【1巻発売記念SS】ゲームの影響
ウェブ版と書籍版では人名などの設定から異なるため、本編と関係あるようなないような、一種のパラレルワールド的に雰囲気をお楽しみください。
ゲームを始めてしばらく経った頃。
「冥、おはよう」
「おはよう」
いつものように家を出て、聖奈と合流した。
「昨日はどこに行ってたの?」
「毒料理で死んでた」
「あれ? 毒は耐性カンストしたんじゃなかったっけ?」
聖奈は不思議そうに首を傾げる。
私は自分の血を混ぜることで毒耐性を貫通する料理を作れたことを説明した。
「えぇえええっ!? それって大発見じゃん!!」
「凄いでしょ」
耐性やステータスを無視する武器や防具はいくつか見つかっているみたいだけど、料理は今のところ未発見らしい。
我ながらよく見つけられたと思う。
話しながら歩いていると、前方に見える歩行者用の信号が赤になった。皆が足を止める中、私はそのまま車道へと足を踏み出そうとする。
「ちょっと! 赤信号だよ!」
でも、聖奈が私の腕を掴んで私を止めた。
「ん? だから?」
「止まらないと車に轢かれちゃうよ!!」
「……あっ、そっか」
一瞬、轢かれたら最高の死を迎えられたのに、と思ってムッとする。
でも、聖奈に指摘されてようやくここが現実だったことを思い出した。
ゲーム内で死に過ぎたせいで現実でもそっちに引っ張られてしまったみたい。
現実で死んだらもう二度と戻ってこれない。
「ちょっとしっかりしてよ」
「ごめん。ここは現実、ここは現実……」
ちゃんと頭を切り替えないと。
私はブンブンと頭を振ってゲームの記憶を振り払い、自分に言い聞かせながら歩きだす。
「ちょっと冥!! 今度は何するつもり!!」
「飛び降りた方が早いかなって」
「だから、ここはゲームじゃないって言ってるでしょ!!」
「そうだったね」
でも、学校以外の時間のほとんどをゲームに費やしている上に、ゲーム内の時間は現実の何倍もの速度で時間が進んでいる。
そのため、実際にはゲーム内で過ごしてる時間の比重がかなり増えている。
そのせいか、かなり思考がゲームに染まっていて、何度も危ない目に遭う羽目になった。
気をつけていても無意識にやってしまう。
「でも、おかしいなぁ。ここまで影響は出ないはずなんだけど……」
聖奈が言うように、体への直接のフィードバックがないように、本来精神面でもゲームに影響を受けすぎないように配慮されているはず。
それにも関わらず、私は精神面でも多大な影響を受けていた。
「やっぱり、リアリティ設定を最大値にして、死にまくってるせいかなぁ……」
リアリティ設定を最大値にしてるプレイヤーはほとんどおらず、その中でも毎日死に続けている人はまずいない。
体へのフィードバックも解消しないところを見ると、聖奈の言う通りなのかも。
とはいえ、やれることはゲームからしばらく距離を置いたり、意識したりすることくらい。
「これからもっと気をつけてよね」
「分かった」
ゲームを辞める気はないので、もっと強く現実を意識するしかない。
その後も際どいシーンが何度もあったけど、聖奈のおかげでどうにか無事に学校につくことができた。
そして、体育の時間。
今日の授業はバスケットボールだ。
「屍々土さん!!」
私に向かって勢いよくパスが飛んでくる。
あぁ、あの硬くて大きなボールが頭に当たったら、気持ちよく死ねるかも……。
気づいたら、私はそのままボールを受け取らずに顔面で受けていた。
「ぷぎゃっ!?」
その瞬間、頭の上に星が飛んで、視界が霞む。
うふふっ、気持ち…いい……。
「めぇええええええい!!」
意識を失う直前、心配そうな聖奈の顔が見えた気がした。
「んん……ここは?」
気づくと、私は保健室のベッドの上。
「あっ、目を覚ましたね!? この大馬鹿!! 何度も言ってるけど、ここはゲームじゃないんだからね!! しっかりして!!」
目を覚ますなり、私は涙目の聖奈の説教を小一時間ほど受ける羽目になった。
このままだと、いつかどこかで本当にやらかして本当に死んでしまいそう。
慣れるまで少し時間がかかりそうだけど、聖奈に心配かけないように、ちゃんとゲームと現実の区別をつけるように気をつけよう。
私は心の中で誓った。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます。
タイトルどおり、1月15日にGAノベル様より「死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する」の第1巻が発売されました。
ウェブ版の内容を大幅に改稿し、さらに内容が濃くなっていると思います。
ぜひお手に取っていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!




