表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/45

第二話 残された二人

残された二人


「……ハル、本当に大丈夫なの?」


「わからない。

でも、行くしかないだろ」


ミカは迷わずハルの手を掴む。


「私も行く。

置いていかれるのは、もう嫌だから」


ハルは少し驚き、そして微笑む。


「……ああ。行こう」


二人は走り出す。

“向こう側”の真実へ、そしてハルの過去の核心へ。


---


夜の基地外縁。

ハカセのドローンが示したルートに沿って、二人は無人の補給路を走っていた。

照明は最低限、風の音だけが耳に残る。


その静けさが――急に“変質”した。


---


空気が揺れる

ミカが足を止める。


「……今、空気が……揺れた?」


ハルも立ち止まり、眉をひそめる。

周囲の景色が、ほんの一瞬だけ“ノイズ”のように歪んだ。


「……来たか」


「来たって……何が?」


ハルは答えようとしたが、その前に――


影が落ちた。


地面でも、建物でもない。

“空間そのもの”に、黒い影が滲み出るように広がっていく。


---


虚無観測者の“影”

影は形を持たない。

しかし、確かに“こちらを見ている”とわかる。


声はない。

音もない。


ただ――思考に直接触れてくる。


ミカが息を呑む。


「……頭の中に……何か……!」


ハルは歯を食いしばる。

胸の奥の“混沌残滓”が、脈打つように反応していた。


(――観測中)

(――対象:混沌残滓保持者)

(――接触試行)


「これ……声? いや、声じゃない……!」


「虚無観測者の“影”だ。

本体じゃない……ただの観測端末みたいなもんだ」


影が揺れ、形を変える。

人のようでもあり、機械のようでもあり、

“存在の概念”だけがそこにある。


---


影のメッセージ

(――質問)

(――なぜ、混沌の残滓を保持している)

(――回答を要求)


「……ハル、答えないと……!」


「いや、答えたらダメだ。

こいつらは“情報”を餌にしてる。

一度渡したら、ずっと追われる」


影がさらに濃くなる。

空気が冷え、視界の端が暗く染まっていく。


(――拒否を確認)

(――強制観測に移行)


「ハルっ!」


ハルの視界が一瞬、白く弾けた。


---


ハルの“残滓”が反応する

胸の奥が熱くなる。

脈動が強まり、影の干渉を押し返すように波紋が広がった。


影が揺らぎ、ノイズが走る。


(――干渉不能)

(――残滓の位相が不明)

(――観測中断)


「……ハルの中の“混沌”が……影を弾いた……?」


「……どうやら、俺の中の残滓は“向こう側”のものじゃないらしい」


影は最後に一度だけ形を変えた。

まるで“興味を示すように”。


(――再接触予定)

(――観測対象:優先度上昇)


そして、影は音もなく消えた。


---


残された余韻

ミカは震える手でハルの腕を掴む。


「……ハル、本当に大丈夫なの……?」


ハルは息を整えながら、ミカの手を握り返す。


「大丈夫じゃない。

でも……行くしかない。

ハカセのところへ」


ミカは強く頷く。


「うん。絶対に行こう。

今の……放っておけない」


二人は再び走り出す。

虚無観測者の影が残した“冷たい視線”を背に受けながら。


---



どれでも物語がさらに深くなる。夜の補給路を抜け、研究所の外縁が見え始めた頃だった。

薄暗い森の向こうに、ハカセのラボ特有の“意味不明な光”がちらついている。

あと少しで辿り着く――そう思った瞬間。


ライトが一斉に照射された。


「止まれ!軍所属第七追跡分隊だ!」


ミカが反射的にハルの腕を掴む。

ハルは舌打ちし、周囲を確認する。

十数名の武装兵が、完全に包囲していた。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ