10月1日 白州日向
今日は、とても目覚めが悪い朝だった。また、いつもの月曜日がやってきたというだけでも憂鬱だったのに‥‥。今日の時間割を見ようとしたが、そのプリントすらない。そして、出されたはずであろう宿題すら忘れていた。今日も、先生から怒られることだけは、理解していた。
俺が、カバンに教科書を入れていると、母が入ってきた。俺の母は、常々、忘れ物はないか声をかけてくるのだ。忘れ物があるかないかすら、わからないということに気がついていないということも逆に面白かった。
母 「おはよう」
俺 「うん」
母 「宿題ちゃんとしたの?」
俺 「うん、した」
母 「ホントー?」
俺 「うん、したって」
母の声がうっとうしい。
母 「あと2日でテストなるんやから、提出物ちゃんともって帰りや」
僕 「おう」
こうして返事をしてみても、学校に行ったら忘れているから一緒だった。
私は、カバンを背負って、1階で朝ごはんを食べ始めた。今日は、ご飯、お味噌汁、卵焼きというメニュー。ご飯を食べようとしたら、ご飯の中に黒い米粒が見つかった。黒い米粒は、奥の方にあってとるか迷った。朝の時間も、そんなにないのでとらないで、お味噌汁に手をつけた。
お味噌汁には、豆腐、ワカメ、あげが入っていた。少し熱かったが口の中に思いっきり流しこんだ。お味噌汁が半分くらいなくなった後に、卵焼きを箸で半分にした。卵焼きを食べるも、やっぱりご飯の中にある黒い米粒が気になった。
どうしても気になったので、ご飯の中に箸を入れ、黒い米粒を取ろうとした。しかし、なかなか、思うように箸で米粒がとれない。箸で米粒を挟もうとすればするほど、黒い米粒は奥の方に入っていた。
すると大きな声が耳元で聞こえた。それは、母の声だった。食べることよりも、米粒に集中していた俺の姿に怒りを感じたのだろう。しかし、こうしたことは日常茶飯事だった。
俺の名前は、白州日向。聖徳高校に通う高校3年生だ。今は、3年2組の生徒だ。クラスメイトで知っているのは、BIG3と言われている篠木、野球部の橘、バスケ部の野間くらいだ。後は、名前を言われてもほとんどわからない。
俺は、高校生といっても、友だちはいないから、いつも一人だった。集中がきれやすく、物忘れも激しい。そんな奴に友だちがいたら、逆に不思議なのかもしれない。
集中がきれたり、忘れ物をする度に、いつも母や先生から怒られている。俺は、自閉スペクトラム症というやつらしい。
小学校の時に、周りと違うことを感じて、中学生の時には、いじめを受けた。そのため、高校生になった時には、自分からそのことをカミングアウトしていた。今となってはそのことの記憶すら忘れているから問題ないのだが。
現在は、障がい施設に通いながら、自分の課題と向き合っているのだ。まぁ、課題といっても、そう簡単には治らないんだけど。