軒下リィズル
軒下リィズル
傘もなく 屋根の下
雫は地面を撫でる
戻ることもできない
粒が足許を蹴った
濁鼠が這い出して
「風邪引きますよお嬢さん」
俯いて頷いた
鼠は傘さして歩いてった
軋む 屋根に 怯え ながら
眠る
……眠れない
外眺めて リメラ
少し濡れた靴を見る
こびりついた レスタ
泥はもう乾いていた
霧雨 仄揺れる
北向きの風が攻める
避けることもできない
服がまた鈍く湿った
もう髪が重くなる
「濡れてますよお嬢さん」
霞む先 掛かる声
寝たふりをして無視した
軋む 屋根の 下で
膝を 抱える けど
とても 寒い
膝に 顔 うずめた
今も 雨は やむ気配も
なく
沈んでゆけ リメラ
世界の下で空仰げ
溶け始めて レスタ
魚の様に月を待った
雨漏りで滴る雫は
舞う霧雨より
深くえぐった
……もう帰ろう
手を握った リメラ
もう何も見えないから
お借りしてた レスタ
お返しいたしましょう
蹴り飛ばして リメラ
揺れる屋根から降る水に
「ずぶ濡れだよ」
レスタ
うん
濡れっぱなしだ
雨は止んでる
古い家は壊れた
雨が降ってる
私の頬を濡らす
虎の威を借る狐。