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勿忘草〜記憶の扉〜



説明欄や詳細文などに『作品タイトル・台本URL・作者名』の明記をお願い致します。


★各作品の著作権は放棄しておりません。無断転載や自作発言等、著作権を侵害する行為はお止め下さい。もちろん無断での改編や再配布も禁止です。


★あくまで趣味の範囲での活動や放送、金銭の発生しないツイキャスなど、各種配信サイトでの使用は基本的に歓迎しますが、金銭が発生するものはNGです。


★ツイッターのDM等でお知らせ頂けますとツイキャスなら聴きに行ける可能性があるので、よかったら気軽にご連絡下さい!


★アドリブ等はストーリーを捻じ曲げない、


雰囲気を壊さない程度であればOKです


男女の入れ替えはおやめください


柊純ひいらぎじゅん♂17歳

運動部系で熱が入るととことんつっぱしるタイプ

自分より他人の為に情熱を注ぐ性格




神上陽奈かみじょうひな♀17歳

普段はおっとりとしている、自分の芯をもっている。




真壁健まかべけん♂17歳

純の親友

フレンドリーな性格


男1


神上桂かみじょうかつら38歳♂

陽奈の父親

母親は他界しており、男手一人で陽奈を育てている

普段は温厚で優しい

神上サキを今も愛し続けている。



神上サキ♀38歳


陽奈の母親

既に他界している。

娘と似ていておっとりな性格

年より若め


Nナレーション♂♀


M心の声



柊潤:


神上陽奈:


真壁建:


神上桂、男:


神上サキ:


ナレーション:



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


N「ある朝の大通り

そこに登校する少年

それを影で見つめる少女の姿があった」


潤「えっと…道はこれで合ってるかな…

あれ?…おばあちゃん!どうしたんですか?

あぁ!道を渡りたいんですか?いいですよ!

一緒に行きましょう!」


陽奈「あれは…同じ高校の人かな…

この時間だと割とギリギリになるのに…

あんな人…今時珍しいなあ…」


N「ここは少し田舎にある東山高校2年の教室

時期は5月…

この日、偶然にも同じ日に、二人の転校生がやってた。」


純「はじめまして!

隣の県にある北山高校から来ました!

柊潤って言います!

卒業までよろしくお願いします!」


陽奈「はじめまして!

隣の県にある、西山高校から来ました!

神上陽奈です!

よろしくお願いします。」


潤M「同じ日に転校生?

珍しいこともあるもんだな…」


陽奈M「あれ…この人…

朝の道で見かけた人?

同じ高校で…しかも同じ転校生…」















潤「はじめまして!

俺の名前は柊潤!

潤って呼んでくれ!」


陽奈「ホームルームで聞いてたよ。

私は陽奈って呼んで」


潤「まぁ…それもそっか!

陽奈だね!よろしく!」


健「転校生同士でもう仲良くなってるんだな!」


潤「えっと…」


健「あぁ!悪い悪い!

俺の名前は真壁健!

健って呼んでくれ!」


潤「よろしく!

俺も潤でいいよ!」


陽奈「私も陽奈でいいよ。」


健「おっと…もう授業始まるな!

また放課後ゆっくり喋ろうぜ!」


N「授業は終わり放課後

3人は帰りながら会話をしていた。」


健「…それにしてもほんと珍しいこともあるな!

同じ日に二人も転校生が来るなんてなぁ…」


潤「俺もびっくりだよ!」


陽奈「私もだよ!

こんな偶然ってあるんだねぇ」


健「でもこんな時期になんで転校なんてしてきたんだ?」


潤「俺は父さんの転勤で!」


陽奈「えっと…私は…」


健「ん?」


陽奈「私は…私も父の転勤なの!」


健「そっかぁ!

二人ともそこまで偶然とはなぁ…

ほんと不思議なこともあるもんだな…」


潤「ホントだな!

まぁ正直少し心細かったし

同じ転校生がいて…

健みたいな優しいクラスメイトもいる。

いいクラスで良かったよ。」


健「何言ってんだよ!

照れるんじゃんかよ!」


陽奈「私は心細いとかはないかなぁ…

でも…まさかこんな賑やかになるとは思わなかったなぁ…」


潤「ははっ…

確かに…俺も思ってなかった。」


健「そういえば二人共部活ってなにかやるのか?」 


潤「俺は特に決めてないな!

運動は得意だから色々な部活の助っ人やるのもいいかもなぁ」


健「じゃあ明日の体育はちょうど野球だし…

いいとこ見せてもらおうかな!」


潤「任せとけ!」


健「陽奈はどうするんだ?」


陽奈「私は帰宅部かなぁ

学校のあと色々あるし…」


健「家の用事とかか?」


陽奈「まぁ…そんなとこ!」


健「そっか…陽奈も忙しいんだな

頑張れよ!

じゃあ俺…こっちだから!

また明日な!」


潤「おう!また明日!」


陽奈「じゃあね!」


潤「ほんと健って…いい奴だよな…」


陽奈「ほんとだね…健

じゃあ…私もこっちだから!」


潤「うん!じゃあね!」 


N「潤は、次の日の野球大会で大活躍。

この日を境に…運動部から助っ人によばれるようになって…

そして帰りは…三人でよく帰っていた。

そんな1週間後の放課後…健が案内してくれた秘密の場所。学校の屋上である」


健「どうだ?

俺の秘密の場所!」


潤「秘密って…屋上が?」


健「この屋上はな…普段立ち入り禁止なんだ!」


陽奈「大丈夫なの?」


健「おう!そこは問題ないんだ!

カギを持ってる先生と仲良くてさ!

特別に許可得たんだ!」


潤「まぁ…いいんじゃないか?

平気って言うなら!」


陽奈「潤は少し優しすぎだよね。」


潤「ハハッ…

まぁ…よく言われるよ。」


健「そしてこれがお前らに見せたい光景だ!」


陽奈「うわぁ!綺麗…」


潤「こんなに綺麗に見える夕日…はじめてだ。」


健「だろ?俺だけの場所だったんだけどな!

なんかお前らには見せたくなった!」


潤「いいのか?」


健「まぁ…気分ってやつだ!

だから俺達三人の秘密の場所だ!

言うなよ?潤!陽奈!」


陽奈「言わないよ。」


潤「もちろん俺も言わねぇよ!」


N「三人の秘密の場所。

そんな出来事が…三人の絆を強くしたのかもしれない。

そして、それから1ヶ月後。

ある出来事がおきた。」


陽奈「ふぅ…少し遅くなっちゃった…

ここ近道だけど薄暗くて嫌だなぁ」


男「よぅ…こんなところで一人で何してるの?」


陽奈「な…なんですか?」


男「ちょっと遊ぼうぜ?」


陽奈「いや!?…やめてください!」


男1「いいじゃんかよ…」


陽奈「…離して!?」


潤「おい!何してんだ!」


男「あぁ?」


陽奈「あなた…なんでここに!?」


潤「たまたま遠くから陽奈を見かけて声掛けようとしたら男に絡まれてるみたいだから来た!」


陽奈「はぁ?…まだ知り合って間もないのになんで!?」


潤「知らねぇよ!気付いたら勝手に体が動いてた!

ただそれだけだ!

それに俺にとっては大事な友達だ!」


陽奈「潤…」


男1「勝手に出てきてなにしてんだてめぇ!」


潤「ぐふっ!?」


男1「邪魔してんじゃねえ……よっ!」


潤「ガハッ!?…ごほっ!…ごほごほっ…」


男「チっ…気分が変わったわ…」


N「潤を殴り飛ばした男は…

そのまま帰って行った…

そこには、心配しながらも、少し怒りながら近づく陽奈の姿があった」


陽奈「あなたバカなの?

別にスルーすればいいじゃない?

弱いくせに!」


潤「できねぇよ…

できるわけねえだろ…

俺にとっては大事な友達だ。」


陽奈「全く…

でもありがと…助かった。」


潤「へへっ…おう!
















N「そして次の日…変わった様子はなく日々は過ぎていった…

潤はこのとき…自分の中で友達という言葉に…

普通とは違う何かを感じていた。

そして健を含めた三人は、いつもと変わらない日々を過ごしていた。

それから1ヶ月後。夏休みに入る少し前…

あの屋上で…陽奈と潤が二人でいた。」


陽奈「どうしたの?

屋上なんかに呼び出して…

健もいないし…」


潤「今日は陽奈に話があるんだ。」


陽奈「なに?私帰らないとなんだよね。」


潤「ごめん!

すぐ済むよ!」


陽奈「まぁいいよ!」


潤「実は俺…陽奈のことが好きになった!」


陽奈「えっ…」


潤「なんかわからないんだけど…

陽奈が男に絡まれたのを見たあと…

あれからすげぇ複雑な気持ちになった。

色々考えた…

色々考えてみたら…

俺…陽奈のことばかり考えてた!

好きなんだ!

付き合ってくれ!」


陽奈「……ごめん……

付き合えない…」


潤「えっ…他に好きな人がいるとかか?



陽奈「違う…

そうじゃない…」


潤「俺が頼りないから…」


陽奈「そうでもない…」


潤「じゃあなんで!?」


陽奈「とにかく無理なの!!

ごめんなさい…」


潤「ちょっと!?陽奈!



N「走り去る陽奈

それを止めきれない潤

それから二人は…喋りはするが、

少し距離があくようになった。

そして夏休みに入る前の終業式。

ある噂が話題になっていた。」


健「もうすぐ夏休みかぁ…」


潤「うん!そうだな!」


健「そういえば知ってるか?

噂があるんだよ」


潤「噂?

おれそうゆうのには疎くてさ…」


健「なんでも東山高校の神隠しだってさ…」


潤「東山高校の神隠し?」


健「あぁ…

ここ1ヶ月ぐらいで三人も行方不明者が出てるらしい…

しかもこの学校から。

1年生が二人と教師が一人…

先生たちは隠しちゃいるが…そんな広くない町だ。

噂なんてそのうち広がるもんさ。」


潤「そんなもんか?

まぁ…生徒だけなら家出とかもあり得るけどなぁ…」


健「そこでだ潤くん!」


潤「な…なんだよ急に…」


健「俺らでちょっと調べてみないか?」


潤「はぁ?…俺はそうゆうの興味ないからなぁ…」


健「ほら!

潤って引っ越してきてから部活助っ人ばっかでろくに町の中も見てないしさ!

夏休みはのんびりするからって部活断ったんだろう?

じゃあいいだろ?」


潤「まぁいいけどさ…」


陽奈「おはよう!」


健「おう!おはよう!」


潤「おはよう!」


陽奈「おはよう。」


健「陽奈もどうだ?

潤を町案内ついでに今噂の神隠しを調べようと思うんだ!」



陽奈「えっ!?

神隠しを…?」


潤「陽奈も興味あるのか?」


陽奈「だめ…」


健「えっ?」


陽奈「だめ!

神隠しなんて危険なものに普通の人が関わっちゃいけない!

あなた達はどれだけ危ないかをわかってない!」


健「ど…どうしたんだよ急に…」


潤「大丈夫か?」


陽奈「あなたたちは何もわかってない…

神隠しに手を出すことはやめて…」


潤「そ…そんなただの都市伝説なんかになに本気になってるんだよ…」


陽奈「何もわかってない!!」


潤「お…おい待てよ!」


健「行っちまった…なんだったんだろうな…」


潤「行こうぜ健…」


健「行くってどこにだよ?」


潤「その神隠しを調べにさ…」


健「いいのか潤?」


潤「いや…なんか気になるんだよ…

陽奈のあの感じが…」


健「確かに…

それは俺も気になるけど…

まぁ潤がいいならいいけど…」


潤「もしかしたら陽奈は神隠しの秘密を知ってて誰かに脅されてたりするとかだったら…

助けてやりたい…」


健「あぁそうだな…」


潤「それで?どうやって調べるんだ?」


健「色々聞いてまわってみるわ」


潤「わかった。任せるよ」


潤M「でも…陽奈があんなに取り乱すなんて…

神隠しって一体なんだって言うんだ…」















N「ここは小さな町に位置する神上神社…

神上陽奈はこの神社の一人娘である」


陽奈「ただいま…」


桂「おかえり陽奈!

学校はどうだ?」


陽奈「まぁまぁかな…」


桂「ん?…なにかあったか?」


陽奈「えっ!?…わかる?」


桂「何年お前の父親やってると思ってるんだ?」


陽奈「父さんには叶わないな…」


桂「どうした?言ってみろ。」


陽奈「あのね…今起きてる神隠しを…

調べようって言い出した友達がいてね…

危険だからやめて!って怒って言って逃げてきちゃった…」


桂「陽奈がか?

フフ…珍しいな。

お前が神隠しに対して怒るなんて…

今まで神隠しの話題が出てもすんなりと流してきたお前が…友達のためにか…」


陽奈「なんだろう…今までにない感情…」


桂「陽奈にとって…よほどその友達が大事なんだろうな」


陽奈「そうなのかな?まだ出会って間もないのに…」


桂「まだまだ子供だな陽奈は…」


陽奈「もう…子供扱いしないでよ!」


桂「おれにとってはずっと子供だよ…」


陽奈「も…もう!」


桂「ずっと孤独を貫き…

孤独を選び続けた陽奈にとって…

今まで出会ったことのない人間なんだろうな…」


陽奈「…私は孤独でも…お父さんがいれば構わないと思ってた…

それは今も変わらないよ。」


桂「もしかして…それは男の子か?」


陽奈「えっ?そうだけど…」


桂「もしかして…その子のこと好きになったのか?」


陽奈「ち…違うよ!そんなんじゃないよ!

そんなんじゃないけど…」


桂「…けど?」


陽奈「大切なのは…多分間違いないよ…」


桂「そうか…」


陽奈「でも…でも私は!…人を好きになる資格も…友達を作る資格も…ないんだよ…」


桂「そんな人はいないよ。

だから素直に生きなさい?

お前が気にやむことではないんだから…」


陽奈「わかってる。

でも、私は…中学に入るときに決めたんだから…」


桂「それに…お前にすべてを任せてしまった父さんの責任もある。」


陽奈「それは違うよ!…私が決めたことだから…」


桂「ありがとう…父さんは陽奈に救われてるよ…」


陽奈「父さん…」


桂「よし!この話は終わりだ!

ご飯の準備をしようか!」


陽奈「うん!そうしよっ!」


















N「その頃…健と潤で、神隠しについて話し合いをしていた…」


潤「それで?どうするんだ?」


健「色々聞いてみたんだけどさ…

一つ…わかったことがある…」


潤「わかったこと?」


健「あぁ…行方不明になった生徒の一人の兄貴に話聞いたんだけどな…

この町に古くからある…神上神社ってとこなんだ。」


潤「そんな古い神社があるのか…

ん?神上神社?」


健「そう!神上だ!どこかで聞いたことないか?」


潤「神上…神上……あっ!神上陽奈!」


健「そのとおり!」


潤「陽奈が関係してる神社…」


健「その神上神社にお参りに行くって言ってから姿を消したらしいんだ…」


潤「…まさか陽奈が関わってるんなんてこと言うんじゃないだろうな?」


健「さすがにそれはないとおもうけど…

調べてみないとわかんねえよな…」


潤「じゃあ行くのか?その神社に…」


健「あぁ…行くしかないだろ?」


潤「確かに…俺も気にはなるからね…」


N「そして…夏休みに入り3日後…

二人は神上神社の前で待ち合わせをしていた。」


潤「ここが神上神社?」


健「あぁ…ちょっと古いけど、

この町に古くからある唯一の神社だ…

なにを祀ってるかは知らないけどな…」


潤「ふぅん…唯一の神社か…」


健「いくか…」


潤「あぁ…」


健「あれ?ってかあんなところに巫女さんがいるじゃんか!

ちょっと話聞いてみようぜ!


潤「ほんと健のその性格羨ましいぜ…」


健「へへ…俺は一生懸命生きてる奴みんなが大好きだからな!

そいつら全員と友達になりたいだけだ!」


潤「ふふ…そうか…」


健「あの…そこの巫女さん!ちょっといいですか」


陽奈「はい!…って…健!?

それに…潤も…なんで…」


健「言ったろ?神隠しを調べるんだって…」


潤「…陽奈…」


陽奈「まだそんなこと言ってるの?

関わっちゃだめだってあれほど!?」


桂「陽奈!」


陽奈「えっ!?……お父さん……」


桂「陽奈の友達かい?」


潤「陽奈のお父さん?」


桂「どうも。陽奈の父の神上桂です…よろしく。」


潤「はじめまして!陽奈さんの同級生の柊です!」


健「同じく…同級生の真壁健です!」


陽奈「あの……お父さん…」


桂「大丈夫…入ってもらいなさい」


陽奈「わかった。

ふぅ…さっきはごめん。

どうぞ!せっかくだからお茶でも!」


健「マジ?じゃあお言葉に甘えるとするかな

…なぁ潤!」


潤「お…おう!」













桂「ほら…足崩して!

固くならなくてもいいよ。」


健「あっ!じゃあ…失礼して…

すいません急に押しかけちゃって!」



桂「全然いいよ。挨拶が遅れてしまったね。

僕の名前は神上桂。

見ての通り陽奈の父親だ。

気軽に桂とよんでほしい!」



健「はい!そう呼ばせていただきますね!

桂さん!」



潤「じゃあ俺も!」



桂「あぁ!そうしてくれ!

陽奈の友達らしいからね…

そうだろ陽奈?」


陽奈「そうだね!

私の大切な友達!」


潤「なんか照れるな…ハハハッ…」



健「あっ…ちょっと飲み物頂いても…?」



桂「あぁ…すまないね。

陽奈…お茶を出してあげて。」



陽奈「は〜い!

紅茶と緑茶どっちがいい?」



健「じゃあ紅茶で!」



陽奈「潤は?」



潤「じゃあ緑茶で…」



陽奈「わかった!

少し待っててね。」



桂「じゃあ僕もちょっとトイレに…

ゆっくりしていってね!」



健「ありがとうございます!」



N「そう言い残し…陽奈は台所のほうへとかけていき…

桂はトイレへと向かった」



潤「全く…建は図々しいというかなんというか…」



健「図々しいってなんだよ!ひどいなぁ…でも…そうじゃねえよ…」



潤「そうじゃないって?」



健「おまえ…まだ気にしてるんだろう?

学校のこと、さっきのこと。」



潤「…うん…

気にはなってる。

明るく接してくれてるとは思うけど…

俺って気にし過ぎなのかな?」



健「まぁ…潤の場合は…気にしすぎってよりかは優しすぎ…かな?」



潤「自分じゃよくわからないな…」



健「まぁそのうちわかるさ!」



潤「だといいね。」



桂「いやぁ…おまたせ!よいしょっと…」



健「いえいえ!大丈夫ですよ!」



桂「……う〜ん……」



潤「どうしました?俺の顔に何かついてます?」



桂「いや…多分そうかなって思ってね…

君が潤くんだろ?」



潤「えっ!?…まぁ…そうですけど…」



桂「…ときに柊潤くん…だったかな?」



潤「は…はい!」



桂「君は…陽奈のことが好きか?」



潤「えっ!?…いや…そんな急に…」



桂「どうなんだ?」



潤「えっと…」



健「…潤?」



潤「す…好きです!陽奈さんのこと…」



健「おい!?いきなりそんな…」



桂「そっか…好きか…」



潤「はい…」



桂「じゃあもし、もし陽奈が誰にも言えない秘密を抱えていたとして、

君はどうする?」



潤「陽奈が…ですか?」



桂「ただのもしもの話だよ」



潤「そうですね…もしそうなったら…一緒に背負います

こんなに人を好きになったのは、はじめてなんです!」



健「おぉ…言うねぇ!」



潤「茶化すなよ…」



桂「ハッハッハ!

父親を前に言うじゃないか!」



潤「す…すいません!

嘘つけない性格なもので…」



桂「いやいや…いいじゃないか!

気に入ったよ!これからも陽奈をよろしくな…」



潤「は…はい!」



陽奈「お待たせ!

紅茶がすぐに見当たらなくて…」



桂「そうかそうか!

おかげで色々話せたよ…」



陽奈「何話したの?」



桂「それは…男同士の秘密だ!

なっ!潤くん!建くん!」



健「そうっすね!秘密っすね!」



潤「あっはは…ですね。」



陽奈「なにそれぇ!

ひどいなぁ…」



潤「あっ…ちょっとトイレ借りてもいい?」



陽奈「あぁ!部屋を出て右にまっすぐ行ったら着くよ!

ちょっと遠いかもしれないけど…」



潤「大丈夫!」



N「潤は部屋を出て…トイレへと向かっていた。

すると…少し気になる、変わった部屋を見かけた」



潤「えっと…部屋を出てっと…

ふふ…それにしても…また陽奈と仲良く喋れた…

これも陽奈のお父さんのおかげかな…

ん?部屋…変わった部屋だなぁ…

なにもない部屋の奥に…写真立て?

女性の写真か…綺麗な人だなぁ。

おっと…勝手に部屋に入るのはまずいな。

とりあえずトイレにっと…

うぅ…なんだ…急に目眩が…うぁ…目の前が真っ暗に…」












潤「あれ…俺寝てた?」



サキ「こんにちは。」



潤「えっ…こ…こんにちは。」



サキ「久しぶりに人と話すのは緊張しますね。」



潤「あなたは…どこかで見たような…あっ!!部屋の写真の…」



サキ「写真?…もしかしてあなたは陽奈のお知り合い?」



潤「は…はい!

俺は柊潤!陽奈さんの同級生です!

えっと…失礼ですがあなたは?」



サキ「神上サキ…陽奈の母です。」



潤「陽奈のお母さん!?

あっ…すいません俺…勝手に部屋に入って寝てたみたいで…」



サキ「いえ…大丈夫ですよ。」



潤M「綺麗な人だなぁ…」



サキ「ん?私の顔に何かついてますか?」



潤「えっ…あっ…いやいや!そうゆうんじゃないですよ!」



サキ「あらそうなの…

ところで桂と陽奈は元気?」



潤「あっ!はい!元気ですよ!

って…一緒に住んでるんじゃないんですか?」



サキ「それがね…私ちょっと部屋から出れない事情があって…

あまり会えてないのよ…」



潤「そうなんですか?

色々と大変なんですね…」



潤M「あまり深いことは聞かないほうがいいかもしれないな…」



サキ「でも…あなたが来てくれて嬉しいわ。

色々と二人のことを教えていただけます?」



潤「あっ…はい!俺で良ければ全然いいですよ!」



N「潤は夫の桂のこと、娘の陽奈のこと。

知ってる限りを語り…10分ほど話し込んでいた。」



サキ「あら…もうこんな時間…そろそろ行くわね。

また会えたらお話しましょう。」



潤「はい!ぜひ!

ってあれ…また目眩が…」









桂「……くん……んくん…潤くん!」



潤「ん…?あれ…桂…さん?

やべ…おれまた寝てたのか…なんでだろう…」



桂「大丈夫かい?トイレに行ったきり戻ってこないからどうしたのかと思ったらこんなところで寝てたものだから。」



潤「あっ…すいません…

あれ…陽奈のお母さんは?…確か神上サキって言ってたような…」



桂「えっ!?…なんでその名前を…」



潤「さっき部屋で少し話してたんですけど…

用事があるみたいだったからもう行ったのかな…」



桂M「……そんなことが…サキが姿を現すのは…サキの命日である8月1日の年に1度のみ…

なんでこの子の前に現れたんだ…時期がまだ早すぎる…

それに…サキは家族の前以外には現れないはずなんだが…」



潤「あの…大丈夫ですか?」



桂「ん?…ああ…大丈夫。

少し考え事をしてただけさ」



潤「ならいいんですけど…」



桂「よし!じゃあそろそろ戻ろうか!

二人が心配してるよ。」



潤「そうですね!」



N「そして建と陽奈がいる部屋に戻った。

時間は夕方ということもあり、そのまま帰宅。

陽奈と桂は二人が帰宅後…その話について話し合っていた。」



陽奈「二人とも帰ったね。」



桂「そうだな…」



陽奈「どうしたの?そんな怖い顔して」



桂「いや…ちょっと予想外のことが起きてね…」



陽奈「予想外のこと?」



桂「あぁ…潤くんを見に行ったとき…サキの部屋で倒れてるのを見つけたんだ。」



陽奈「お母さんの部屋で!?なんで!?」



桂「わからない…きっと好奇心のようなものが働いたのか…

もしくは…ん〜…」



陽奈「それで?予想外のことって?」



桂「潤くんが言ってたんだ…

サキと話したと…」



陽奈「そんなことって…だって私の友達が来たときも部屋に勝手に入ったりしたけど見えたことなんて…

私とお父さん以外に見える人がいるなんて…」



桂「これは偶然なのか…はたまたサキの意志なのか…」



陽奈「だってお母さんはもう…!?」



桂「わかってる。」



陽奈「どうしてなんだろう…」



桂「ちょうど来月がその日だ…

潤くんと健くんを呼ぼう…」



陽奈「潤はまだしも…なんで健まで…」



桂「サキのためだ…」



陽奈「だ…だめ!…潤くんには話聞くだけじゃないの!?

それに健までそんな!?」



桂「我慢するんだ陽奈!!

これも母さん…サキのためなんだ!」



陽奈「だめ!健と潤だけは…」



桂「陽奈のためでもあるんだ!

陽奈だってわかってるだろ…」



陽奈「そ…それは…」



桂「父さんだって苦しいんだ…

わかってくれ…」



陽奈「うん…わかってるよ…」











N「その次の日、潤と健のもとに陽奈から連絡があった。

それから数日後…8月1日に二人はやってきた。」



潤「よう建!」



健「おう!…もう来てたのか…」



潤「あぁ…ずっと気になってたよ。

陽奈から連絡もらって、この日に来てほしいだなんて…」



健「確かに…声も暗い感じだったし…

いつもの笑ってる陽奈とは全然違ってた。」



桂「やぁ。来たね。」



潤「桂さん!こんにちは。」



桂「こんにちは。すまないね。急に呼び出して…」



健「陽奈が呼び出したのって桂さんも関わってるんですか?」



桂「あぁ…そうなんだ。

さぁ!部屋に入ってくれ…」



N「この前みんなで話していた部屋にはいると…陽奈の姿はなく

代わりに二人宛ての手紙がテーブルの上に置かれていた。」



潤「これは…」



建「手紙か…?」



桂「陽奈から二人に宛てた手紙だ。

読んでくれ…

その手紙を見て、二人で話し合い、潤くんが倒れていた部屋に来てほしい。

僕は先に行っている。」



健「えっ…ちょっと!?桂さん!?…行っちゃったよ。」



潤「とりあえず…読んでみよう。」



健「あぁ…」



陽奈(手紙)「二人とも、来てくれてありがとう。

こんな手紙を書いたのには理由があります。

二人には覚悟をしてほしいから。私の秘密を知る…そして…都市伝説の秘密を知る覚悟を…

それが私がここにいる理由だから。その秘密を知ったとき…今まで通りに友達でいれるかはわからない。

もし、秘密を知る覚悟ができたら、あの部屋に来てください。」



健「秘密?なんだそりゃ…」



潤「覚悟を決めて聞くほどの…秘密…」



健「どうする潤…俺は正直少し怖いよ…

でも…お前が決めたことなら俺は行くよ。」



潤「俺なんかに任せていいのか?」



健「確かに…会ってまだ一緒に過ごした時間は短い…

けど…友達ってさ…時間とか関係ねえと思うんだよ…

1年かけても友達になれない奴もいれば…一週間で友達になれちまう奴もいる。

友達になるって…実は運ゲーみたいなもんじゃないかって思うんだよ…

気付いたらクソみたい奴が友達にいたり、気付いたら最高の友達がいたり…

そうゆうもんなんじゃないかって思う

だから俺は…たった1日で、最高の親友に出会えたラッキー野郎なんじゃないかって思うんだ…」



潤「ふふ…健らしいな。」



健「だから俺はお前に任せる。理由なんてたった1つ…

友達だから!

それで十分なんじゃないか?」



潤「そうだな…」



健「それで?どうする?」



潤「決まってるだろう?わざわざ言う必要あるか?」



健「じゃあ敢えて聞かせてもらおうか?」



潤「ったく…俺は…俺はあいつを…陽奈を大切な友達だと思ってる。

それ以上に…好きになっちまった奴を…どんな理由があったって捨てれるわけない。」



健「そのとおりだな!」



潤「よし!行くか!」



健「おうよ!」



N「二人は勢い良くふすまを開け…母親の写真立てがあった部屋へと向かった。

部屋に着くと、そこには、いつもの優しい桂さんではなく、少し険しい顔をした桂さんと…

黒と白の巫女装束姿の陽奈の姿があった。」



陽奈「来たんだね…」



潤「あぁ…来たよ。」



陽奈「なんで来たかなあ…」(笑ってはいるが少しさみしそうに)



健「そりゃ決まってるだろ?

陽奈は俺にとっても潤にとっても大切だから…

それ以外に言葉が必要か?」



陽奈「本当は来てほしくなかった。

知られたくなかった。

巻き込みたくなかった。

けど…来たなら私も覚悟を決める。」



桂「じゃあ…はじめようか。」



潤「はじめるってなにを…」



桂「部屋に入って扉を締めてくれ。」



健「わかりました。…締めました」



桂「はじめてくれ…陽奈。」



陽奈「神の領域で生まれ…全ての記憶をつかさどりし者…

その名はムネーモシュ

その子供の名は天使に生まれしサキ。

今ここにその姿を現し給え。」



潤「うっ!?…眩しい…」



健「なんだよ…この光…」



N「二人は前が見えなくなるぐらいの光を前に…目を開けていられなかった。

そして数秒後…目をゆっくりあけると…そこには先程まではいなかったはずの女性が立っていた。」



サキ「あら…もうそんな時期になったのね…」



桂「会いたかったよサキ…」



サキ「私もよ…あなた… 」



陽奈「お母さん…」



サキ「陽奈も久しぶりね…」



陽奈「うん…」



健「はっ?どうなってるんだこれ…

意味がわからねぇ…

今お母さんって言ったか…」



陽奈「そう…私の母さん…

この神社に祀られてる神様のその娘…

ようは神の血を受け継いだ天使よ…」



健「はぁ!?」



陽奈「信じられないのはもちろんわかる。

けどこれが事実…」



健「急にそんなの信じろって言われても…

なぁ潤!…って潤?」



潤「いや…話は聞いてたけど…

その話…もしかしたら本当かもしれない…

俺もにわかに信じられないんだが…」



健「何言ってんだよ!?

確かに神隠しなんて都市伝説があるけど…

目の前に神様の血を継ぐ娘がいるなんて…しかも天使って…」



潤「この前来たとき…トイレ借りに行ってさ…

この部屋を見かけて気になって入ったんだ…

そしたら急に目眩がして、気付いたらこの人がいた。

俺この人と会話してる…そしてまた気を失って気付いたらこの人はいなくなってた。

ただの夢だと思ってた…でも違ったんだよ。」



健「なんだよそれ…わけわかんねぇぞ…

でも…そんな夢物語みたいな話が…今ここで起きてる。

これは現実か?」



潤「俺はこの前みたいに目眩もしないぞ?」



健「そうだな。俺も痛い。」(ほっぺをつねりながら)



潤「ほっぺたつねって何してんだお前は…」



健「夢か確かめるならこれが手っ取り早いだろ」(つねるのをやめる)



潤「まあ…たしかにな…」



陽奈「こんなときでも…明るいね健は…」



健「こんなときだからこそ…ちょっとしたおふざけでもしないと…落ち着かねぇんだよ。」



陽奈「潤は逆に冷静なんだね…」



潤「この前のことがあったからってのもあるけど…

言葉が思いつかないだけだよ…」



健「ん?…ちょっとまてよ…

これとんでもないことだぞ?」



潤「なにがだ?」



健「だってあの人神様の娘なんだろ?

しかも天使って言ってた!」



桂「気付いたかい?」



潤「そうか…神様の娘…天使…

そしてその娘…陽奈…

お前にも…天使の血が流れてるのか?」



陽奈「うん…だから知られたくなかった…」



潤「陽奈…悩むぐらいなら話してくれてもいいだろ…」



陽奈「話してどうにかなるの?

私のお母さんは天使よ!

そんな話ができると思う?

仮にできたとしても…信じてもらえるわけがないじゃない!」



健「確かに…そんな突拍子もない話…打ち明けられたとして信じられるか自身はないな…」



潤「………」



陽奈「そんな話…誰にもできるわけないじゃない…

もう…一人は嫌なの…

二人が大切なの!

だから言えなかった!言いたくなかった!」



潤「…陽奈…」



サキ「陽奈…あのね?」



桂「やめるんだサキ…」



サキ「でも…私のせいで…」



桂「サキのせいじゃない…

それに…これは僕達が入っていいものじゃないんだ。

いいかいサキ?

人間ってものは…孤独に耐えられるようにはできてないんだ…

だからこそ…お互いにぶつかって…言い合って…分かりあわなきゃいけない。

それができなきゃ離れるしかない。

……人間ってものは…面倒くさい生き物なんだ…

だからここは…親として見守るのが正解なんだ。」



サキ「うん…わかった。」



潤「陽奈…確かに俺達はなにもできないかもしれない…

でも…この状況を知れば…俺達は話を聞くことはできたはずだ。

それがなにかの力になるかはわからない…

けど…少なからず陽奈を一人にするようなことはしない!」



健「その意見には俺だって同じだ!

一人にするようなことはしない。」



陽奈「そんなの無理に決まってる!」



健「なんでそんなこと言うんだよ……」



陽奈「私は…見た目は確かに人間…

けど…私に流れてる血は人間とは程遠い…架空と言われた存在

天使の血が流れてる!

そんな私が孤独から救われるなんて無理なんだよ!

人間と天使の間に生まれた…

私は……私は正真正銘のバケモノなんだよ!」



健「そんなことねぇよ!!

確かにそんな血が流れてるって不気味がる奴はいるかもしれねぇ!

けどな…俺はそんなの関係ない!

俺はお前が人間だから友達になったんじゃない!

お前自身のことが友達として大切だと思えたから友達になったんだ!

自分をバケモノだって蔑むなんて許さねえぞ!

お前のことが大切なだけだ!

ただそれだけだ!」



陽奈「…健…」



潤「俺だってそうだ!

お前がどんなに拒否しても…離れてほしいって言っても…

俺はお前がずっと好きだし…絶対に離れるなんてことはしない!

例え記憶を無くしたって絶対離れない!」



陽奈「…潤…」



サキ「じゃあ話は簡単じゃない?」



潤「えっ?」



サキ「あなたを私がためしてあげるわ…」



陽奈「お母さん…何言ってるの?」



桂「サキ…」



サキ「あなたもそのつもりだったんでしょ?」



桂「あぁ…そうだな…」



陽奈「ちょっと…止めてよお父さん…」



桂「すまない…僕には止めれない…」



健「なんの話してるんだ?」



潤「…さぁ?…俺にもわからないよ…」



陽奈「だめ!この二人の記憶だけはだめ!」



桂「そこをどきなさい…」



陽奈「だめなの!」



潤「お…おい…何言ってるんだよ陽奈…」



サキ「さっき聞いてなかったの?

私は記憶を司る神の娘…」



健「そういえば…そんなこと言ってたな…」



サキ「私は記憶を奪うことができるの…」



潤「はっ?記憶を…奪う…?」



桂「ここに君たちがいる理由もそれなんだ…」



建「えっと…意味がわからないんですけど…」



陽奈「この二人だけは…」



潤「意味がわからない…教えてくれよ陽奈!」



陽奈「それは……」



桂「……僕から説明しよう…

君たちは…最近この町で噂になってる…神隠しは知ってるね?」



健「…はい…

俺達は…それを調べるために、この神社にも…最初来ました。」



桂「それも娘から聞いてる…

その神隠しでいなくなった人たちは…僕の妻である…サキが関わっている…」



潤「それって…まさか…」



桂「そう…その神隠しを行っているのは…サキなんだ…」



健「そう…なのか陽奈?」



陽奈「うん…ごめん…」



潤「なんで…なんでそんなことをする必要があったんですか!?

神隠しに会った人たちは?」



桂「大丈夫…命を奪うわけではない…

あくまで記憶を奪うんだ…」



潤「だからなぜそんなことをする必要があるんですか!」



桂「…それは…神の娘である…サキの罪が理由になってる…」 



健「罪?」



桂「……」



サキ「私から話すわ…」



桂「すまない…」



サキ「いいのよあなた…

罪っていうのはね…天使としてあるまじき行為をしたの…

私は…神が生み出したはずの人間を愛してしまった…

それが原因で…私は天界から追放された

でもね…桂さんは私を人間として愛し続けてくれた。

そんな私達を神は許せなかったのでしょう…

私達に罰が下るのには…時間はかからなかった…」



潤「罰って…」



サキ「私達が決めた人間から…記憶を奪うこと…

娘の陽奈が18歳になるまでに…合計100人の記憶をね…」



健「そんなことって…なんの罪もない人間から記憶を奪うなんて…」



桂「もちろん僕達は悩んだ…

色々な場所に移り住みながら…

色々な人間の記憶を奪った。

でもその期間まで…あと残り1ヶ月足らず…

残り3人まで来たんだ…」



潤「その人たちが何をしたんですか!?

例え神でも…許されることではないと思います!」



サキ「あなた達は1つ勘違いをしているわね…」



潤「勘違い?」



サキ「なんの罪もない人間から記憶を奪うわけがないのです。

私達は…罪を犯した人間から…記憶を奪っている…

なにかしらの罪を…強盗、強姦、殺人…刑務所に入ってる死刑囚から記憶を奪っているのです。」



桂「僕達は…例え死刑囚だとしても…やっていいものかと悩んだ…

でも…死刑になる寸前に記憶を奪うんだ。

無くなったことすら気付かない…」



潤「でも…それでも…やっていいことじゃない…」



陽奈「わかってる…」



潤「陽奈?」



陽奈「そんなこともちろんわかってる!

私も知ってたんだよ!

だから二人には知られたくなかったんだよ!

例え家族のためだって自分に言い聞かせても!

辛いのには変わりないんだから!」



健「あれ…ちょっとまてよ?

でも死刑囚とかだけって言うなら…今回記憶を奪われた先生と生徒二人はどうなるんだ?

もちろん死刑囚なわけもないし…」



桂「その二人か…

僕達が来る前に…サキに色々調べてもらっていたんだ。

そこでその生徒二人と、教師の一人がイジメをしていたことがわかった。

そのイジメられていた生徒は…自殺をして亡くなったそうだ。

イジメっていうのは罪には問われない。

正直時間もなかった僕達は…

その三人から記憶を奪ったんだ。

そのイジメの記憶だけを残してね…

三人はこれからやり直すチャンスがある。

もう二度とこんなことのないように…ね。」



潤「俺達が来る前にそんなことが…」



健「確かに…自殺したやつがいたけど…まさか先生までグルだったとはな…」



陽奈「残酷かもしれないけど…ただの言い訳なのもわかってる。

けど…そうするしかなかったんだ…」



桂「そう…じゃないと…僕達が消されるしかなかったんだ。」



潤「……何も言えないよ…そんなこと言われたら…」



健「俺達がどうこう言えることじゃないってことか…」



サキ「そろそろいいかしら…

本題に入らせてもらうわ…」



潤「本題?」



サキ「聞いていたでしょ?

その100人まで…時間がない…

そして…100まであと三人なの…

記憶を奪われても…覚えていられるか…ためしてあげるわ…」



健「俺達の…記憶を奪う…のか?」



桂「すまない…」



陽奈「嫌だ!嫌だよお母さん!」



桂「わがままを言うんじゃない…」



健「まじかよ…」



サキ「大丈夫…あなたたちは特例だから…

全てを奪いはしない…

でも、辛いかもしれない…

二人からは…陽奈の記憶を奪わせてもらうわ…」



潤「そんな…やめてくれ…大切な記憶を奪わないでくれ…」



健「そんなことって…」



サキ「まずはあなたからよ真壁建…」



健「うっ…あ……あ………頭いてぇ……」



陽奈「だめ!お願いやめて!」



桂「耐えるんだ陽奈!」



陽奈「いや!離してお父さん!」



潤「健!?…がっ…体が動かない……」



健「うわ…なんだよこれ…頭から何かがなくなる感覚……

嘘…だろ・・・・・」



潤「健が…消えた?」



桂「大丈夫…神社の入り口に移動させただけだ…

命に別状はないよ…」



陽奈「そんな…健が…健が…」



潤「…くっ…こんなこと…あり得ねぇよ…」



サキ「でも…これが現実よ…次はあなたよ…柊潤…」



潤「くっそ…俺は絶対忘れない!忘れてやるもんか!

必ずここに来る…待ってろよ陽奈!」



陽奈「潤……」



潤「ぐぁ…なん…だよこれ……

はぁ…はぁ…割れるなんてもんじゃない…

砕け散りそうだ…

うわぁぁぁぁぁ!!!!」



陽奈「潤…じゅーーーーん!!」



N「潤と健はその場から喪失。

残るのは、泣くことしかできない陽奈…

止めることなどできなかった桂…

表情一つ変わらないサキの姿があった。」



陽奈「そんな…健…潤…ごめんなさい…巻き込んでしまったせいで…」



桂「すまないな陽奈…」



サキ「もう泣いても意味はないのですよ。

仕方ないことです。」



陽奈「わかってる…わかってるよお母さん…

私が決めたことだから…

さよなら…私の大切な人たち…」



N「さよならを決めた陽奈…

だけど…どこか淋しげなのに…心のどこかでなにかを決めた表情をする…

陽奈の姿がそこにはあった。」











N「そして…外に出された健と潤…

二人は神社の階段下で目をさましていた。」



健「ん〜…なんで俺達こんなところにいるんだ?」



潤「さぁ…わからないけど…もう夕方だよ。

帰ろう…なんか疲れたよ。」



健「そうだな…帰るか。」



N「その夜…潤は自分の部屋で天井を見上げながらなにかを考え込んでいた。」



潤「………なんだろう………

なにか大事なものを無くしたような気がする…

でも…思い出せない…

えっ……涙?

なんで…別に泣きたいわけじゃないのに…涙が止まらない…

どうして…わけわからない…なんでだよ…なんで止まらないんだよ…

ちくしょう…」



N「その日を境に…潤が涙を流すことはなくなった。

いつもと変わらない日常。

終わる夏休み。

あれから数カ月…建と潤が神社に来ることはなかった。

陽奈も学校に行くことはなかった。

そして…サキと桂の最後の日…」



サキ「あと一人…見つからなかったわね。」



桂「あぁ…そうだね

ここまで僕達がやってきたことはなんだったんだろうね…」



サキ「ここに姿を見せれるのも最後になるね。

私の力も限界みたいだし…」



桂「1年に1度会うだけでも…かなり力を使うはずなのに…

最後の年だからって…使いすぎたね。」



サキ「まぁ…最後だからね…」



陽奈「お母さん…お父さん…」



桂「陽奈?どうしたんだい?」



サキ「最後に会いに来てくれたの?」



陽奈「私はずっと考えてたの…

私のわがままを聞いてほしい…」



桂「陽奈がわがままを…?珍しいこともあるものだ…」



サキ「なに?あなたのわがままって…」



陽奈「私は…人間になりたい…

それを叶えることはできるの?」



桂「何を言ってるんだい?そんなことできるわけ…」



サキ「いいえ…できるわよ。」



桂「…サキ!?」



サキ「ここまで付き合ってくれたんだもん。

正直に話しましょう…」



桂「……ふぅ…そうだね。」



サキ「人間になる方法…

それはね…簡単なこと…

私のことをすっかり忘れること。」



陽奈「お母さんを忘れる…」



サキ「そうよ…確かに血を変えることはできない。

けど…あなたの血は、人間のほうが濃いのよ…

だから、人間として暮らしていくには問題はないわ。」



陽奈「そう…なんだ。」



サキ「私のこと…私に関わったことすべて忘れるの。

もちろん…建くんや潤くんのこと…

今まで記憶を奪った人々のこと…すべてね。」



陽奈「なんとなく覚悟はできてた。

やっぱそれしか方法はないんだね…」



桂「知ってたのか?」



陽奈「知ってたってわけじゃないよ。

けど…そうゆう方法しかないんだろうなぁって思ってた。」



サキ「どうする?」



陽奈「ずっと考えて…考え抜いて決めた。

私は人間になりたい。」



桂「本当にいいのかい?

お母さんのことも…潤くんや建くんのことも忘れてしまうんだぞ?」



陽奈「もう決めたの…お母さんのことを忘れるのは辛いけど…

それじゃあ私は前に進めない…

潤や建のことは…考えても仕方ないことだから…

お願いお母さん…私の最初で最後のわがままを聞いて…」



サキ「わかったわ…

じゃあ…さよなら陽奈…元気でね。」



陽奈「さよならお母さん…ありがとう。」



陽奈M「痛い…痛い…頭が割れそう…

けど…これぐらい耐えてやるんだ!

私は新たな道を行くんだ。

私は…奇跡を…信じてるから…」



桂「行ったね…」



サキ「ええ…行ったわね…」



桂「本当に良かったのかい?」



サキ「いいのよ…だって私の娘だもの。

わがままなのは当然よ…」



桂「ふふ…そうだね…」



N「陽奈はテーブルで眠っていた。

今までの母親との記憶を忘れて…

新たな道を進むために…」



陽奈「ん…あれ…私眠ってた?

お父さん!お父さーん!」



桂「呼んでいるね…じゃあ行くよ。

これで僕達の罰は達成できたのかな?」



サキ「おそらくね…」



桂「じゃあまた…」



サキ「ええ…またね。」











陽奈「もう!お父さんなにしてるの!

引っ越しの準備しないと!」



桂「あぁ!そうだな!」



陽奈「新しい学校楽しみ!」



桂「新しい学校では彼氏の一人ぐらい連れてきてくれよ?」



陽奈「もう!何言ってるの!」



桂「ハッハッハ!

じゃあ…引っ越しの準備しないとな!」



陽奈「うん!お父さん!」


桂M「陽奈には…母親は事故にあって亡くなったことにした。

そうやって僕はサキに頼んだ。

先々で母さんがいないことに疑問を覚えるかもしれないから…

この先で…そんなことを思って生きていくことは…

きっと辛いだろうからね…

サキ…必ず僕が陽奈を守っていくよ…」



N「陽奈の記憶から神上サキの存在。

柊潤。真壁建の記憶はなくなっていた。

3日後…二人は引っ越していた。

それから数年後…

潤と建は同じ会社で営業マンをしている。

変わらず二人は親友だそうだ…

そんな二人の…仕事終わりの出来事。」



健「んーー!!疲れたぁ!

明日は休みだし…飲み行きますか?」



潤「休みとか関係なく…週に4日は飲み行ってないか?」



健「細かいことは気にすんなよ!」



潤「ってあれ…俺のスマホが…」



陽奈「あの…これ落としませんでした?」



潤「あっ!…俺のスマホ…ありがとうございます。」



陽奈「いいえ!たまたま拾っただけですから!」



潤「そうですか」



健「おっ!よかったらこのあと飲みでも行きません?

コイツがお礼がしたいらしいんで!」



潤「お…おい建!…勝手にまた…」



健「お前もそのつもりだったんだろう?」(小声)



潤「ったく…お前には叶わないよ。」(小声)



陽奈「あの…どうされました?」



潤「いえ!なんでも…よかったらどうです?えっと…」



陽奈「私は神上陽奈!お二人がご迷惑でなかったら!」



健「じゃあ行きましょう!真壁健!よろしくっす!」



潤「柊潤です!よろしくお願いします!」



陽奈「よろしくお願いします!」



サキM「奇跡とは…いつ起こるものかわからないのが当たり前。

そもそも…簡単に起きないものが奇跡…

でも、信じてたら奇跡だって起こせるものだと思いませんか?

この物語はこれでおしまい。

もしかしたら、皆さんの記憶も変えられたものかもしれない…

けど…それで幸せならいいのかもしれません。

だって…その人の幸せを誰かが決めることなんてできるわけ無いのだから…」



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