【if版】ep.14 種まきは、情熱と爆発の調べ?
「……で。これが、その『種』なのか?」
翌朝。目の前の光景に、孝平は遠い目をした。 昨日のダンスパーティーの結果、フカフカを通り越して「発光」している畑の横で、咲姫が大事そうに小さな小瓶を抱えている。
「はい! 孝平さんの『素材録』を元に、うさちぁんさんのアドバイスを加えて調合した……咲姫特製・『ハッピーの種』なのです!」
「プロトタイプ……」
「中身は、爆ぜる木の実の核に、虹色の茸の胞子をコーティングして、仕上げに私の『感謝の気持ち』をたっぷり詰め込んだのですっ!」
「それ、植えた瞬間にこの島が吹き飛んだりしないか?」
孝平の不安をよそに、うさちぁん(分)が横からひょいと顔を出す。
「大丈夫だよ〜♪ 土の精霊ちゃんたちが『もっと刺激が欲しい!』って言ってるもん。ほら、見て見て♪」
足元では、土の精霊たちが小さな手(のような泥の塊)を突き出し、「はやく!はやく!」と催促するように小刻みに震えている。
「……わかったよ。やるなら、一気にやってくれ」
覚悟を決めた孝平。咲姫が「いっせーの、なのですっ!」と、小瓶の中の種を畑へ一斉に放り投げた。
その瞬間。
シュンッ!
と音がしたかと思うと、畑に吸い込まれた種が、まるで地中の火薬に引火したような勢いで芽吹いた。
「芽が出た……なんてレベルじゃないぞ、これ!」
「わあぁ! 見てください孝平さん! 芽が……芽が、歌いながら伸びているのです!」
咲姫の言う通り、生えてきた双葉は「プルルル〜♪」と可愛らしい声を出しながら、ものすごい速さで成長していく。しかも、その葉っぱは太陽の光を浴びて、パチンッ、パチンッ、と小さなクラッカーのような音を立てている。
「うさちぁん! これ、なんの植物なんだ!?」
「えーっとね、名前はまだないけど……強いて言うなら『情熱パンチ・トマト』かな♪」
「物騒すぎるだろ!」
「大丈夫だよ〜♪ 収穫するときに、ちょっとだけボクシングするだけだからっ!」
「野菜とスパーリングしなきゃいけないのか……」
孝平は、腰に下げた自分の「素材録」をそっと閉じた。 ここにある知識は、もう通用しない。このif版の世界では、愛と情熱(と、うさちぁんの悪ノリ)こそが全ての理なのだ。
ふと横を見ると、咲姫が芽吹いたばかりの双葉に「美味しくなるのです、美味しくなるのです……」と、熱烈なプレッシャー……もとい、愛を注いでいる。
「……まあ、いいか」
なんだかんだ言いながら、楽しそうな彼女たちの姿を見ていると、胸の奥が少しだけ「ほっと」する。
「よし。次は……防具のクラフトだな」
「さすが孝平さん! 理解が早くて助かるのですっ!」
こうして、孝平の畑は「自給自足」から「異種格闘技戦」へと、新たな一歩を踏み出したのだった。
この世界では植物もボクシングをしてきます。




