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10月11日 塾

 俺は、朝から塾の先生に会いに行っていた。昨日、正田から言われたことで、どこか目が覚めた自分がいた。塾に着いたのはよかったが、先生は、別の仕事をしていたこともあり、まだ、俺のところに来てなかった。

 この時期は、受験生だけでなく、定期テストもあり、先生たちは皆忙しそうにしていた。俺は、シャープペンシルの芯であそびながら先生を待った。目の前には、受験を控えた同年代らしき生徒が必死になって勉強をしていた。生徒の方を見ていると、先生がやってきた。


 先生「どうした?」


 少し疲れているのか、目にクマができていた。


 俺 「いや、実はね。進路どうしたらいいかと思って、先生に聞きに来たんですよ」

 先生「は?」


 先生は、よくわからないでいた。


 俺 「‥‥」


 先生は、俺を見つめて言ってきた。


 先生「進路は、自分で決めるもんやろ」

 俺 「うん、でも行きたいところなくて」

 先生「じゃあ、いかんかったら?」


 俺は、消しゴムを触り出した。


 俺 「まぁ、そうなんですけど」

 先生「無理に行っても、途中で止めるだけやろ?」


 だんだん、先生の声量が大きくなる。


 俺 「でも、就職もしたくないし」

 先生「就職もせんかったら?」

 俺 「じゃあ、何したらいいん?」


 ついに、先生がキレた。


 先生「いやいや。日向くん、進路、俺が決めていいの?」

 俺 「‥‥」


 ビビって、俺は先生の目線からそらした。


 先生「決めるで、俺が」

 俺 「‥‥‥」

 先生「やりたいことがないのはわかるよ。でもさ、全部俺になげてもしょうがないよ」


 俺が言われたくないことを先生は、ズバッと言ってきた。


 俺 「‥」

 先生「もう、10月やしさ。少しずつ決めていこうよ。まずは、進学か就職かっていうどっちかで決めるんじゃなくていくつかの選択肢の中から一緒に決めよ」

 俺 「はい」


 先生の一言は、厳しかったが、優しかった。


 先生「先生、次来るまでに、進学した場合と就職した場合の2つのパターン考えてくるから。日向くんは、とりあえず勉強だけはしといて」

 俺 「はい」


 俺は、いつものように単語テストを出して、勉強を始めたのだった。これまでは、ほとんどやる気もでなかったが、先生の一言でやる気スイッチが入った様だった。みんなとスタートは遅れたが、ようやく一歩踏み出せそうでどこか嬉しく思う自分がいた。

 

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