【if版】ep.1 おつかれさまのかわりに
※この作品は、既存作『クラフトアルケミスト』の“もしも”を形にした、応募用のリライト版(if版)です。
物語の核はそのままに、展開や描写を一部手直ししています。
既存版とは若干異なる部分がありますが、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。
目が痛い。
時計を見ると、午前三時を指していた。
「もうこんな時間か。はぁ……あれ? 今日何曜日だったっけ?」
モニターの光に照らされて、手元の書類の山を見る。
「まだまだ終わらないなぁ……けど、あと三件だけやって帰ろう」
いつもの口癖を呟き、次の書類に手を伸ばす。
“あと少し”を繰り返して、現実から逃げていくうちに、今日もまた終わっていく。
誰も助けてくれない仕事を抱えて、
誰にも助けてと言えないまま、
誰のためにやってる仕事なのか分からないまま。
本当は、誰の責任でもない仕事を、
なぜか自分だけが背負っているだけなのに。
それでも手を止められなかった。
一度でも止めてしまうと、もう続きはやりたくなくなるから。
少しでも前へ。
そうして今日も、“あと少し”を積み重ねていく。
気付けば、空が白み始めていた。
「これで……終わりだ……終わった。今日もやり切ったぞ」
書類を出し終えて時計を見ると、午前四時を過ぎていた。
ぐ~~。
やり終えた達成感からか、極度のストレスから解放されたからか、腹の虫が騒ぎ始めた。
この時間に開いてるのはどこだ?
動きの鈍い頭を働かせて考える。
「そういえば駅前にラーメン屋があったな……いくか」
温かいものに触れたかった。
生きてると実感したかった。
誰にも気づかれないまま消えていくような夜の中で。
誰かに「お疲れ様」と言われる代わりに。
ふと、周りを見る。
誰もいないオフィス。
蛍光灯の灯が無機質に机を照らしている。
凝り固まった身体に、血を巡らせるように、ゆっくりとコートを羽織り、エレベーターに乗る。
ビルを出て、ここから左手、駅の方へ向かう。
息が白い。冷たい風が頬を撫でた。
眠い。
フラフラと足元がおぼつきながらも、熱いラーメンの汁を想像して歩き出す。
交差点に着き、信号を待つ。
──その時、急ブレーキ音が聞こえた。
お読みいただき、ありがとうございます。
これは、既存の『クラフトアルケミスト』とは少し違う、もうひとつの始まりです。
もしよければ、感想やブクマなどで、そっと応援していただけたら嬉しいです。
次回は【マスコットキャラの登場】を予定しています。お楽しみに。




