第039話 苦渋の決断
「山岸部長!! 苦情が止まりません!!」
「まさかこんなことになるとはな……」
それもそのはず。
プレイヤー同士の熱いバトルを売りにするはずのバトルロイヤルが、負けイベントボス級プレイヤー対一般プレイヤーのレイドバトルになってしまったのだから。
今回の原因は、冥の毒や耐性によるところが大きい。しかし、他にも原因がある。
それは『死の支配者』による死亡回数に応じた能力強化と、『不可能を乗り越えし者』と『孤高の戦神』によって能力がとんでもなく引き上げられていたことだ。
イベント中、デフォルト設定で400万回以上死んだことになっていた彼女の内部ステータスは、レベルが1まで落ちていたにもかかわらず相当なものになっていた。
そして、レベルが1ということは他のプレイヤーは自分より格上になる。そこで『不可能を乗り越えし者』が発動し、能力が強化。その上、このイベントは一人で戦うものなので、『孤高の戦神』が発動してさらに能力が強化。
そのせいで普通の攻撃や魔法を一切寄せ付けず、防御力を無視した攻撃でも多すぎるライフを削り切れずに倒せなかったわけだ。
当然、一般プレイヤーたちからの非難は避けられない。現に今、苦情が殺到している。
内容は、『あんなの公平じゃない』『チート使ってんだろ!!』『反則プレイヤーは今すぐアカウント停止しろ』『弱体化しろ』などといったところだ。
今も続々とメッセージが送られ続けている。その中に冥の怨念メッセージも紛れ込んでいたが、埋もれて流れていった。
「いかがしますか?」
「くっ…………弱体化するしかないだろう……」
ここまでことが大きくなってはユーザーの意見を無視するのは難しい。
対応をしなければ、SNSで拡散されて叩かれ、大炎上するのは目に見えている。そうなったら、サービス停止に追い込まれる可能性がある。
それだけは避けなければならない。
「……いいんですか?」
部下からの質問に、山岸はドンとデスクを叩いて答えた。
「良いわけあるか!! これはそもそも俺たちの想定が甘かったのが原因だ。それに、メイはたまたま陽光耐性を見つけたことで喜んだはずだ、死ねばもっと強くなれると。そして、辛い思いをしながらいろんな耐性や称号を手に入れるために沢山死んだに違いない!! そうやって必死に努力して得た力を奪うなんて本来ならできるわけがあるか!! ……しかし、今回はそうも言ってられないのも事実。メイに頭を下げるほかないだろう。私が直接連絡する」
「……分かりました」
山岸としてもメイの成果を奪うようなことをしたくはなかったが、今後もサービスを続けていくのならゲームバランスを調整するために弱体化するほかなかった。
ただ、普通にメッセージを送ったのでは誠意が足りない。そこで、山岸が事情を説明し、しっかりと謝罪と補填も行った上で、弱体化させてもらうことに決めた。
山岸は悔しさで唇を噛む。
やむを得ない苦渋の決断だった。
◆ ◆ ◆
【初イベント】バトルロイヤルについて語るスレ 5【楽しみ】
1.名無しのプレイヤー
日本初のフルダイブ型のVRMMORPG「インフィニット・テイルズ・オンライン」通称、ITOの初めてのイベント、バトルロイヤルについて語ろう。
自由に書き込んでください。
ただし、最低限のルールは守りましょう。
荒らしは運営に狩られます。
最初のスレ:https://**********
前スレ :https://**********
23.名無しのプレイヤー
今回のバトルロイヤル
完全に負け確定レイドボスイベントだったな
24.名無しのプレイヤー
マジそれ
あんなん勝てるわけねぇだろ
25.名無しのプレイヤー
ホントにな
物理も魔法も効かない上に、毒をまき散らすとかどんな魔王だよ
26.名無しのプレイヤー
物理も魔法も強化されて反射されるしなぁ
あれは悪夢だった
27.名無しのプレイヤー
どう考えてもチートだよなぁ
28.名無しのプレイヤー
このゲームでチートが許されるかどうか分からないけどな
29.名無しのプレイヤー
濃厚なのは攻略組も知らない隠し要素を見つけたことだろう
30.名無しのプレイヤー
あぁ、それはあり得るか
31.名無しのプレイヤー
でも、そのくらいであんなに強くなるか?
32.名無しのプレイヤー
それは確かにその通りだな
運よく、何個も見つけた可能性もあるかもしれないが
33.名無しのプレイヤー
ベータテスター組も相当探してたと思うんだけどなぁ
それでも見つかっていない隠し要素を見つけたとしたら、ありえるかぁ
34.名無しのプレイヤー
まぁ、苦情いれてるからナーフされるだろ
35.名無しのプレイヤー
そうだな
これでナーフされなかった萎える
36.名無しのプレイヤー
ナーフされなかったら大炎上間違いなしだし、やるしかないだろ
37.名無しのプレイヤー
だよな
運営も所詮一企業だし、日本中から大バッシングされたら受け入れるほかない
38.名無しのプレイヤー
あのメイってキャラクターには気の毒だけどな
本人は悪くないのに弱体化してしまうし
39.名無しのプレイヤー
まぁ、しゃーねーだろ
流石にあのままにはできない
40.名無しのプレイヤー
まぁな
41.名無しのプレイヤー
でもさ、本人は意外にナーフされて喜ぶかもしれないぜ?
42.名無しのプレイヤー
それはないだろ
43.名無しのプレイヤー
いやぁ、あいつと実際に戦ったんだけど
殺してくれって言ってたんだよな
44.名無しのプレイヤー
それは魔王ムーブじゃないのか?
45.名無しのプレイヤー
そうだそうだ
どう考えても私を殺してみろって言ってるだろ
46.名無しのプレイヤー
お前らじゃどうせ倒せないだろうけどな
みたいにしか受け取れねぇよ
47.名無しのプレイヤー
でも、仮に本心だったとしたら?
48.名無しのプレイヤー
ないない
それはない
49.名無しのプレイヤー
もし仮にそんなプレイヤーなら喜ぶだろうな
死ねるようになるわけだし
50.名無しのプレイヤー
流石にそれはないだろ
51.名無しのプレイヤー
本当にない?
52.名無しのプレイヤー
ないない
53.名無しのプレイヤー
まぁ、ないかぁ
…
…
…
◆ ◆ ◆
イベント終了後、私の許に一通のメッセージが届く。
「うひょー!!」
内容を見た私は喜びのあまり飛び上がった。
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