10月5日 先生
今日は、先生と話をする日だった。先生とは、障がい施設の人だ。ちゃんと勉強しなかったり、計画をたてなかったら、めちゃくちゃ怒られる。でも、怒ってくれる一生懸命さが好きだった。
いつものように、学校終えると、自宅から、自転車で先生がいる場所へ向かった。自転車で10分ほどのところに先生はいた。俺は、いつものように部屋に入ると、すぐに先生と話を始めた。
俺 「先生、今日、校内放送あってん」
先生「校内放送?」
先生は、なんのことか全然わかっていなかった。いきなり、勝手に話す俺についていけなかったのだ。
俺 「そうそう。今日、学校でやっててさ。めちゃくちゃ面白かった」
先生「面白かったの?」
俺 「うん。上手く放送できんかったんやけど」
先生「なんじゃ、そりゃ」
俺 「ハハハァ」
先生の反応は、いつもと同じように、困っていた。先生は、話を続けるように質問をしてきた。
先生「最近、友だちとちゃんと話してるの?」
俺 「友だち?」
先生「この前、一緒におった人とか」
俺 「あぁ、全然」
先生「そうなん?」
先生は、少し心配そうな顔をして俺の顔を見た。確か前に、友だちと上手くいっていないということがあったからだろう。
俺 「全然話してないな」
先生「この前の、ゲームの話している人は?」
俺 「あぁ。かねともかぁ」
先生「そうそう。かねとも君」
かねとも君とは、小学校からの知り合いで、よくオンラインで一緒にゲームをしているヤツだ。
俺 「かねともは、最近、学校来てないよ」
先生「学校来てないの?」
俺 「うん。なんかいろいろあって、来てもすぐ帰るし」
先生「そんなんだ。じゃあ、最近は一人でいることが多いの?」
俺 「そうやね」
正直、休み時間に何をしていたかすら、覚えていないような学校生活を送っていた。
先生「休み時間は、何してるの?」
俺 「えぇー、最近何してるやろ?」
先生「何してるの?」
先生は、再度聞き返してきた。
俺 「今は、一人でいる」
先生「かねとも君以外で話す人いないの?」
俺 「いないかな」
先生「そっかぁ」
すると、この前の休み時間で起きた出来事を思い出した。
俺 「でも、この前、やましたって奴がちょっかい出してきたから、チョップした。そしたら、ひぐちの肩に直撃した」
先生「そうなん?」
俺 「ちょっかいめっちゃ出しくるから。肩にチョップしててん」
先生「やました君って、やんちゃなん?」
俺 「邪魔ばっかりしてて、みんなから嫌われてるよ」
俺は、やましまが嫌いだったから、誇張するように表現した。
先生「そうなんだ」
俺 「アイツおかしいんよ」
先生「肩にチョップしたら、あかんでしょ」
俺 「いやアイツは、いいの」
俺は、だんだんあの日の出来事を鮮明に思い出してきた。
先生「やました君は、仲良いの?」
俺 「いや、全然」
先生「チョップ直撃させた子は、仲良いの?」
俺 「全然。女やし」
先生「あっ、女の子なん?」
先生は、ビックリした顔をしていた。女の子にいきなり、チョップしたら怒られるだろうという顔をしていた。
俺 「そうそう。めちゃくちゃ怒られた」
先生「そりゃ、関係ない人にチョップ直撃させたら、ダメでしょー」
俺 「そうやねん。昔から怖いやつで」
先生「知ってる子なの?」
俺 「中学校一緒やねん」
先生「そうなんだ」
ひぐちは、俺と同じ八代東中学校だった。
俺 「めっちゃくちゃ怖いよね」
先生「そうなんだね。ちゃんと、謝った?」
俺 「謝ったけど、許してくれへん」
先生「謝ったんやったら、しょうがないね」
俺 「そうやねん、やましたが悪いのに、俺がひぐちにめちゃくちゃおこられるっていうな」
先生「それは、つらいなぁ」
俺 「うん」
先生との話は、約1時間続いた。先生との話が終わると、いつものように自転車で自宅に帰るのだった。