ぼくは恋と魔法の真相に気づく
「……なんか、おかしい」
森の中、ぼくはひとり木に背を預けて座っていた。
べらとひろは、まだ言い争ってる。へれなは少し離れた場所で、ノートを抱きしめていた。
ぱっくは、木の上で鼻歌まじりに揺れている。
まるで、全部が舞台で、ぼくらはその中の登場人物みたいだった。
「へれなを見てると、確かにドキドキする。でも、それって……本当にぼくの気持ち?」
胸に手を当ててみる。
心臓は確かに高鳴ってる。でも、それが“恋”なのか、“魔法”なのか――わからなかった。
「ぱっく、ちょっと来い」
「はいはーい。でみくん、どうしました?」
ぱっくは、ふわりと木から降りてきた。重力を無視したような動きに、現実感がどんどん薄れていく。
「おまえ、何をした?」
「え? ラブパウダーをちょっと撒いただけですよ。恋のスパイスです。合法です」
「合法とかじゃなくて……これ、本物の気持ちじゃないだろ」
ぱっくは、少しだけ目を細めて、ぼくを見た。
「……気づいちゃいましたか。さすが主人公」
「やっぱり、魔法のせいなんだな」
「でもね、でみくん。魔法で始まった恋でも、本物になることはあるんですよ?」
その言葉に、ぼくは言葉を詰まらせた。
へれなの笑顔が、頭に浮かんだ。
あの笑顔は、魔法じゃなくて、彼女自身のものだった。
ぼくの名前を呼んだときの声。驚いた顔。照れた頬。全部、魔法じゃない、彼女の感情だった。
「ぼくは……ちゃんと、自分の気持ちで恋をしたい」
ぱっくは、ふっと笑った。
「じゃあ、証明してみせてください。魔法じゃなく、心で恋をするってことを」
そう言って、ぱっくはまた木の上に戻っていった。
まるで、次の展開を楽しみにしている観客のように。
ぼくは、ゆっくりと立ち上がった。
恋の矢印がぐるぐるしていても、魔法が混ざっていても――
自分の気持ちだけは、ちゃんと見つけたい。
この恋が、夢じゃないって証明するために。