10月2日 篠木七海
今日は、3時間目の社会で、交通事故を減らすには機械の導入することへの賛否、交通事故が減少した理由について考える時間があった。いつものように話を聞かずに、シャーペンの芯を出し入れしながら、ノートの端を黒く塗りつぶしていた。
すると、各班での話し合いが始まった。ノートを塗りつぶすことに意識がいってた俺は、中村からの声かけでようやく気がついた。
中村「白州、何してんの?」
俺 「ん?何もしてないよ」
俺は、あわてて答えた。
中村「そうなん?」
俺 「うん」
中村「後で、発表あるから聞いとけよ」
俺 「おう」
すると私の前に座る、横山が中村に何かを伝えた。
横山「コイツに言っても無駄やって」
俺に聞こえないくらいの声で、中村に伝えた。俺は、そんな声を無視して、再び、ノートの端を塗りつぶしながら、消しゴムをいじり始めた。
中村「じゃあ、賛成、反対のどっちの意見でいくの?」
横山「賛成でいいやろ」
板坂「でも、理由なくない?」
横山「それは、確かに」
中村「どーしよかな?篠木どう思う?」
私の後ろにいた篠木が考えていた。
篠木「うーん。理由だったら、どっちでも考えるよ」
中村「いやー、助かる」
篠木は、中村を見ながら、聞いた。
篠木「で、どっちの立場にするの?」
横山「賛成でいこ」
中村「そうやな」
篠木「それでいい?」
近くにいた、諏訪にたずねた。
諏訪「いいよ」
篠木「じゃあ、賛成で。誰が発表するの?」
横山「白州、何もしてないしやれよ」
白州「お、おぉ」
横山からの急な返事にビックリした。何やら、発表しないといけなくなったらしい。
篠木「白州君、言うよ」
白州「うん」
篠木の顔を見ながら答えた。
篠木「一つ目が、自動運転に変わるから。二つ目が、法令遵守が厳しくなったから。三つ目が、道路整備が進んだから。どう?」
中村「めっちゃいいじゃん」
横山「うん、三つあれば充分でしょ」
中村「これでいいな。完璧」
そして、各班の話し合いが終わり、発表が始まった。先生は、一番前にいた私たちの席から発表するように告げた。
先生「じゃあ、交通事故が減少した理由を教えて」
俺 「‥‥」
俺は、先生の顔を眺めていた。
先生「誰が、発表するんだ?」
先生がそう告げた後、中村が私の椅子を揺らした。私は、自分が発表することに気がつき、椅子から立ち上がった。
先生「あっ、白州が発表するのか?」
俺 「はい」
先生「じゃあ、理由からな」
俺 「‥‥」
先生「どうした?」
私は、頭が真っ白になっていた。さっきまで、話し合いに参加していたが、何を言っていたのか全然覚えていなかったからだ。適当に返事をしていたツケが回ってきたのだった。
先生「お前ら、ちゃんと話し合いしたのか?」
横山「しましたよ」
先生「じゃあ、なんで言えないんだ?」
完全にやらかしてしまった。こんなことになるくらいなら、最初から聞いておけばよかった。何も言えない僕は、立ちすくんでいた。すると、後ろから一枚のプリントが回ってきた。
篠木「先生!」
先生「どうした?篠木」
篠木「私のところに話し合いをしたプリントを、白州君が忘れてたんで、言えなかったんですよ」
先生「そうなんか。しっかりしろよ」
その後、篠木から受け取ったプリントを見て、話し合った三つのことを全て伝えた。なんとか、ことなきをえたが、とても恥ずかしい目にあった。しかし、こうしたことはよくあるし、帰っていたら忘れてしまうだろう。篠木には、申し訳なかったが、今してもらったことは、短期的に助けてもらっただけで、長期的にみると、何も変わらないのだろうと思った。
俺の毎日は、本当にこんなことしか起きない。学校に行っても面白くない。そんなことを考えながら、教室を出て行ったのだった。