後半戦へ向けて
――――月面 アームストロング宇宙港 イートゾーン カフェ『静かの海』
地球標準時間 5月15日 1500
前日とその前日の二日間、Bチームは実にどうでも良い内容で月面基地を出撃していた。カワセミ作戦の締めくくりは内太陽系通信網の再構築で、各通信拠点へ出向いた宇宙軍通信連隊の作業チームを護衛するのが任務だった。
『コレ俺たちの仕事か?』
『仕事の内容に文句言うな』
ガッツリと文句を言ったライアン。だが、それをジョンソンが宥める
『だけどよぉ……』
『地上へ行って仕事を寄こせってデモに参加する身分になりてぇか?』
二の句をつけなくなったライアン。ジョンソンを含め、Bチームの誰もが文句をグッと飲み込んで任務に当った。幸いにしてシリウス側の妨害が入るでもなく、また、宇宙軍内部に工作員が紛れ込んでいて、バックドアを仕掛ける事も無く、無事つつがなく任務を終えたのだった。みなの心理的ストレスを無視すれば……だが。
「しかし、どうでも良い仕事だったな」
かったるそうに呟くロック。Bチームこの日、朝から臨時休暇となっていた。
どうでも良い任務に駆り出したアリョーシャの手配で休日となったのだが、そもそもこの日は日曜日だ。したがって他のチームや一般海兵隊員も休日だ。つまり、なんとなく一日損したような気にもなるのだが、それに付いて文句を言うのは憚られる。
どういう訳か、他のセクションよりも優遇されているBチームだ。あてがわれた仕事だけはきっちりやるべきだし、逃げるわけには行かない。
「ところでバーディーはどうしたんだ?」
「そういやそうだな。いつもロックとバーディーはセットなのに」
ちょっと下世話な笑みを浮かべたスミスとジャクソン。
ニマニマと笑う表情は『喧嘩でもしたか?』と、言わんばかりだ。
「いや? たぶん部屋じゃないか」
「部屋に押しかけろよ」
「スミスの言うとおりだぜ」
元妻帯者のコメントは冷やかしでも嫉妬でも無く、自らが体験した幸せな日々の生活の、その欠片を拾い集める様な行為だった。本気で惚れた女の為に。相手が喜ぶように。人を喜ばそうとして、そして喜んでくれる時にこそ、幸せは実感出来る。そんな人類普遍の定理を日々の生活で実感した男達だ。
「……押しかけようとしたんだが部屋には入らないでくれって言われてさ」
そんな言葉にスミスとジャクソンは矢鱈と怪訝な表情を浮かべた。
「そりゃ穏やかじゃネーな」
「間男が居るって事はネーだろうが」
スミスやジャクソンの怪訝な顔を見て笑うロック。
このふたりは自分とバーディーの仲を後押ししてくれていると実感した。
「あぁ、違う違う。そう言うのじゃなくて」
飲みかけていたコーヒーを飲み干し、ロックはウェイターを呼んだ。
「あいつの仕事上の機密書類が山のように来たんで、ゴチャゴチャだから入るなってことだ。まぁ話の中身までは教えちゃくれねぇが」
当たり前だろという表情のジャクソン。スミスも苦笑いだ。
「なんかちょっと面倒な事になってるんで、その対処について相談してるらしい」
「相談?」「誰とだ?」
「NSAの方のスタッフとだってよ。チーノ絡みで色々あるらしい」
一瞬顔を見合わせたスミスとジャクソンは『あぁそうか』という顔になった。バーディーはODSTで海兵隊の隊員だが、ブレードランナーでもあるのだから、背負っている責任は組織二つ分といっていい。
「口に出来ない情報もあるからな」
「これ以上言えないって部分だな」
バードの背負ってる責任を理解出来ない士官など居ない。
押し寄せてくる情報の洪水を泳ぎなから、その中で必要な情報を取捨選択し、記憶し、期待される結果を出し続けなければいけない立場だ。
やっと二十歳になったバードだが、周囲はそうは見ていない。そんな外見と中身のギャップを埋めつつ、バードは余裕風を吹かせて歩かなければいけないのだった。
「ところで……」
スミスは店の片隅にあるそれほど大きくないモニターを指さした。画面には国連事務総長が映っていて、国連総会の結果を受けた記者会見の最中だった。
――では、内太陽系に安全宣言ですか?
記者達は事務総長の口から『ある特定のフレーズ』を引き出そうと躍起になっている。手を変え品を変え言質を取って外堀を埋めていくのだ。それに対し事務総長も慎重な言い回しを続けていた。
――いえ、まだそこまでには至ってないでしょう
それほど大きな音では無いのだが、ノイズキャンセリングで雑踏の音を消してしまえばモニターから漏れる声はよく聞こえる。記者会見の席で繰り広げられているのは、文字通りな『狸と狢の化かし合い』だった。
――ですが、火星からも金星からもシリウス派を取り除いたのですよね?
国連軍の尽力により戦況は大きく改善した。一時は地球の地上ですら連邦軍とシリウス軍が砲火を交えたというのに……だ。夥しい犠牲を払い、莫大な予算をつぎ込み、そして、自由への祭壇へ尊い命を捧げた多くの若者達が居た筈だ。
それらの家族友人や親類縁者が聞きたい言葉はただ一つ。太陽系におけるベルトの内側は安全圏になりましたと言う報告でしかない。だが……
――遠くシリウス太陽系まで100日を切って到達出来る時代です
一度言葉を切って記者会見の会場を見回した事務総長は、僅かな溜息を零しながらも言葉を続けていた。
――未だ外太陽系にシリウス派の衛星拠点が残って居る以上、早計でしょう
そうだ。戦いはまだまだだ。宇宙を舞台にしたこのビッグゲームも、現状では第2クォーターを終えたところでしかなく、冷静に言うなら、第2クォーターもまだ終わっていないと言う報方が正しいのかも知れない。
だが、新聞記者という生き物は記事にする為の『センセーショナルな見出し』を求めてしまう。例えそれがどのような悲劇や誤解を生み出そうともだ。結果として捏造する事態になったとしても、当人達は誤報と言い切って逃げ切る事が出来る。酔っ払い運転の犯人に対し『酔ってますか』と聞くようなものだ。
――では、内太陽系もまだまだ危険と言う事ですね?
食い下がる記者を生暖かな笑顔で見返した事務総長は、言葉尻を取られて揚げ足を取られないよう、慎重に慎重を重ねて言う。
――危険では有りますが、以前に比べその危険は格段に下がったと言う事です
そんな不毛なやりとりが15分以上続き、ロックはチラリとスミスを見た。チームで一番短気な男故に、今にもモニターに向かってコーヒーカップを投げつけるかも知れないと思ったからだ。だが、当のスミスは白けきった表情で退屈そうにモニターを眺めているのだった。
「新聞記者はペン一本で戦争を起す事も出来るし人を殺す事も出来る」
不機嫌そうに言葉を漏らしたスミスは、どこか遠い目をしてモニターの中の世界を呪った。その悄々と重苦しげな表情を見たロックは、なんとなくスミスが思っている事を理解した。
「あの記者たちは何を思ってあんな事をするんだろうな」
ロックの覚えた不定形の疑問はジャクソンの言葉が解消させた。
「明日の一面記事に出るのさ。国連事務総長、内太陽系に安全宣言!って。で、何か起きたら『嘘だったんですね』と追及できるし、彼らには損が何も無い」
口をへの字にして不機嫌さを滲ませるジャクソン。様々な現場を経験してきた元警察官は、責任を取らずに数字だけを追い求める汚いやり方に辟易としていた。
「でも、そんな事で安全宣言欲しがるもんかな」
僅かに首をかしげたロック。その頭を後方からポンと叩いた男が居た。
「イテッ!」
「油断してるからだ」
思わず振り返ったロック。その目の前にブルが立っていた。
「……オフな時くらいは気を抜いても良いじゃ無いですか」
「気を抜いて良いのは死んだ時だけだ。覚えておいたほうが良いぞ?」
なんとなく下世話な表情を浮かべたブル。
ロックは嫌な予感しかしない。
「特に妻帯者はな」
ブルのジョークにスミスとジャクソンが手を叩いてゲラゲラと笑った。
「妻とふたりで過ごすのに緊張の連続を強いられるっておかしくないですか?」
「まぁいずれ解るさ。女を泣かせたり怒らせたりすると高いものに付くからな」
ブルの言葉に苦笑いしつつも頷くスミスとジャクソンは、ニヤつく眼差しでロックを見ていた。これから長い人生をバードと歩く事になりそうなロックだ。経験者として『先人の苦労』を伝授しておくのは大切な事だ。
「ダイエットしてる女房が『痩せたかな?』と聞いてきても、スッと『痩せた』と答えるとアウトだ。彼女は数字を追いかけてるから答えを知っている。だけど、変わらないと答えるのもアウトだ。彼女の努力を否定する事になる。正直に『太ったんじゃないか?』と言ったら、その時点で世界が終わりかねない」
困ったように笑うジャクソン。それを見ているスミスが笑う。
「誰が一番好き?と聞かれて『お前に決まってるさ』と答えれば嘘つきと言われるし『みんな平等に好きさ』と答えても嘘つきと言われる。もちろん、正直に一番良い女を答えると、その5分後にキッチンから特大ナイフを持ってきてブスリとやられかねない」
一夫多妻なイスラームの社会で3人の妻を娶ったスミスなのだから、苦労の中身は微妙に違う。だが、共通する事は明確に存在している。女は男とは違う種類の生き物と言う事だ。
「まぁ、なんだ。バードがダイエットする事は無いし、答え難い質問で困らせる事もまだまだ少ないだろうけど……」
ロックの頭をグリグリと押さえるブルは楽しそうに笑っている。
「例えばバードが新しい服を着てきたり、メイクを変えたり髪形を変えたら、率直にコメントしてやるんだ」
ブルの言葉にジャクソンが口を挟んだ。
「ただし、大事な事は絶対に否定するな。似合わないと思ったときはこう言う。『それは最近の流行りかい? 悪くないけど俺の好みとは違うなぁ 似合ってるから余計悔しい』ってな」
そんなジャクソンの脇をスミスがつつく。
「そうか。そう言えば良かったのか」
「なんかあったのか?」
「あぁ。イスラムの女は外出時にブルカで身を覆うが」
「ブルカってあれだろ? あの黒い全身マント」
「そうだ。アレが無いと地中海の乾いた風と強い日差しで、女たちの肌がボロボロになるからな」
「……生活の知恵だったんだな」
「まぁ、色々と誤解も多いが」
痺れを切らしたロックが口を挟む。
「で、スミスはなにやらかしたんだ?」
「あぁ。ある日、仕事から帰って見たら女房の一人がブルカを被って家の外で待っていてな。家に入ってそれを取ったら新しい服を着ていたのさ。で、いきなり『似合う?』って聞かれてなんて答えて良いか分からなくて……」
アチャーのポーズで額に手を乗せ天井を見上げたジャクソン。ブルも笑いながら手を左右に振って『ナイナイ』の仕草だ。
「女房が本気でぶち切れて大騒ぎだった。一夫多妻の社会で女房同士の仲が良いと、一人怒らせたならみんな同時に怒り出すからな。必死に宥めるにしたって、人数分だけ手間が掛かるのさ」
下世話に笑うスミスだが、ジャクソンもブルもウンウンと頷くだけだ。
「いずれにせよだ」
話をまとめに入ったジャクソン。スミスもブルも腕を組んでロックを見ている。
「俺たちにとってバーディーは大切な仲間だ。だが、多分お前には違う存在になるだろうさ。だからきっと、これから色々有るだろうけど、距離感を失わないように気をつけろよ。近すぎると互いに重荷になる。他人よりはうんと近くに。仲間達よりちょっと近くに。だけど近過ぎちゃいけないのさ。ここの部分が判れば大人さ」
何かに悩む者に対し、明確に解答を示さないのも大人のルール。かつてテッド隊長はロックにそう言ったことがある。何事も自分で責任を負い、自分なりの回答を得るのが大人のルールなのだ。
夫婦と言う特別な関係の中で戦場とは違う修羅場を幾つも潜り、その果てにある言葉では説明出来ない所にたどり着いた時、きっとロックにもことの本質を理解するだろう。ジャクソンやスミスはそう思っていた。
人生のヴェテランに近づきつつある者と比べれば、20代前半のロックはまだまだ若く幼い。理解しきれぬ難問に頭を抱えつつ不意に目を向けたモニターの向こうでは、相変わらず化かし合いの記者会見が行われていた。
――では安全宣言はまだと言う事ですね?
――そうですね。安全宣言に限りなく近い状況ですが
――それならもう安全宣言で良いじゃ無いですか
――いえいえ、そうは行きませんなぜなら……
記者会見の会場が静まり返って次の言葉をじっと待っている。そんな中、事務総長は封筒の中から別の資料の束を取り出し説明を開始した。
――現状ですと国連軍の内太陽系軍団に大規模な軍事行動を行う余力がありません。万が一にもシリウス側が大規模な軍事行動を引き起こした場合、我々にはそれに対処するだけの余力が無いのです。ですから、今現在は国連軍の装備と規模を強力に回復させる途上であります。コレが完成し、何があっても返り討ちに出来る状態になって、初めて『安全です』と宣言できると言う事ですな。
資料のページをめくった事務総長は一つ咳払いをしてから、その中身を読みあげ始めた。その言葉を聞いている者たちの表情が翳っていくのを見ながら。
――現状では金星上に人を置く理由はありません。したがって金星からは一旦撤退する事を国連事務政府として発表する事になるでしょう。数日後に公式文書を出しますが、金星のテラフォーミング計画は一旦停止となります。減耗した戦力を効率的に配備する為、国連宇宙軍の駐屯は火星と月だけとなります。まぁこれも半年程度の時限措置となりますがね
驚きの表情を浮かべてブルを見たロック。スミスもジャクソンも驚いている。そんな中、ブルは顎を引き三白眼でモニターを睨みつけ笑っていた。
「さて。狙った魚が釣れるかどうか。その瀬戸際だな」
ブルは舞台裏をこっそり白状した。金星から一旦撤退と言う言葉の意味を考えれば、シリウス側に取り戻しに来いと誘っているようなものだ。ボクサーがリングの上でガードを下げ『打って来い!』と煽る仕草ともいえる。
その誘いに乗ってシリウスがちょっかいを出してきたなら、それに対処するのは海兵隊の仕事になるのは間違いない。つまり、ここから第3クォーターが始まり、後半戦は今より酷い事になるのだと皆が理解する。
Bチーム以外が大幅に戦力を減耗している以上、Bチームの負担は以前にも増して重くなるのが目に見えているのだ。
「それにしたってよぉ……」
やり過ぎだと言わんばかりの目でブルを見上げたロック。そんな場にひょっこりとバードが姿を現した。
「何の話?」
「おぅバードか」
ブルが場所を譲ってバードがロックの隣へ座った。
「今さ、国連総会の記者会見で『金星の話でしょ?』そうだ」
知ってたと言わんばかりに笑ったバード。その自信溢れる笑みにロックも吊られて笑った。バードが眉間とトントンと指で叩く。チーム無線のサインだ。
『NSAと宇宙軍技術部の連名で来たシリウス製レプリの識別アプリが色々面倒で設定を弄っていたんだけど、アプリが配布されたその理由は金星にやってくるシリウス軍のレプリ対策だったの。つまり、もう一回金星に行くようだね』
にこっと笑ったバードはロックをジッと見た。
「今度は負けないでね」
「……あぁ、エディに鍛えられたし、失敗しないよ」
「上手くやるんじゃないの?」
飾らない言葉でロックを煽るバード。
そんな会話に周囲も自然とニヤニヤしてしまう。
「上手くやるんじゃなくて失敗しないようにやるのさ」
「失敗しない?」
「そうさ。またバーディの隣へ帰って来なけりゃならねぇからさ」
直球ストレートをバードの心に投げ込んだロック。男らしく笑うその姿に、バードはムフフと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ね? 言ったとおりでしょ」
「ほんとだ」
ロックとバードのバカップルトークを聞きながらニヤニヤしていた男たちは、唐突に降って沸いた言葉に驚きの表情を浮かべていた。ポカンと口を開けて指を差したジャクソンは『あー』と間抜けな声を出している。
「え? どうしたの?」
椅子から腰を浮かせて後ろを振り返ったバードは『うそ……』と短く漏らして言葉を失った。同じように振り返ったロックも言葉を失っていた。そこにはAチームのホーリーと一緒に並び、海兵隊ODSTの女性士官が立っていた。
ただ、その左腕の上腕部には501大隊の所属を示すパッチを付けていて、その新人の女性士官がサイボーグであること示しているのだった。
「紹介しようか。色々あって配属が遅れたが、今日付けでアームストロング基地へ着任しAチームに配属になった新人だ。と言っても、軍歴はバードより微妙に長いがな」
全てを知っていたらしいブルが短く紹介した。
「今日付けてAチームへ配属になったアシェです。アシェリーと呼んでね」
目をまん丸にして驚いていたバード。彼女の前に立っていたのは最初に降下した中国での戦闘時に緊急処置を施したウメハラ少尉だった。
「バーディーがロックとすっかりデキてるって言ったら信用しなくてさぁ」
あっけらかんと笑ったホーリー。だけど立ち上がったバードはアシェリーの手を取った。思いつめたような表情で。
「バードのおかげで帰ってきたよ。今度は仲間入りしたから、またよろしくね」
「ア…… アシェリー…… なんだ」
「そう」
とても悲しそうな表情を浮かべたバードを抱き締めたアシェリー。
その背中へバードも手を回した。
「ゴメンね。ゴメン。ほんとゴメン。こんな事に」
「え? なんで?」
「再製処理を受けると思ってたから…… まさか、サイボーグなんて」
「違うの。違うのよ。コレは私が望んだの」
「え?」
驚いてもう一度アシェリーことウメハラの顔を見たバード。同じようにBチームの面々もまたアシェリーを見た。
「彼女は一度は再製処理を受けたんだがな、その後に進行性のガス壊疽を発症してもう一度生死の境をさまよって、その時点でサイボーグ化を志願したんだ」
何でそんな事を!と抗議がましい目で見たバード。だけどアシェリーは自信溢れる笑みだった。
「バーディーの活躍する姿に憧れたの。ただ、私だとちょっと適応率が足りなかったってわけよ。色々あって人間やめるのに抵抗無かったしね」
アハハと軽快に笑ったアシェリー。
その姿を横目にブルは皆へ言った。
「金星は大きなエサだ。シリウスが喰いつくだろうからそこを叩く。カワセミ作戦は終了したがピンボール計画はアクティブだ。ここから後半戦になる。みなの負担は一気に増えるしBチームは一番やばい所へ行く事になる。しっかり頼むぞ」
全員がゆっくりと頷いたあと、ホーリーはアシェリーの背中をポンと叩いた。
「なにやってんのよ! 白馬の王子様がお姫様返せって顔で見てるよ!」
「あ! ごめん!」
全く暗い表情の無いアシェリーの姿を、皆が複雑な表情で見ていた。
ピンボール計画の後半戦は、静かのその幕を開けようとしていた。
第9話 オペレーション:キングフィッシャーⅡ ―了―
第10話 オペレーション:クトゥーゾフ へ続く
第10話 は12月月7日から公開します




