【if版】ep.12 塩の一粒、甘みの深淵
砂浜に腰を下ろした餡子熊王は、持参した大きな木桶から、艶やかに炊き上がった餡子を孝平の差し出した木の器に盛り付けた。
「……食うてみよ。ただの甘味ではないぞ」
孝平が一口運ぼうとすると、傍らで様子を伺っていたぽぷらんが、ひげを「ぴくん!」と跳ねさせ、慌てて孝平の腕を止めた。そのまま、ぽぷらんは焚き火のそばに置いてあった自家製の粗塩の器を、前足で器用に孝平の前へ押し出した。
「え、塩……? これをかけるのか?」
うさちぁん(分)が耳をふわりと揺らして解説する。 「そうそう♪ ぽぷらんがね、『この餡子はすごく力強いから、潮の粒をひとつまみ落とすと、味が化けるよ』って言ってるよ!」
孝平が言われた通り、真っ白な大粒の塩をパラリと餡子に振りかけ、再び口に運ぶ。
「――っ、すごいな。甘さが全然しつこくない。むしろ、小豆の香りが鼻に抜ける感じが強くなった気がする」
「……わかっておるな、小僧」
餡子熊王は満足そうに鼻を鳴らし、自らも塩を振った餡子を豪快に口にした。
「甘みとは、ただ甘いだけでは退屈なもの。そこに相反する『塩気』という楔を打ち込むことで、甘みはより高く、深く、その真価を現すのだ。この島の塩は、なかなか良い『刺し』になるわい」
まさに「塩梅」の妙。職人気質の熊人と、それをひげセンサーで敏感に察知するぽぷらんのこだわりが、孝平の知らない「味の深淵」を教えてくれた。
ぽぷらんのひげは、満足げに「ゆら~り、ゆら~り」と、心地よいリズムを刻んでいた。
餡子熊王は餡子を持つ熊獣人
ぽぷらんはひげをゆらして意思を伝える兎
餡子には塩ですよね~




