第八話 ハル、ついに“形”を完成させる
ハル、ついに“形”を完成させる
格納庫の片隅。
作業灯の下に、ひときわ大きな影が立っていた。
ハルが組み上げた“寄せ集め機体”。
外装はバラバラの規格。
装甲は色も質感も統一されていない。
フレームは無骨で、線も太い。
洗練とは程遠い。
だが――
確かに“機体”として成立していた。
周囲の整備員たちがざわつく。
「おい……マジかよ」
「ハル、これ全部一人で?」
「寄せ集めでここまで形にするなんて……」
「動かないのは当然だが、これは……将来有望どころじゃないぞ」
ハルは照れくさそうに笑いながら、
機体の胸部に手を置いた。
「……まだ動かないけどな」
だが、彼の目は真剣だった。
動かない理由は分からない。
だが、“何かが足りない”ことだけは分かる。
それは電力でも、制御系でもない。
もっと根源的な“何か”。
「……あと一つ。
何かが揃えば……こいつは動く」
その確信は、理屈ではなく“感覚”だった。
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一方その頃、ミカは戦場で――
数度の戦闘を経て、
ミカと1号機の動きは驚くほど洗練されていた。
敵の動きを読む。
1号機が先読みして動く。
ミカが意志を向けるだけで、機体が応える。
まるで“二人で一つの生命体”のようだった。
指揮官の声が入る。
「ミカ・アオイ、帰還ルートを確保した。
そのまま帰投しろ」
「了解。帰投します」
ミカは深く息を吐き、
1号機を反転させる。
その瞬間――
地平線の向こうで、空が裂けた。
赤黒い光が噴き上がり、
大地が震え、
金属の悲鳴のような音が響く。
ミカは息を呑む。
「……なに、あれ……?」
煙の中から、
巨大な影がゆっくりと姿を現した。
混沌側の機体。
だが、今までのものとは明らかに違う。
継ぎはぎの外装はそのままに、
その“規模”が異常だった。
まるで――
複数の混沌機体が融合したような、巨大な“塊”。
赤黒いコアが複数、脈動している。
指揮官の声が震える。
「……反応が……大きすぎる……!
ミカ、すぐに離脱しろ! あれは――」
ミカは1号機のコアが震えるのを感じた。
「……来る」
巨大な影が、
ミカたちの方へ向かって動き出した。
巨大脅威との戦闘
■ 空が裂けた
ミカの視界に、
突然、赤黒い光が走った。
大地が震え、
空気が歪み、
金属が悲鳴を上げるような音が響く。
「……なに、これ……?」
煙の向こうから、
“それ”が姿を現した。
巨大。
異形。
継ぎはぎの塊。
まるで複数の混沌機体が、
無理やり融合し、
一つの“怪物”になったような姿。
コアが三つ。
それぞれが赤黒く脈動し、
不規則なリズムで光を放っている。
指揮官の声が震える。
「ミカ、離脱しろ! あれは……規格外だ!」
ミカは息を呑む。
だが、1号機のコアが紫に脈動した。
「……行くよ、1号機」
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■ 巨大脅威、動く
怪物は、ゆっくりと、しかし確実にミカの方へ向かってきた。
その動きは重い。
だが、重さの中に“意志”があった。
「殺す」
「取り込む」
「増える」
そんな感情が、
直接ミカの脳に流れ込んでくるようだった。
ミカは歯を食いしばる。
「……来るなら、来い!」
1号機が地を蹴る。
紫光の軌跡を残しながら、怪物へと突進する。
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■ 衝突
怪物の腕が振り下ろされる。
その一撃は、地面を抉り、
砂塵を巻き上げ、
空気を震わせた。
ミカはギリギリで回避する。
「重い……! でも、読める!」
覚醒後の共鳴が、
怪物の動きを“先読み”させる。
1号機は怪物の懐に潜り込み、
汎用右腕でコアの一つを殴りつけた。
金属が砕ける音。
赤黒い光が散る。
だが――
怪物は怯まない。
むしろ、
砕かれた部分が“蠢き”、
別のパーツが流れ込むように再生していく。
「……再生!? そんな……!」
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■ 怪物の反撃
怪物の背部が裂け、
無数の触手のような金属片が飛び出した。
ミカは即座に後退する。
だが触手は追ってくる。
まるで生き物のように、
ミカの動きを“理解している”かのように。
「くっ……!」
1号機の左脚に触手が絡みつく。
装甲が軋む音。
内部フレームが悲鳴を上げる。
ミカは叫ぶ。
「離れろ!!」
1号機のコアが強く脈動し、
紫光が爆ぜた。
触手が焼き切れ、
ミカは距離を取ることに成功する。
だが――
1号機の左脚は損傷していた。
「……まずい」
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■ ミカの決断
怪物は、ゆっくりと、しかし確実に迫ってくる。
その姿は、
“戦う兵器”ではなく、
“喰らう災厄”。
ミカは息を整え、
1号機のコアに手を触れるような感覚で意識を向ける。
「1号機……まだ行ける?」
紫光が、静かに応えた。
ミカは微笑む。
「……うん。行こう。
ここで止めなきゃ、誰かが死ぬ」
怪物が咆哮する。
赤黒い光が空を染める。
ミカは1号機を前に出す。
「――来い!!」
そして、
二つの“覚醒”が激突した。
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格納庫の警報 ― ハルの焦燥
■ 警報が鳴り響く
格納庫全体が赤い警告灯に染まり、
耳をつんざくような警報が鳴り響いた。
《警告! 前線第七区画にて巨大脅威を確認!
1号機、交戦中! 援軍なし!》
整備員たちが一斉に顔を上げる。
誰もが理解した。
ミカが、孤立した。




