第一楽章③ ガール・ミーツ・ボーイ
(2011/09/28)
ピピピッ……ピピピッ!
目覚まし音で目が覚め、即座にアラームを解除する。
寝惚け眼で枕下の時計を見ると時刻は七時。
ふう、良かった。ちゃんと一人で起きれたよ、私。
転校初日に寝坊しなかったことに私は安堵する。
「………ふあああ」
と小さな欠伸を一つ漏らし。
ずるずると布団から抜け出し、まだ肌寒い空気の中、服を着替え、髪を三つ編みにする。
よし、できた。只今の時刻は七時三十分。
まだ時間は十分ある。
余裕を持って私は朝食を作る。
といってもコーンフレークだけど。
一人暮らしなんだし、ちゃんと料理できる様にならなくちゃ。
朝食を食べ終えたら、時刻は七時四十五分。
八時に家を出ても十分間に合うけど、転校生なんだし早く出た方がいいよね。
頑張って私、と自分に言い聞かせた、その時。
『I wana be a friend only you
~~私は君だけの味方になりたい♪』
ソファの上に置いている私の携帯の着信音が鳴り響いた。
私は電話を取りに行く。
携帯のディスプレイに表示されていたのは母の名前だった。
「お母さん?」
『あはは、お早う我が娘アリアよ。ちゃんと朝食は食べたかな?』
回線ごしに聞こえてきたのは、やけにハイテンションな母親の声。
「うん。ちゃんと食べたよ」
『そう、それは偉いわ。けど、あなたのことだからどうせコーンフレークだったりするでしょう』
「――!」
『あはは、その反応。私の予想通りだったようね。もう、女の娘なんだから料理くらいできないと結婚できないぞ♪ あのね、私が結婚した切っ掛けも私のお弁当を食べた謡さんがね『こんなおいしい弁当毎日食べたいな』っていってくれたことで、そしてそして――』
また、お母さんの惚気話が始まってしまった。
「あのね、お母さん。私、学校に行かないといけないから電話切るね」
『ちょっと待って!』
回線を切ろうと私を母親が呼びとめる。そんなにも惚気話を続けたいのだろうか?
と思いきや。
聞こえてきたのは、さっきと百八十度変わって親身に私を心配する優しい母親の声。
『こんなこと言えた義理じゃないけど
――頑張ってね、アリア。私、応援してるから』
…………お母さん。
優しい母親の声に私は勇気を貰う。
大丈夫だよ、お母さん。私は大丈夫だから。
――絶対に大丈夫だから。