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まなつのよのゆめ  作者: しぇいくすぴあ
6/12

好きって、魔法で変わるものですか?

「へれな……?」

自分の口からその名前がこぼれた瞬間、胸の奥がじんわり熱くなった。


まるで初恋の告白みたいに、声が甘く響いたのが自分でもわかった。

視線は、べらを完全に通り過ぎて、森の入り口に立つへれなに釘付けになっていた。


月明かりに照らされた彼女は、まるで物語のヒロインみたいで――

いや、違う。今この瞬間、ぼくの中で本当にヒロインになっていた。


「でみ……?」

へれなが目を見開く。

その声が、少し震えていた。驚きと、戸惑いと、ほんの少しの期待が混ざったような声だった。


「へれな、君って……こんなに綺麗だったっけ?」


言った瞬間、自分でびっくりした。

でも、心は嘘をついてなかった。

彼女の姿が、どうしようもなく眩しく見えたんだ。


「えっ……えええっ!?」


へれなの顔が一気に真っ赤になった。

その反応が、なんだかすごく可愛くて、ぼくの心臓がまた跳ねた。


「でみ、あなた……まさか……!」


べらが、ぼくの腕を掴んで睨みつけてきた。

その目は、完全に“ヒロインからラスボスにジョブチェンジ”していた。


「あなたはわたしのものよ。魔法なんかに惑わされないで!」


「いや、でも……へれなって、なんかこう……運命っていうか……」


「運命はわたしでしょ!? 親が決めたのよ!? 契約書もあるのよ!?」


「契約書って何!?」


もう、頭の中がぐるぐるだった。

でも、心は確かに――へれなに向かっていた。


そのとき、森の奥から聞き慣れた声が響いた。


「おーい、でみー! へれなー! ……って、え? なんでべらがいるの?」


ひろだった。

筋肉と友情に生きる、ぼくの親友。

そして、へれなに片思いしていたはずの男。


でも――

ぱっくのラブパウダーが、ふわりと彼にも降りかかった。


「……べらって、こんなに可愛かったっけ?」


「は?」


べらが、今度はひろを睨む。

でも、ひろは完全に恋に落ちた顔をしていた。

目がキラキラしてる。筋肉もキラキラしてる。なんかもう、眩しい。


「べら、俺と付き合ってくれ!」


「はああああああああ!?!?」


……恋の矢印が、完全にバグった。

でも、なぜか胸が高鳴っていた。

この混乱の中で、ぼくの心だけは、ひとりの女の子に向かっていた。


へれな。

君のことが、気になって仕方ない。

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