンは、一番最初にパラシュートを開いた。それを合図に次々に真っ黒なパラシュートが開く。
火星の地上まであと七百メートル。気圧変動からパラシュートの減速率を逆算しギリギリの所で急減速を掛ける。この間合いは恐怖との戦いだ。
何度もシミュレーターで訓練したが、実際の降下は初めてだった。早ければ地上からの対空砲火の良い的で、当れば即死だ。携帯レベルの地対空兵器で攻撃されるリスクが高まる。
遅ければ減速しきらず、地上へ叩きつけられてしまう。そして、サイボーグといえど避けようの無い激突死が待っている。
ギリギリの高度で開傘し、ネコ科の生物のようにフワリと着地するのを目指す。落下中は空気抵抗を使って多少左右に動けるくらいの機動が出来るだろう。だが、開傘したら思うようには動けない。下手したら下から十字砲火で撃たれて蜂の巣だ。
『バード! ビビんなよ! ビビったら負けだぜ! ロックンロール!』
あれこれ考えていたバードの耳にイカレた声が再び届いた。意地とプライドの塊な通信担当のブリテン人、ジョンソンが叫んでいた。イカレた声で叫びつつ、対地距離488メートルで開傘した。
そして、建屋周辺の戦闘車両へ向け、空中からパンツァーファウストを打ち込んでいた。クルップ式無反動砲そのものであるパンツァーファウストのバックブラストをパラシュートに受けて、更に急減速させる裏技をバードは初めて見た。
スーパーマンになりきっていたスナイパーのジャクソンは地上まであと五十メートルを切っていた。減速しつつもすでにL-47精密狙撃ライフルで地上へ向けて射撃を始めている。
スーパーイカレ状態だった筈だが射撃は恐ろしく冷静で正確らしく、ドアの辺りに立っている見張りが次々と斃れていた。
ややあってMG-5を抱えたまま落ちて来たへヴィガンナーのスミスが空中からバリバリと制圧射撃を始めた。パラの制御など放棄し、既にアモケース一個分の9ヤードを撃ちつくしている。
その弾丸は遠慮無く地上へ降り注ぎ、地上軍を待ち構えていたり、或いは、爆発に驚いて外へ飛び出してきたテロリストの戦闘員を次々と挽肉に変えていた。
『チャキオン! 地上にレプリ反応多数!』
既に開傘した面々を追い越し、バードは高度194メートルで開傘した。女性型で細身軽量なバードの場合、開傘高度がかなり低い。10メートルの余裕をみたがあとコンマ数秒遅くても良かったと気が付く。
ただ、そんな反省をする前に彼女は乱戦の一部になっていた。バードの左右を仲間の撃つ銃弾やレーザーブラスターの光線が通過していった。左右の引き紐をグッと引いて速度を殺し、対地速度を百キロ程度まで減速。さすがにこの瞬間は脳殻内の脳自体が急減速による影響を受ける。
尚も速度を殺し、一旦空中に静止しかけたバード。地上十メートルを若干切った地点でパラシュートの接続フックを爆砕破断っし、あとは自由落下して着地した。
太陽系の最高峰。オリンポス山の南東35キロメートル付近。アマゾニス海を見下ろすタルシス台地に広がる大草原の一角が、バードの初降下で着上陸の地となった。




