第一楽章① ガール・ミーツ・ボーイ
(2010/12/18)
私、森宮アリアには夢があった。
毎年行われる高校・中学軽音大会――『New Music Age』
このグランプリ大会の舞台、舞洲アリーナのステージで歌うことだ。
小三の頃から軽音が好きでギターをやっていた。
少しずつ上手くなっていくのが凄く嬉しかった。
姉に次ぐ親からの期待、周りの姉と私に対する比較。
私では一生、敵わない姉という存在。
そんなこと気にもしなかった。
だって、私には音楽があったから。
それは姉にはなくて、私だけにある唯一のもの。
中一は予選会落ち。中二は惜しくも予選会準決勝落ち。
だけど、それでも私は満足だった。
ただ仲間と軽音をやれて、例え少数でも聞いてくれた人が私を認めてくれるから。
姉に負けっぱなしの人生でもいい。
百のことで負けても、千のことで負けてもいい。
音楽さえあれば。
それだけで私は幸せ。
そう……幸せだったのに。
(……何で……)
私は今、夢だった舞洲アリーナにいた。
といっても、ステージ上ではなく、ここに無数に蠢く観客の一人として、
ポタッ。
涙の滴が床に落ちた。
(……どうして、あなたがそこにいるの!?)
潤んだ両目で私は睨みつける。
ステージ上でリードギターとボーカルをやっている一人の女性を。
私の姉――森宮奏を。
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