第四話---ハルが受け取る“運命のパーツ”‐‐‐
---ハルが受け取る“運命のパーツ”‐‐‐
ミカの覚醒からかなりの時がたったが、
格納庫はまだ騒然としていた。
1号機の右腕は覚醒時の負荷に耐えきれず、内部フレームがねじ切れ、外装は溶断したように歪んでいた。
「その腕、どうするの?」
格納庫の片隅。
作業灯だけがぽつんと灯り、周囲の影を長く伸ばしていた。
ハルは作業台の前で、1号機の損傷した右腕ユニットを前にしていた。
外装は焼け焦げ、内部フレームはねじれ、配線はむき出し。
それでも彼は、まるで宝物を扱うように丁寧に触れていた。
そこへ、静かな足音。
ミカが立っていた。
彼女は覚醒の余韻をまだ纏っているようで、
どこか現実から半歩浮いたような雰囲気をまとっていた。
「……ハル」
ハルは驚いて振り返る。
「ミカ? どうしたんだよ。もう休んだ方が――」
ミカの視線は、ハルではなく“右腕”に向けられていた。
「その腕、どうするの?」
その声は、責めるでも、心配するでもない。
ただ、純粋な疑問としての問い。
ハルは少し戸惑いながら答える。
「主任に渡されたんだ。練度向上だってさ。
……まあ、廃棄する前に分解して構造を覚えろってことだろ」
ミカは腕に近づき、そっと触れた。
その指先が触れた瞬間、微かに紫の残光が揺らめいた気がした。
「……まだ、呼んでる」
ミカの呟きに、ハルは眉をひそめる。
「呼んでるって……機械だぞ、これ」
ミカは首を横に振る。
「違う。これは“私の一部”じゃない。
でも……あなたが持っているのは、きっと意味がある」
ハルは言葉を失った。
ミカの言葉は、どこか遠く、でも真っ直ぐだった。
「意味なんてないよ。俺はただの整備員だ。
お前みたいに選ばれたわけじゃない」
ミカはハルを見つめた。
その瞳は、覚醒の光をまだ宿しているようだった。
「ハル。
私は“選ばれた”んじゃない。
ただ……呼ばれただけ」
そして、少しだけ微笑む。
「でも、この腕はあなたを呼んだんだと思う」
ハルの胸がざわつく。
それは期待でも、嫉妬でも、恐怖でもない。
ただ、何かが“動き出す予感”。
「……だったら、答えてやるよ。
こいつが望むなら、俺が直す」
ミカは静かに頷いた。
「うん。ハルなら、そう言うと思った」
その瞬間、
二人の間にあった“距離”が、ほんの少しだけ変わった。
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