【if版】幕間 料理好きの乙女と、魔法の「一匙」
【if版】幕間:料理好きの乙女と、魔法の「一匙」
餡子熊王から教わった「塩餡子」の衝撃が冷めやらぬ夕暮れ時。 拠点の焚き火の前では、咲姫が真剣な面持ちで、孝平が削り出した木の器を覗き込んでいた。
「孝平さん、これ……もう少しだけ、熱を加えた方が良いのです?」
彼女の黒髪が、焚き火の光に照らされて朱に染まる。咲姫は料理が好きなようで、孝平が「素材の声」を聞いて集めた食材に興味津々だった。
「そうだね。この実は煮詰めるとコクが出るって、火の精霊が言ってたよ。……あ、でも咲姫、それは入れすぎじゃ……」
「これくらい、たっぷりなのが美味しいのですっ!」
咲姫が手に持っていたのは、特製の甘い花の蜜。ドバドバと注ぎ込もうとする彼女の指先を、孝平は慌てて抑えた。ふにっ、と柔らかい感触が伝わり、二人の間に一瞬、妙な沈黙が流れる。
「……あ、ごめん。でも待って、甘すぎると味がぼやけちゃうから。……ほら、さっきの『あれ』を試してみよう」
孝平は、ぽぷらんが大切そうに抱えていた粗塩の器から、指先でほんのひとつまみ、塩を掬い取った。
「塩、なのです? せっかくの甘い蜜が、しょっぱくなってしまうのでは……」
「騙されたと思って。……はい、あーん」
「えっ……!? あ、あ……」
無意識に差し出された孝平の手(に乗った塩餡子)を前に、咲姫の顔が一気に沸騰した。 傍らで見ていたうさちぁん(分)が、ニヤニヤしながら耳をパタパタさせる。
「あ~! 孝平くん、天然でそれは攻めすぎだよ~♪ 咲姫ちゃんの顔、ドラゴンの火炎放射より熱くなってな~い?」
「ちょ、うさちぁん! 変なこと言わないでくれよ!」
照れ隠しに声を荒らげる孝平。一方、咲姫は耳まで真っ赤にしながらも、吸い寄せられるようにおずおずと口を開いた。
「……ん。…………っ!」
目を見開く咲姫。 塩が甘みを鮮烈に引き立て、小豆の香りが何倍にも膨らんで鼻を抜ける。
「……すごいです。甘いのに、すっきりしていて、心が……溶けていくような味がするのです」
咲姫は潤んだ瞳で孝平を見つめた。
「孝平さん……あなた、凄腕の魔法使いだったのですね。こんな、一粒の石(塩)で味を変えてしまうなんて……」
「いや、ただの塩なんだけど……」
「いいえ! これはきっと、二人の『愛の調律』なのさぁっ!」
「うさちぁん、そのネーミングセンスどうにかならないか!?」
ひげをこれ以上ないほど「ハート型」に曲げたぽぷらんが、その様子を「ゆら~り、ゆら~り」と眺めながら、満足げに喉を鳴らしていた。
うさちぁんの暴走特急+咲姫の天然暴走のコラボはシリアス担当(支倉孝平)をビビらせる。
これこそ【if】の醍醐味だと思います。




