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おっさん、グリーンドラゴンを倒す

「テルメア、お前ならグリーンドラゴンをどう倒す?」


 俺はグリーンドラゴンを追いながらテルメアに聞く。

 本来、十人がかりで倒すドラゴンも単独で魔王を暗殺したテルメアならひとりで倒せるのだろうがどう倒すのかは気になる。


「え、そうですねー。普通に跳躍して真っ二つかな」


 相変わらずめちゃくちゃだった。

 さすが例外処理の等級ブラックだ。


 何も参考にならない。


「……そこまでとんでもないと、逆に真似するやつはいないかもしれんな」


 そっかなーなんて顔をするな。


「でも、先輩も単独で倒せるんですよね、ドラゴン。先輩の方がとんでもないんじゃないんですか?」


 俺の場合は、ぱっと見「できそう」に見えるのが問題なんだよ。

 ちゃんとできるかどうかは別で、失敗すると死ぬ。


 だから配信では見せたくなかった。


「おお、なんか玄人って感じがしていいですね。気になります! 武器はどうします? わたしの剣使いますか?」


「いや、武器は使わない」


 グリーンドラゴンの鱗は固く、生半可な武器を当てても刃こぼれするだけだ。その剣なら大丈夫なのかもしれないが俺は剣士ではないからテルメアほど使いこなせない。


「え、武器なしでどうやってダメージ与えるんですか……?」


「魔法だ」

 

「そっか撃ち落とすんですね!」


 いや……説明するとややこしいんだよな。

 おそらく見ているだけだと、どこで魔法を使っているかわからないだろう。


「……見ればわかる」


 俺は特殊な形にした手を口に当てて息を吹き込み、高音を出す。

 ドラゴンがこちらに感づいて、進路を変えてきた。


「それは?」

「竜笛だ。こいつでドラゴンをおびき寄せる」


 等級プラチナの指揮官として冒険者を指揮していたころは、よくこうしてドラゴンを攻撃地点に誘導したものだ。


 ちなみになぜこれでドラゴンが寄ってくるのかは誰もわからない。

 せっかく思考盗聴魔法を手に入れたし、ドラゴンが何考えてるか確認してみるか。


 いや、さすがに遠いな。パスが通らん。


 太陽を背にしたドラゴンがこちらを見下ろし、一気に急降下してきた。

 テルメアがそっと距離をとる。


 俺が武器なしでどうやってドラゴンと戦うのか気になるのだろう。


 猛禽のようにかぎ爪を向けて俺に殺到するグリーンドラゴンを死んだような目で見つめながら、慣れた動きで前進する。


 俺はかぎ爪をすり抜け、グリーンドラゴンの尻尾を掴んで。

 ドラゴンを地面に叩きつけた。


「ギャオウオーーーーーーーー!?」


 まぁ、ようは以前アリアからメイスを盗ったのと同じ要領だ。

 武器を当てると武器が壊れるなら、ドラゴンを武器にすればいい。


「ぎゃうおっ!?」


 俺はさらにドラゴンを引きずり上げ、地面に叩きつける。

 いや、この場合はドラゴンを武器にしているというより大地を武器にしているというべきか?


 どっちでもいいな。


「ギャウオアーーーーーーーーーーー!?」


 後は執拗に地面にぶち当て続ければ、グリーンドラゴンと言えどそのうち死ぬ。

 竜種は何度も地面に激突する経験がない、受け身が苦手なんだ。

 

 ズドンズガンドン、バァン、ズガン、ドガッ。ドドッ、ドォン。ズガン、ドガン、ズドンズガンドン、バァン!!


「め、めちゃくちゃじゃないですかーーーーーーー!!」


 俺がグリーンドラゴンを倒すと、テルメアがそんなことを叫ぶ。

 

「え、そうか?」

「どう考えてもおかしいでしょ。なんで自分の体長の何倍もあるドラゴンを投げられるんですか!! 体重差は? 魔法は? どこで魔法使ってました?」


 やっぱり見ただけじゃわからないよな。

 

 空を飛ぶ生物。たとえば鳥類などは飛行のために極限まで身体を軽くしているが、ドラゴンの場合はその巨体を重力魔法で一時的に軽くして飛行している。


 ドラゴンの攻撃が重く感じるのは、あいつらが攻撃時に重力魔法を解除しているからだ。


「言われてみれば、ジャンプ斬りした時に妙に軽いなーってことはありましたね」


 だからドラゴンに触れる直前に重力魔法の使用権限を盗んで、俺が投げられる程度に軽くした。ついでに地面に直撃する前に重さを戻してダメージを大きくしている。


 相手が魔法使いならハッキング防止にプロテクトをかけるのだろうが、ドラゴンのプロテクトはそこまで複雑ではない。そもそも、あいつらにとって重力魔法は呼吸のようなもので、我々のように考えて使うものではないのだろう。


 そうでないとあの巨体を維持できないからな。

 

「魔法のハッキングは相手に触れながら魔法の奪い合いをすることになるから、そんなことするより殴った方が早いって言われてるのに。こんな使い方があったんだ」


「安易に真似するなよ。一瞬で制御を奪えなければひき肉にされるだけだからな」


「そんなことができるのはナナシさんだけです!!」


 やれやれと俺は肩をすくめながら、グリーンドラゴンを放置する。


 こいつを倒した事がばれると「どうやって倒したんだ」と聞かれるからな、金はもう十分にあるし。ギルドに報告する必要もないか。


 アッシュウッドの森を抜ける。

 そろそろベリア領だ。



称号:称号:追放されしもの(アハト)EX【装備中】

インフルエンサーA、魔力逸脱者(測定不能)

スキル:生存自活チュラル・ビースト・ワンEX、チャーム(魅了魔法)、光のカリスマB++、身体能力強化Aロスト魔法制御強化Aロスト

現在確認できている盗品

オーク語(低)、怪力B、見切りB+、掘削魔法C、解毒(古式)、ファイアアロー(槍)、意思伝達魔法(妖精)思考盗聴魔法(改造)


NEW!!


奪取SSS


盗みの成功率を上昇させるスキル。

複合スキル生存自活チュラル・ビースト・ワンに格納されているスキルのひとつ。


SSSランクともなればその効果は相手の持ち物はおろか鍵開けにスキル、魔法にも適用され、「思考の盗聴」「魔法の使用権限の奪取」「心の奪取」などの盗みにも強力なプラス補正がかかり、盗みに必要なスキルか魔法が高確率で発現する。


今回のナナシはまず「ドラゴンを奪取」しようとしており、その過程で「身体能力の強化」「魔法制御強化」が発現、最後に「魔法の使用権限の奪取」を行った。


盗みの過程で発現したスキルや魔法はロストすることも、残ることもある。ナナシのステータス画面が不安定なのはそのため。



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