第七話 調律者(ハーモナイザー)
基地のゲートをくぐった瞬間、
二人は“いつもと違う空気”に気づいた。
照明は通常より明るく、
監視カメラの首振り角度が明らかに増えている。
通路の兵士たちの視線も、どこか探るようだった。
ミカが小声でつぶやく。
「……なんか、見られてる気がする」
ハルも周囲をちらりと見回す。
「気のせいじゃないな。
軍は俺たちの動きを“完全にマーク”してる」
「やっぱり……ハカセの研究所に行ったから?」
「それもあるし、俺の機体の改造の件もあるだろうな」
二人は自然と歩幅を合わせながら、
それぞれの整備区画へ向かった。
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ミカ:1号機のチェック
ミカが1号機の格納庫に入ると、
すでに整備員たちが数名、無言で作業していた。
ただし――
彼らの視線は、ミカではなく“1号機の内部構造”に向いている。
(……監視というより、調査……?)
1号機の脚部を開き、損傷箇所を確認しながら、
ミカは小さく息をついた。
「……ハルの言った通り、応急処置で歩けるようになってる。
でも……この補助フレーム、完全にハルの独自設計だよね」
整備員の一人が近づいてくる。
「ミカ少尉、そのパーツ……どこで?」
ミカは笑顔を作る。
「ハルが持ってた“整備用追加兵装”だよ。
詳しいことは本人に聞いて」
整備員はそれ以上聞かず、
ただ記録端末に何かを入力した。
(……やっぱり、軍はハルの技術を警戒してる)
ミカは胸の奥に小さな不安を抱えながら、
1号機の内部に手を伸ばした。
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ハル:残骸から“新たな武装”を創る
一方その頃、ハルは自分の整備区画にいた。
周囲には――
戦場から回収した“混沌機体の残骸”が並んでいる。
普通なら触れるだけで危険な代物だが、
ハルは慣れた手つきで分解し、
内部の“位相素材”を取り出していた。
「……やっぱり、こいつらの素材は特殊だな。
普通の金属じゃありえない反応をする」
ハルは工具を動かしながら、
残骸の一部を自分の機体用のパーツに加工していく。
その様子を、
整備区画の奥から“軍の監視員”がじっと見ていた。
「……あれが例の“混沌残滓適合者”か」
「ハカセが庇っている以上、手出しはできん。
だが……あの技術は危険すぎる」
ハルは聞こえていないふりをしながら、
淡々と作業を続ける。
(……監視されてるのはわかってる。
でも、止まるわけにはいかない)
ハルは残骸から取り出した素材を組み合わせ、
新たな武装の試作品を完成させた。
**《位相干渉ブレード・試作零号》**
刃は存在しているようで存在していない。
光が歪み、空間が震える。
「……よし。
これなら“向こう側”の干渉にも耐えられるはずだ」
監視員たちはその光景を見て、
息を呑んだ。
「……あれは軍の技術じゃない。
完全に未知の武装だ」
「報告しておく。
上層部は間違いなく動くぞ」
ハルは気づいていた。
だが、気にしなかった。
(ミカを守るためにも……
“境界”に踏み込むためにも……
必要なんだ)
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二人が再び合流する
整備区画の外で、ミカが待っていた。
「ハル、お疲れ。……どうだった?」
「まあ、監視されてるのは確定だな。
でも、やることは変わらない」
ミカは小さく笑う。
「うん。私も同じ気持ち」
二人は並んで歩き出す。
監視の視線を背に受けながらも、
その歩みは迷いがなかった。
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基地の監視の目が増え、軍の空気が重くなる中――
二人の周囲に、もうひとつの“奇妙な勢力”が近づいてきていた。
調律者。
軍でも混沌側でもない。
むしろ、どちらにも属さず、どちらにも干渉する。
目的はただひとつ。
「落ちてくる技術」の収集。
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調律者登場
ミカが1号機の脚部を閉じた瞬間、
背後から妙に軽い声が飛んできた。
「おお〜〜〜!それ、混沌素材の補助フレームじゃん!
実物初めて見た〜〜〜!」
「えっ!?誰!?」
振り返ると、
白衣とも作業着ともつかない服を着た男女が数名、
勝手に格納庫に入り込んでいた。
ハルの整備区画にも同時に現れ、
残骸を見て目を輝かせている。
「うわっ、これ位相歪曲コアの破片じゃん!
触っていい!?触るね!?触るよ!!」
「触るな!!」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ミカの心の声(……長い)
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第一印象:技術バカ
ハルは眉をひそめながら、
彼らの“異常なテンション”を観察する。
(……こいつら、技術バカというか……
興味のあるモノ以外、なにも目に入ってねえんじゃねえか?)
ミカも同じことを思っていた。
(この人たち……敵じゃないけど……味方って言えるの?)
調律者たちは軍の監視員を完全に無視し、
勝手にメモを取り、写真を撮り、
時にはハルの作業机に乗り上げる勢いで覗き込む。
「ねえねえ、この素材どこで拾ったの!?
混沌機体の残骸!?
それとも“向こう側”の落とし物!?」
「このブレード、位相干渉してるよね!?
どうやって安定化させたの!?
え、感覚!?感覚でやったの!?天才じゃん!!」
「……頼むから落ち着け」
「落ち着いたら死ぬ!」
「どういう理屈!?」
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