#9 苛立 side nozomi
一人で座っているとどうしても自己嫌悪。
憂鬱さに勝つ術は今はまだわからない。
ねえ、早く来てよ。
浅野洋平。
「わりぃ、少し遅れた」
そういっていきなり私の鞄を持ち上げる彼。
え、ちょっと待って。
意図がわからない。
「ねえ、何してんの?!」
「いいから」
「はっ?!」
手を引っ張られている。
この手を咄嗟にはたきそうになった。
一緒に帰るの?!
他の女子に見られたら!!
もしさっきの女の子みたいなのがまた来たら私困る。
「浅野っ!待って」
「ああ?なんで?約束って言っただろーが!」
「へ?」
その時何人かの生徒の声が階段から聞こえ始めた。
やばい、見られる!
早く帰らないと。
とりあえず今度は私が浅野の腕を引っ張って歩き出す。
今は少しでも早く、少しでも見られないようにここを出ないと。
・・・・そう思ったのに。
浅野が動かない。
「ねえ!早く、馬鹿」
「なあ、俺たちゲームしてるんだよな」
「・・・それが何?」
「契約した時言ったよな、登下校は一緒。回りには付き合ってるって思わせるって」
「え?」
あ、そういえば言ってたような気がする。
でも別に今日じゃなくても。
今日から回りにそう思われなくってもいいじゃない。
だって、今は私、はっきりいってあんたのことむかついている。
「約束放棄する気?本城サン」
「・・・・・別に今日からそこまでしなくても」
「は?じゃあお前と契約した意味ねえだろ!!」
「・・・・・」
急に声を荒げるこの男。
何?
「俺は周りの女がうざいから、だからあんただって同意しただろ!!」
何、この男。
こんな性格だったっけ。
こんな怒る男だったっけ。
そりゃ私があんたの約束破ってるのはわかってる。
それでも、附におちない。
ゲームってこんなに厳しいものなの?
「っもういい、今日は許してやる。とりあえず帰ろうぜ」
今度は自分から颯爽と歩きだす彼。
前からだけどやっぱり彼の頭の中が読めない。
浅野の跡をゆっくり歩く。
ねえ、浅野。あんたむかつくよ。
あんな必死な女の子いるんだよ。
私だって先輩を想ってた時、あんな可愛くはなかったけど必死だった。
あんなに想われてるくせに、何が気に食わないの?
私にはやっぱり理解できないみたい。
ねえ、浅野。女の子の気持ちが重いなんてそんなこと言っちゃ駄目だよ。
「・・・・さっきは悪かった」
「私も、ごめん。約束のこと忘れてた」
「わかればいいんだよ」
あんたの優しさは嘘なの?
あんたのごめんは嘘なの?
ねえ浅野。
私だってゲーム楽しみたいよ。
だって恋愛をかけたゲームなんて他じゃできない。
でもあんたがそんなんじゃ、私このゲームつまんないよ。
少しは私に恋愛をみつけさせて。
今のあんたじゃ私を惚れさせるなんてできない、つまらないゲームだよ。