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G線上のアリア  作者: 月島秋
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第一楽章④ ガール・ミーツ・ボーイ

 そう、姉の学校が『New Music Age』で優勝して以来、私の人生は狂った。

 姉と同じ高校に入った私は軽音を止め、ただ平凡で普通の日常を送ろうと思っていた。

 ……それなのに。

『アリアさんの、お姉さんって凄く賢いよね。勉強のコツ聞いてくれないかな』

『奏さんってスタイルいいよね。普段どんな物食べてるの?』

『ねえ、奏さんって…………』

 姉と友達になろうと皆、私によってくる。

 それはいつものこと。我慢できないことじゃなかった。

 ……だけど。

『お願いアリアさん。奏さんを軽音部に入ってくれる様に頼んでくれないかな』

 その言葉は私の胸に深く突き刺さった。

 これまで、どんなに姉と比較されようが平気だった。私には軽音があったから。

 それなのに。

 私は失ってしまった。

 軽音という、唯一の支えさえ。

 私にはもう何も残っていない。

 誰にも必要とされない。

 そう考えると生きてる理由が、実感が分からなくなった。

(私――私は――どうして――何のために)

 すると無意識に私は部屋のカッターナイフに手を伸ばす。

 カッターの刃を出した。

 そして……

 ――ザクッ! 右手に突き刺した。

 …………

 この日、私の人生は終わった……はずだった。

 目が覚めると病院にいた。

 そして、誰かに強く抱きしめられた。

 姉さん、お父さん、お母さんだった。

『気づいてあげられなくて、ごめん』

 ごめんなさい、ごめんなさい。三人は嗚咽混じりの声で謝り続けた。


 その事件後。

 母は私に一つの提案をしてくれた。

 それが一人暮らしだった。

 どうやら、私が小一の時まで暮らしていた桜宮市。そこの胡弓高校の学園長が母親と旧知の仲らしく、編入が可能らしい。

 この時、私は一つの希望を見出していた。

 姉さんのことを誰も知らない場所なら、私のことを見てくれる、認めてくれるかもしれない。

 ……変われるかもしれない。

 いや、絶対変わってみせる。

 これは私に残された最後の希望だった。

 きっといるはず。

 ――私を必要としてくれる人が。

 ――私を認めてくれる人が。

 それが私の一人暮らしを決めた理由だ。

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