【if版】ep.7 育つのってね、すっごく楽しいんだよ
「……よし。畑、作ってみるか」
そう呟くと、うさちぁん(分)が嬉しそうに耳をぴょこぴょこ揺らした。
「やった~♪ じゃあね、まずは土をほぐすところからだよ~♪
固いままだと、根っこが苦しくなっちゃうからね」
「なるほど……」
孝平は、森で拾った枝をスコップ代わりにして、土をゆっくりと掘り返した。
雨上がりの土は柔らかく、指で触れるとしっとりとした温度が伝わる。
――ぽこ。
足元の土が、また小さく膨らんだ。
「……見てるのか?」
『うん♪ 土の精霊ちゃん、孝平くんのやり方、気に入ってるみたい』
「気に入るとか、あるのか?」
『あるよ~♪ だってね、土ってね、乱暴に触られるとすぐ拗ねちゃうの。
優しく触ってあげると、すぐ仲良くなるんだよ~』
「……そういうものなのか」
孝平は、少しだけ笑った。
土を触る手が、自然とゆっくりになる。
やがて、小さな畝ができた。
「うさちぁん(分)、種って……」
「はいは~い♪ 持ってきたよ~♪」
うさちぁん(分)が両手いっぱいに抱えていたのは、
昨日食べた実の中にあった、小さな種たち。
「これ、育つのか?」
「育つよ~♪ 煮ると甘くてね、蒸すともっと甘くなるの。
孝平くん、絶対好きだよ~♪」
「……楽しみだな」
ひとつずつ、種を土に落とし、そっと土をかぶせる。
そのたびに、足元の土がふわりと温度を返した。
まるで「任せろ」と言っているように。
「……ありがとう」
ぽこっ。
返事のような音がした。
うさちぁん(分)が、孝平の横でぴょんと跳ねる。
「ね~♪ 育つのってね、すっごく楽しいんだよ。
毎日ちょっとずつ変わっていくの。
昨日より今日、今日より明日ってね♪」
「……そうだな」
孝平は、土についた手を見つめた。
前の世界では、
こんなふうに“何かを育てる時間”なんてなかった。
急いで、焦って、
誰かの顔色ばかり見ていた。
でも今は違う。
ゆっくりでいい。
ひとつずつでいい。
「……生きるって、こういうことなのかもな」
うさちぁん(分)が、にこにこしながら言った。
「そうだよ~♪ 育てるって、生きるってことだよ~♪
ね、土の精霊ちゃん?」
ぽこぽこぽこっ。
水面が、まるで笑っているように揺れた。
孝平は、胸の奥がまたひとつ軽くなるのを感じた。
ぽこ。土の精霊は音で返事をします。
どんな姿をしてるのかな?
絵心がないので、イメージは読者の皆様の妄想に委ねられます♪




