表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/39

第十五話 整備区画の隅。

第十五話 整備区画の隅。


調律者たちが「合体変形!」「ニコイチ!」「ロマン!!」と叫びながら暴走し、

ミカが悲鳴を上げ、ハルが苦笑し、軍の監視員たちが固まっている――

その地獄のような光景を、タケルは震える手でメモを取りながら見ていた。


---


「いいんですか、あれ?」


タケルは、隣に立つ上官――カザマ中尉に小声で尋ねた。


「い、いいんですか、あれ……?」


声は震えている。

顔は青い。

だが――


さっきより、ほんの少しだけ血色が戻っていた。


カザマ中尉は、しばらく無言だった。


(……いいわけないだろ。

軍規違反のオンパレードだし、

調律者は勝手に機体を触るし、

虚無観測者まで来たし、

新人のお前は胃を押さえてるし……)


だが、口から出た言葉は――


「……」


何も言えなかった。


理由は簡単。


軍の誰も、あの状況を止められないからだ。


---


上官の心の声


(……タケル、よく耐えてるな。

普通の新人なら泣いて逃げてるぞ)


(調律者の暴走、虚無観測者の介入、

混沌残滓適合者の機体設計……

初日でこれ全部見せられて、

まだ立ってるだけで偉いよ)


(……いや、むしろ“順応し始めてる”のか?

さっきより顔色がマシだし……

もしかして、こいつ――)


カザマはタケルの横顔を見た。


タケルは青ざめながらも、

調律者の図面を凝視していた。


(……案外、メンタル強いのかもしれないな)


---


タケルの“資質”が静かに芽を出す


タケルはまだ気づいていない。


自分が“揺らぎ”を視認できることも、

虚無観測者に興味を持たれたことも、

上官が密かに期待し始めていることも。


ただ――

混乱の渦中で、

彼は小さく息を吐いた。


「……なんか……慣れてきたかもしれないです……」


カザマ中尉は思わず吹き出しそうになった。


(……お前、本当に新人か?)


---


タケル、静かに“物語の中心”へ近づく


調律者の暴走、

虚無観測者の介入、

ハルとミカの境界踏破計画。


そのすべてを“観測できる位置”にいるタケルは、

まだ自覚していない。


自分が、いずれこの物語の重要な鍵になることを。


そして――

上官は確信し始めていた。


(……こいつ、伸びるぞ。

生き残れれば、だけどな)


---


整備区画の混乱は最高潮。

合体案だのニコイチだの、調律者たちのテンションは天井を突き抜けていた。


そんな中――

タケルの存在に、ついに調律者の目が向いた。


---


調律者、タケルを“発見”する(地獄の始まり)


調律者Aがふと振り返り、

青ざめた顔でメモを取っているタケルを見つけた。


「……あれ?

ねえ、君、誰?」


「ひっ……!?」


調律者B「新人監視員!?

うわ、君、さっきからずっと“揺らぎ”見えてたよね!?

ねえ、見えてたでしょ!?見えてたよね!?」


「え、あ、あの……その……」


調律者Cがタケルの肩をガシッと掴む。


「君も面白いね!!

適性あるよ!!

混沌波形の視認能力なんて、軍人で持ってる人ほとんどいないよ!!」


「ひ、ひぃ……!」


カザマ中尉(上官)は慌てて止めようとするが――


調律者A「ねえねえ、君さ、

“観測者の影”見えたでしょ?

あれ普通見えないからね!?

すごいよ!!」


「……あ、あれ……見えちゃいけないやつだったんですか……?」


調律者B「見えちゃいけないというか……

見えると“選ばれちゃう”やつだね!!」


「選ばれたくないです!!」


調律者C「大丈夫大丈夫!!

死ぬかもしれないけど、面白いから!!」


「全然大丈夫じゃないです!!」


---


タケルの心の声(悲壮)


(……慣れてきたと思ったけど……

錯覚だったかもしれない……)


(なんで俺、調律者に絡まれてるの……?

なんで“適性ある”とか言われてるの……?

なんで“死ぬかもしれないけど面白い”とか言われてるの……?)


(……休みの日に胃薬、箱で買わないと……

いや、箱じゃ足りないかもしれない……

ケースで買うべきか……)


(……でも、逃げられないし……

仕事だし……

やるしかない……)


タケルは震えながらも、

メモを取り続けた。


人知れず、悲壮な覚悟を決めて。


---


上官の視線


カザマ中尉は、

タケルが調律者に囲まれながらも倒れずに立っているのを見て、

小さく息を吐いた。


(……あいつ、本当に強いな。

普通の新人なら泣いてるぞ)


(……いや、もしかして“適性”って本当にあるのか?

だとしたら……)


カザマはタケルの背中を見つめながら思った。


(……生き残れよ、新人)


---


タケル、静かに“物語の渦”へ


調律者に絡まれ、

虚無観測者に目をつけられ、

上官に期待され、

本人は胃を押さえながら震えている。


だが――

タケルは確実に、

この世界の“中心”へと近づいていた。


本人の意思とは関係なく。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ