第十三話 そして、さらに混乱を呼ぶ存在が……
第十三話 そして、さらに混乱を呼ぶ存在が……
調律者たちが騒ぎまくる中、
整備区画の照明が一瞬だけ揺らいだ。
「……え?」
「……来たか」
調律者A「うわ、波形が乱れた!!
誰か来る!!」
調律者B「軍?ハカセ?それとも――」
調律者C「虚無観測者!?」
空気が冷たくなり、
影が揺れた。
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整備区画の照明が揺らぎ、
空気が一瞬だけ“無音”になった。
調律者たちが騒ぎまくっていたその中心で――
影が、揺れた。
「……っ、また……来た……?」
「……虚無観測者だ」
調律者A「ひぃっ!?
なんでこのタイミングで来るの!?
いや、でもデータ取りたい!!」
調律者B「静かに!!死ぬぞ!!」
調律者C「いや、死ぬかどうかは観測者次第……!」
影は、音もなく“そこに現れた”。
形は曖昧で、
人のようで人ではなく、
ただ“存在している”だけの何か。
だが――
その視線だけは、確かに二人を見ていた。
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虚無観測者、発声
影は、
調律者たちの騒ぎも、
軍の監視も、
ハルの残滓の揺らぎも、
ミカの安定因子も――
すべてを“観測”した上で、
静かに言葉を落とした。
「――二つの位相が、同じ器に宿るか」
「……え?」
「……二人乗りのことか?」
影はゆっくりと揺れ、
まるで“肯定”するように空気が震えた。
「境界は、単独では越えられない。
二つの波形が重なる時――
“道”は開く」
調律者A「やっぱり二人乗りじゃん!!」
調律者B「観測者のお墨付き!!」
調律者C「これはもう決定だね!!」
ミカ「決定じゃない!!」
ハルは影を見つめ、
眉をひそめる。
「……二人の波形が重なるって……
どういう意味だ?」
影は答えない。
ただ、ミカのほうへ視線を向ける。
「……わ、私……?」
影は、
ミカの胸元――
“安定因子”の宿る場所を指すように揺れた。
「安定と混沌。
二つは対ではなく、補完だ。
片方だけでは“境界”は壊れる」
「……つまり、
俺だけでもダメで、
ミカだけでもダメってことか」
影は、
まるで微笑むように形を歪めた。
「二つで一つ。
それが“境界踏破者”の条件」
「境界……踏破者……?」
影は最後に、
意味深な言葉を残した。
「――器を二つに分けるか。
二つを一つにするか。
選ぶのは、お前たちだ」
そして、
影は音もなく消えた。
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残された混乱
調律者A「二つを一つ!?
つまり二人乗り!!」
調律者B「いや、もっと融合的な何かかも!!」
調律者C「二人の精神をリンクさせて――」
ミカ「やめて!!怖いから!!」
ハルは深く息を吐き、
ミカの肩に手を置いた。
「……ミカ。
どうやら“二人で乗る”って案、
完全に否定はできないみたいだ」
「……う、うん……
でも……ちょっと怖いね……」
「大丈夫。
俺が隣にいる」
ミカは顔を赤くしながら、
小さく頷いた。
「……うん」
調律者たちは大騒ぎし、
軍の監視員は震え、
虚無観測者は消え――
二人乗り案は、もはや“避けられない未来”として動き始めていた。
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整備区画の空気が、
調律者たちの“暴走気味のテンション”によって、
もはや制御不能な方向へと転がり始めていた。




