10月7日 障がい
今日も、昨日クラスで起こったケンカについて話し合われていた。ホントは、1時間目に数学の授業があった。しかし、昨日のケンカが解決しなかったということもあり、急遽話し合いの時間がもうけられたのだった。
ケンカの発端は、文化祭の買い物を誰が行くのかということだった。ケンカの発端があまりにもしょうもなかったので、先生の話を聞く気にもなれなかった。俺は、いつものようにシャープペンシルの出し入れをしながら、話を聞いていた。最初は、西畑と須藤が言い合いをしていたが、途中から、いろんな人が参加してモメてしまったようだ。
〈3年2組〉
・篠木七海
・佐藤和佳奈
・諏訪玲香
・西畑茉奈
・須藤莉里
・橘怜衣
・八幡修也
・野間誠耶
・中村修平
・横山大和
先生の話があまりにも長くて、聞く気になれない。でも、先生の話は終わらない。10、15分経っても終わらなかったので、俺は椅子を後ろにひいた。ひいた時の椅子の音は、先生の話し声にかき消された。
椅子をひいた次の瞬間、俺は立ちあがった。すると、他の生徒の視線が先生から俺に変わった。ビックリした先生は、立ち上がった俺を見つめた。俺は、先生の顔を見たが、そのまま廊下の方に向かって歩き出した。
歩き出した俺を見て、先生は、「白州、どこに行くんだ」と叫んだ。俺は、先生の方を見ずに、そのまま廊下へと出て行った。教室を出て右に曲がり、階段を降りていった。すると、後ろの方から、足音が近づいてきた。トントントントンと軽やかな足音だった。廊下を出た俺を追ってきたのは先生ではなかった。またしても、篠木だった。この前も、班での発表も助けてもらったこともあり、篠木の顔を見ると少し複雑な気持ちになった。
篠木「白州君」
俺 「ん?」
急いで来た、篠木は疲れている様だった。
篠木「どこ行くの?」
俺 「うーん。帰ろうかな」
篠木「えっ、体調悪いの?」
俺 「いや、悪くないけど」
俺は、篠木の質問がよく理解することができなかった。
篠木「じゃあ、なんで帰るの?」
俺 「なんでって、面白くないから」
篠木「みんな、ビックリしてるよ」
俺 「そうなの?」
正直、みんながビックリしようが俺には関係がなかった。
篠木「そうでしょ。先生が話してるのに、いきなり教室出て行ったらそうなるよ」
俺 「そうなんだ。俺にはわからんけど」
篠木「なんで、わからないの」
俺 「俺、発達障がいらしいし、そういうのわかんないんだよね」
篠木は、少しビックリした様子だった。普段、あれだけ浮いた行動をしていたら、分かりそうなもんではないかとも感じた。
篠木「そうなの?」
俺 「あぁ」
篠木「てか、発達障がいって何?」
学年で、トップ5に入る程の学力があるのに、発達障がいは、知らなかった様だ。少し、寂しい気持ちになっている俺がいた。
俺 「しらねぇよ。自分で調べろよ」
篠木「あ、ごめん」
俺 「‥‥。わかったから、もういいでしょ?」
篠木「いや、帰る理由にならないから。発達障がいは、何も関係ないよ」
俺 「そうかな?もう、めんどくさいから帰るね
篠木が何を言っているか、よく理解できなかった俺は、篠木のことを放っといて、帰ることにした。当然、この後や明日どんなことが起きるかなんて、全く気にしていなかった。