【if版】ep.16 竜巻のミキサーと、熱すぎるオムライス
拠点に漂うのは、食欲を刺激する酸味と、なぜか微かに「戦い」の余韻を感じさせる鉄火場のような匂いだった。 収穫したばかりの『情熱パンチ・トマト』を前に、咲姫が意気揚々と腕をまくる。
「見ていてください孝平さん! まずは洗浄と下処理を同時に終わらせるのですっ!」
咲姫が大きな桶に水を満たし、トマトを放り込んだ。彼女が手をかざすと、桶の中に激しい渦潮が発生する。
「……え、咲姫? それ、水圧が強すぎないか?」
「いいえ! これで汚れを飛ばしつつ、繊維を完璧に断ち切るのです。……はぁぁぁっ! 水断の舞・微塵切り(ウォータージェット・カット)なのですっ!!」
桶の中でトマトが凄まじい速度で回転し、真っ赤な液体へと変わっていく。洗浄というよりは、もはや高圧洗浄機で原子レベルまで粉砕している勢いだ。 さらに咲姫は止まらない。
「次は、風よ! 情熱を攪拌するのですっ!」
今度は拠点の中心に、真っ赤な液体を巻き込んだ「赤い竜巻」が発生した。竜巻の摩擦熱と、咲姫が注ぎ込む過剰な魔力によって、ケチャップは煮込まれる前にすでに沸騰し始めている。
「あはは〜♪ トマトちゃんたちが洗濯機の中で悲鳴をあげてるね〜♪」
うさちぁん(分)が楽しそうに囃し立てる中、咲姫は仕上げとばかりに火の精霊を焚きつけ、一気にオムライスを焼き上げた。
「できました! 咲姫特製・『超音速攪拌オムライス』なのです!」
完成したオムライスは、表面の卵が魔力の余剰でボウッと淡く発光していた。 咲姫はスプーンを手に取ると、黄金色の卵と真っ赤なケチャップを絶妙なバランスで掬い取り、孝平の口元へと運ぶ。その頬は、ケチャップよりも赤く染まっていた。
「さあ、孝平さん。冷めないうちに……いえ、エネルギーが揮発する前に。……あ、あーーん、なのですっ!」
孝平は覚悟を決めて口に含んだ。 瞬間、脳を突き抜けるようなトマトの酸味と、咲姫の「情熱」という名の魔力が全身を駆け巡る。
「――っ、熱い! けど、うまいな。なんだか、力が溢れてくる……」
「本当ですか!? ……よかったのです。これが、私なりの『素材の声』への答えなのです!」
咲姫はふにゃりと柔らかな笑みを浮かべた。 足元では、ぽぷらんが満足げにひげを「ゆら~り」と揺らし、うさちぁんが「次はあのピリリとした実を使おうよ♪」と、すでに次の暴走を予感させる声をあげていた。
咲姫=天然=大雑把
で、書いています。
天然=大雑把ではありません。あくまでも僕の設定上のイメージになります。




