【if版】ep.16 燃えるオムライスと、愛の「あーん」再来
拠点に漂うのは、食欲を刺激する酸味と、なぜか微かに焦げたような……いや、闘志の匂いだった。 咲姫の風魔法によって発生した「赤い竜巻」が収まったあと、そこには完璧に裏ごし(物理)された、輝くほど真っ赤なケチャップが完成していた。
「見てください孝平さん! 愛と遠心力の結晶なのですっ!」
咲姫が誇らしげに掲げたフライパンの上には、そのケチャップを惜しみなく使い、強火の魔法で一気に焼き上げたオムライスが鎮座していた。 表面の卵は、火の精霊が全力で協力したせいか、内側からボウッと淡い光を放っている。
「……これ、また体温が爆上がりするタイプじゃないよな?」
「大丈夫なのです。今回は、水魔法でしっかり『愛情の冷却』も施してあるのです!」
「(……余計に不安だな)」
孝平が冷や汗を拭っていると、横からうさちぁん(分)がひょいと顔を出し、オムライスをツンツンと突いた。
「あはは〜♪ このケチャップ、まだ生きてるね〜。スプーンですくおうとすると、ちょっとだけ反撃してくるよ♪」
「食べ物と戦わせないでくれ……」
ため息をつく孝平だったが、咲姫の瞳はこれまでにないほど真剣だった。彼女はスプーンを手に取ると、黄金色の卵と赤いケチャップを絶妙なバランスで掬い取り、孝平の口元へと運ぶ。
「さあ、孝平さん。冷めないうちに……いえ、エネルギーが揮発する前に。……あ、あーーん、なのですっ!」
以前の「塩餡子」の時よりも、さらに一歩踏み込んだ距離。咲姫の頬は、夕焼けよりも、目の前のケチャップよりも赤く染まっている。 孝平は覚悟を決め、その「情熱の塊」を口に含んだ。
「――ッ!?」
瞬間、口の中でトマトの酸味が爆発した。しかし、それは不快な衝撃ではない。 咲姫が風で練り込み、水で磨き上げた旨味が、ダイレクトに脳を突き抜ける。そして、じわりと広がる心地よい熱。
「……うまい。なんだこれ、体が軽いっていうか、力が湧いてくる」
「本当ですか!? ……よかったのです。これが、私なりの『素材の声』への答えなのです!」
咲姫は心底ほっとしたように、ふにゃりと柔らかな笑みを浮かべた。その姿は、先ほどまで竜巻を操っていた魔法使いとは思えないほど、ただの恋する乙女だった。
そんな二人を眺めながら、ぽぷらんが足元でひげを「ゆら〜り、ゆら〜り」と満足げに揺らしている。
「あ、見て! ぽぷらんが『次は森の奥の、あのピリリとした実を合わせるともっとハッピーだよ』って言ってるよ〜♪」
「……うさちぁん。今は、この余韻に浸らせてくれないか?」
孝平は苦笑しながら、再び咲姫が差し出すスプーンを待つのだった。
ごめんなさい!ラブ・コメディって読むときはにやにやするんですが、自分で書くのがこんなにも難しいとは。。
いい感じの題材を探さないと・・・うぅぅ




