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DIVE  作者:
6/12

#5 遅刻 side nozomi

私の朝は一言で言って恥。

寝癖だって、パジャマだってグシャグシャで。

そのくせ寝坊癖。

こんな女誰だって引くかな。









「明日から、よろしく」


そう言ってずっと笑ったまま去っていった男。

今日では夢の出来事にしか思えない


だって今、鏡の前に写る私は・・・・酷すぎる。

髪の毛なんてごわごわで、寝癖がアリエナイ

いや、いつもはこんなに酷くはないんだよ


昨日は、そう、その夢みたいな出来事で

あ、こういうと素敵な出来事に聞こえるけど全く素敵なことじゃなかった。

まあとにかくすっごい疲れてて髪の毛なんて乾かさないでベッドにダイブ


昨日5分乾かせば今朝30分もかからなかったのに。

結局なかなか決まらなくて朝シャンしようかな、なんて思ったとき

ふと見た時計はもう登校時間10分前。

これはヤバイ。


ご飯も食べてない

トイレだって、授業の用意もしてない。


慌ててまず授業の教科書をそろえるために自分の部屋に行こうとしたとき

朝聞くとものすごいうるさく感じるインターホンが鳴り響いた


お母さんが不思議そうに玄関に向かうのを横目に私は階段を駆け上がる

あと、3段。


階段を上りきるところでお母さんの普段聞いたことがない

マダムっていうのかな、おしとやかに決めた声が私の名前を呼んだ


「希未、お迎えが来てくださってるわよ」


お迎え?!お母さんの気取った口調も問題あるけれど

その内容がもっと問題だ。


私、誰とも朝約束してないよ


とりあえず階段を下りて玄関に向かうと


「わっ!!!!!」


ニコニコ顔のお母さんと浅野洋平がいた

浅野?!!!

なんでーー!


「あ、おはよう本城」


「・・・お、おはよ」


朝から爽やかな笑顔を貼り付けて私の玄関にたつ彼はなんだか似合わなかった

お母さんは一人でやけに嬉しそうに私を見ていた

ああ、勘違いしてるよ


「希未、こんな素敵なボーイフレンドいたなら紹介してよね」


「あはは、別に・・・」


「ほら、早く準備しなさい!!」


「はあ・・・・」


また階段を上っていく私を浅野は笑ってみてるようだった

むかつく。


てか私かっこ悪いじゃない


下からは相変わらずのお母さんの嬉しそうな声と

それに対応している浅野の声


とりあえず制服に着替えて準備して

時計を見たらもう

あと2分ほどしか残ってない


やばい、やばい

わたし一人だったらいいんだけど迂闊にも今日はなんだか

変な男もいる


遅刻したら私の責任なわけだ

階段を駆け下りていくと

お母さんが浅野と紅茶を飲んでいた


って、何紅茶飲ませてんの

先に行かせておいてよ!なんて思いながら咳払いをひとつ


やっと私に気づいたのかお母さんと浅野がこっちを見る


「希未遅いわよ、浅野君ですって?彼、ずっと待っていてくれたんだから!」


「いえいえ、気にしてませんよ」


「まあ、ほんと素敵な子ね、さあさ、行ってらっしゃい」


・・・・・?


今の誰の声ですよ

私はお母さんのこんなおしとやかな声も聞いたことないし

浅野の敬語も聞いたこと無い


中学3年、人間の怖さと変わりぶりに改めて驚いた



不機嫌なまま浅野と一緒に玄関を出る

なんだか昨日は気が付かなかったけどこいつ

香水つけてる?


風が吹いた時、微かに良い香りが鼻をくすぐった


全く、高校生で香水って変じゃないけど

なんだか大人びてみえて少し悔しかった


無言のまま光がまぶしい道を歩く

すれ違うおばちゃんやら小学生がこっちを見てる


・・・・本当の恋人みたいに見えてるのかな。

いや、ないか

だって浅野は私の1メートル先を歩いている

こいつ何気に早足だよ

無言で責められてるみたい。


なんだよ、だったら待ってないで先に行けば良かったじゃない

約束だってしてないし、たかがゲームにこんなおまけがついてるなんて

思わなかった。グリコのおまけよりいらないわよ。


口をへの字に曲げて背中を睨みつける

たぶんもう完全に遅刻だ


だってさっき通ったコンビニの中の時計がそう示していた


・・・・睨んで、睨んで、すこし眉を下げる


ごめん。


素直には言いたくないけど遅刻させたのは私の所為だ


背中にそっとつぶやく

その瞬間彼が振り向いた


「・・・・遅いんだよ」


何、君。エスパーかと思った


「ごめん、」


「じゃあとっとと歩けカス」


・・・・・・ん?

カス・・・?


言い返そうとしたとき彼がまた振り返る


「ゲームはもう始まってんだぞ。とっとと俺を堕としに来いよ。

 あんな朝忙しい女見せなくていいぜ。まあ、俺の負けはなさそうだな。マジで」


「はあ」


「なんだ、まだ寝ぼけてんのか。もうお前本当難しいやつだわ。

 ま、やりがいあるけどね」


ため息をついてまた歩き出す彼


ため息尽きたいのはこっちだよ






朝がこれほど嫌だった覚えはない

嫌いな男と一緒に歩いて話して


恋人にみせかけたただのゲーム

1日目にしてこんなに疲れるなんて思いもしなかった




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