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非凡な双子と不思議な本屋  作者: 桜坂郁
1/1

序章

「サイアク.....」


僕は小さく溜息をつく。

下を向いていた顔を上げ、先程よりも強くなっている雨空を見上げた。

はぁ、と、今度は横にいるやつに聞こえるように大きく息を吐いた。

「そんな辛気臭い顔すんなってー!」

と、横に立つ少年__僕の双子の弟だ__が、ケラケラ笑いながら言った

「誰のせいだと....??」

「え?俺」

呆れて物も言えない。


僕の名前は市ノ江宙。

横の能天気な奴は市ノ江陸だ。

成績も普通。運動神経は陸が皆んなより頭一つ抜けているぐらい。


一見、何処にでもいる様な“普通”の双子。

だが、僕らには誰にも言えない秘密があった。


「大体、学校の裏で瞬間移動すりゃ良かったのによー、宙が止めるから...」

「当たり前だ。誰かに見られていたらどうする?」

「んな誰も見てないっつーの!」

「万が一ということもあるだろ!」


そう。

僕らは俗に言う超能力者__

と言っても、使える能力は一つそれぞれ一つだけだが。


僕が使えるのは「千里眼」

未来、遠くの物、なんだって見れる。

陸が使えるのは「瞬間移動」

一度自分が行った場所なら、何処にだって飛べる優れものだ。


この能力のせいで随分苦労した。

最初、お互いに能力を自覚した時、親に自慢しようとする陸を必死に止め、誰にも言わない様に箝口令を敷いた。

最初陸はブーブー文句を言っていたが、万が一親や周りに知れた時、研究施設などに連れていかれて一生遊べなくなると若干脅せば、渋々ながらも納得してくれた。


それにしてもよー、と、陸は切り出す。

「なんだ?」

「いや...なんで俺らこんな能力持ってんだろうな?」

「.....確かにな」


雨足が強まる中、いつになく真剣な声で言った陸。

“何故僕等なのか”

それは、常日頃から考えていたことだった。


偶々、と言った言葉で片付けて仕舞えば楽だが、偶然だけで済む事じゃないことぐらい、高校生になった今では十分すぎる程理解していた。


暫く、僕らは無言になる。


「あーもう!埒あかねえ!!

おい宙、走んぞ!!」

「は!?走るって..ちょっ、ま、!」


脇目も振らずに飛び出した陸。

お前方向音痴だろうが!!と、僕は慌てて追いかける。



バカみたいな日々。

これが何時迄も続く、続けばいい。


そう、思っていた



「「此処、何処だ....」」


流石陸。と言ったところだろうか。

普段引きこもってばっかの僕は追いかけるので精一杯で、いつのまにか全く知らない道に出ていた事など一切気付かず、気付けば2人で森の中に突っ立っていた。



思わず天を仰ぎ、大きく息を吐く。

そして、言った。


「この馬鹿が!!!!」

「今回ばかりはすまん!!!」


陸の胸ぐらを思いっきり掴み、怒鳴る。

すると珍しく、素直に謝ってきた。

正直怒りは収まらないが、いつまでも怒っていても仕方がない

止めずについていった僕も僕だし。


ああぁ〜....と、思わずその場に蹲る。

やらかした。僕がついていながらこんな事態になるとは....優等生の名が廃る。


「お前の千里眼で此処が何処か見れねぇの?」

そう尋ねてくる陸。

そうか、その手があったか。

いつもは「使わない事」を前提にしているから、わざわざ使うという発想がなかった。

僕は、目を瞑り、水を浸透させるイメージで、能力を発動する。

何時もだったら、目の前に地図の様なものが現れ、大体の自分の居場所がわかる。

の、だが__...


「能力が...発動しない、?」

「はぁ!?」


いつまでたっても目の前は暗いままで、恐る恐る目を開くと、そこはまだ森の中で、

「いやいやいやいや、ちょっと待って、」

「おっかしいなー、目は青くなってるから、発動してるはずだぜ?」

「もしかしたら、調子が悪いのかも知れない...

陸のを使ってみてくれ」

おう。威勢のいい返事とともに、パチパチと2回瞬きをする陸。

2回目の瞬きで、陸の目は緑色に光った。


そのまま暫く静止していた、が。


「__っだめだ出来ねぇ!!」

「やっぱりか....」


陸の目は緑色のまま__つまり、能力は確実に発動している。

なのに何故、効果がないのか。


「何者かに邪魔されている、か?」

「はぁ?っつーことは、俺らと同じような能力を持つ奴が他にもいるってことかよ!?」

「まだ確定したわけじゃないけど...」


んだよそれ!!と、頭をぐしゃぐしゃと掻き毟る陸。


兎に角、この場から離れよう。そう言おうと思い、陸の方を振り返ると、


「おい、あれ...」

ぽかんとした....まぁ、なんとも間抜けな顔をした陸の指を指す方を見たら、


そこには、


「...は?店...?」


森の中に佇む、不思議な店があった。


これが僕らと、その本屋との、摩訶不思議な出会いだった。


__________________


市ノ江(イチノエ) (ソラ)

自称「優等生」

猪突猛進タイプの陸に振り回されている。

能力「千里眼」

発動時目が青く光る


市ノ江(イチノエ) (リク)

運動神経抜群の、クラスに1人はいる目立つ奴。

能力「瞬間移動」

発動時目が緑色に光る





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