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DIVE  作者:
11/12

#10 凶器 side nozomi

なんで? どうして?

彼の表情は笑っているのに。

私の頭に届くのはそのフレーズだけ。










「ねえ、浅野洋平」


「あ?なんだよ」


少し前を歩く彼を呼ぶと不機嫌な声が

彼の後姿から聞こえた。


「ねえ、こっち向いて」


「・・・・」


無視して歩き出す彼。


「ねえ、浅野洋平」


私が再びそう呼ぶと彼は今度は足を止めてまた不機嫌な声を出した。


「そんなに恋人がいるって思われたいの?」


「ああ?」


「私、やっぱりわかんないよ」


私の言葉に初めて彼がこっちを見る。

その目にはどこか鋭い光がある。


「だから……なんでちやほやされて嫌なのかなって、うざいかも知れないけど

 少しは嬉しいとか……」


「思わねえよ」


「何で?」


「しつけえんだよ、もてたことのない女のクセに」


少しからかう笑って言った彼。

でもその目は怒りに溢れていて、思わず足がすくんだ。


「女なんて、俺の何もしらねえじゃん」


………。


じゃあ、じゃあ教えればいいじゃん。

そう言おうとしていえなかったのはまた彼が歩き出したから。


「あんたはゲームしてんだから細かいところ気にすんなよ」


「……」


「あんたは俺のことなんて何も思ってないんだろ、だからあんたを選んだんだから」


「……嫌いだよ」


「は?」


「嫌いだよ、何も思ってないわけじゃない。あんたが嫌い、そう思ってる」



少しの間の後、彼の瞳が急に柔らかくなった。


「ぷっ……本城サン、あんた最高だね」


そういっていきなり私に手を差し出す彼。


「なんのつもり?」


「あ?手だよ、手。よこせ」


そう言って嬉しそうに私の手を無理やり握る彼。


歩幅の広い彼に引っ張られるように歩き出す。

頭は混乱だ。


嫌いといった女に嬉しそうに手を握る男がどこにいる。

目の前にいるのは何?


なんで、こんなに歪んでるんだろう。

なんで人を傷つけて楽しいんだろう。

なんで? どうして?



彼の手は普通に温かいのに、

なんでどこからそんなに冷たいの。



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