即興小説【牡丹と彼】
「ねぇ、好きな人いないの?」
親友が言うので、話してみることにした。
「じゃあ、話すね私の恋ばな――」
*
「気になる……」
いつもこの時間になったらこの教室から見えるあの彼。彼は、テニス部。私は美術部。会いに行かなければ、会えない……
そんなの分かってる。
ただ、気になるだけだったのに。
「好き……」
いつの間にかそう、思うようになった。
私は今日も彼を見ながら、大好きな絵を描く。
「今日は雨か……流石に彼の姿は見えないな……」
そう思いながら、いつもの様に絵を描いていると、ガラッと教室の扉が開き、
「先生! 俺、怪我しちゃって……しばらくテニス出来ないんだ。それでさ、先生に相談したら、好きな絵、描いて良いよって。1ヶ月だけ、美術部に通わせて下さい!」
私はその光景を見ながら固まってしまっていた。
目の前に居るのは……そう、彼。あの、いつも見ていた彼だった。
「よろしくね!」
彼が隣に来た。
「よろしくお願いします……」
緊張して上手く話せない。私は今、描いている牡丹の絵に集中することにした。
「絵、上手いね。俺、これ好きだよ」
「えっ? 好き? 好きって?」
いや、この絵だよね絵。……心臓がバクバクする。
「牡丹の花、好きなんだ」
嬉しい! 私、牡丹の花描いてて良かった……。
*
これが、私の恋ばなです。
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猫兎彩愛です☆
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