初クエストで金欠対策
ここの宿は浴場といった施設はなく、その代わりにタオルの貸し出しとお湯を購入する必要がある。
もうお金は手元にないので購入することが出来ない。
元日本人として風呂に入りたいし、アリシアを汚れたままにしたくない。
なので、水浴びしたいと思います。
よくある場面では魔法で汚れたのを綺麗にするが、そんな便利な魔法知らないし、元のゲームでは存在しない。
ただ探知魔法に足跡を綺麗に消す魔法は存在するが、魔法の概念的にはどうなるのだろう。
この世界に着てから魔法は元の効果しか発動してなかった。
つまり、一度も魔法を操作したことがない。
作用するか一度試してみるか。
「”足跡消失”」
自分の足元から扉まで、床に小さな光の粒が現れてすぐに消えた。
これはゲームと一緒のエフェクトだった。
次に自分が汚れていると思って発動してみる。
「”足跡消失”」
結果は同じだった。
魔法を操作できるのか、自分の感覚では分からなかった。
◇
仕方がないので、魔法を使用せずに体を洗うことにする。
店主に頼んで、水の入った桶を借りた。
タオルはアリシアのファンから頂いたのがアイテムボックスにあった気がするので、アイテムボックスからタオルを取り出す。
取り出したタオルはファンの贈り物の物ではなく、ギルマスことこよっちさんに貰ったタオルがあった。
手に持ったタオルをとりあえず顔に近づける。
「あっ、いい匂い」
微かにフローラルな香りがするのであった。
もっと顔をうずめていたい。
「これがこよっちさんの匂い……?」
ゲームでは体験することができなかった行為にハマり匂いを嗅ぎ続ける。
もしかして俺って匂いフェチなのでは……?
「皆どうしてるんだろう……」
突然、自分だけが異世界に来て急に寂しくなった。
皆も異世界に飛んだのか、それとも自分だけが異世界に転移したのか……。
ついこの日は、タオルに顔をうずめながらベットで眠りについた。
◇
目を覚まし、昨夜の残った水を利用し顔を洗っていると、水の反射で可愛いアリシアに寝癖を見つけた。
俺はアイテムボックスを開いて、こよっちさんのタオルを仕舞いブラシを取り出す。
鏡がこの部屋にないので、そのまま水の反射を利用して髪を手入れする。
その後、服を整えてから朝食を貰う。
朝食は黒くて堅いパンに野菜の煮込みスープだった。
パンは食べづらく、スープは味が薄い。
この世界の食文化ってこんな感じなの?
こんな偉そうに言ってるが、俺は料理をしたことないので文句を言える立場でもないし、食文化の革命を起こせない。
食文化もそうだが、この世界は謎だ。
まずここの街はゲームのマップに存在しないこと、魔道具はあったがその魔道具も知らない。
魔道具はあるってことは魔法も存在すると思うが、ゲームにある魔法と同一で存在するかも分からない。
と言っても、俺は全ての魔法を覚えている訳ではないから確認するのが無理だ。
余談だが、ここで自分が習得しているスキル、魔法、技術を載せる。
前提として、Lvが上がるごとにスキルポイントが3つ貰え、アリシアはLv100なので合計300ポイントになる。
スキルには10段階まで存在し、1段階上げるにはその段数分ポイントを使用するため、最高段階まで上げると最大55ポイント消費する。
また魔法と技術が10段階に達すると秘儀という最強の技が撃つことができる。
スキル、魔法、技術はスキルポイントを共有している。
自分のビルドは手数の多さで対応しやすい、万能かつソロプレイ用に育成してあった。
習得している魔法は《回復魔法Ⅴ》、《支援魔法Ⅹ》、《探知魔法Ⅳ》、《防御魔法Ⅷ》、《攻撃魔法Ⅹ》。
次に、習得しているスキルは《回避率上昇Ⅹ》、《魅了付与Ⅲ》、《急所威力上昇Ⅲ》、《急所命中率上昇Ⅹ》。
スキルは基本的に常時発動しているスキル――パッシブスキルが多い。
状態異常付与は強力で、どの攻撃にも一定確率で異常状態になってしまうからだ。
ただ、PVPでは異常状態耐性が必須で意味がないのだがNPCには有効なのでつけてることが多い。
何故魅了を付けているのかって?
それはアリシアがアイドルとして必須だと思ったからだ!
だから俺が凄く愛でているのはアリシアの容姿に魅了されている、間違いない。
自分が今まで見てきた魔法職の人は、攻撃魔法と防御魔法10段階まで上げていき後はスキルでポイントを消費しているみたいだった。
閑話休題。
これからやることは、情報収集と金銭面の対策だ。
昨日、冒険者になったのでクエストを受けてお金を稼ごう。
余った時間は、本を探してこの世界について情報収集しないと。
やることが決まったので、チェックアウトして冒険者ギルドへ向かった。
◇
冒険者ギルドに着くと、問題が発生した。
「なぁ俺達とパーティ組まないか? こう見えてランクはB-なんだよ」
「グヘヘ、いいだろう?経験豊富な俺達に任せなって」
テンプレ通りにガラの悪いおじさん達5人に絡まれる。
他の者もリーダー格に合わせて頷いている。
まぁ仕方がないだろう、アリシアは絶世の美少女だからナンパしてくる奴は多いだろう。
そして、頬が緩んでいる表情を見ると殺したくなる。
「私はソロで充分です」
殺意を抑えて誘いを断る。
「女一人じゃ危ねぇから、優しい俺達が誘ってるだろう?」
「意地なんて張らずに一緒に行こうぜ」
と、おじさんの一人が俺を触れようとしてきた。
「触るんじゃねぇ、ゴミクズが!」
カッとなって剣幕してしまい、手を振り解こうと持ってた杖でおじさんの鎧に当たってしまう。
当たった衝撃で床に勢いよく吹っ飛ばされ鎧が砕かれた。
「……メスゴリラだ」
「あぁ?」
誰かがそう呟くのを見逃さない。
そいつ睨むと情けなく悲鳴を上げて、そそくさとギルドから出て行った。
誰がこんなにも可愛いアリシアに向かってゴリラとは……許さねぇ。
そんな冷え切った空間を無視して、そのまま受付嬢さんにF級に見合ったクエストを受ける。
今回は薬草採取と魔物討伐を併用する。
◇
昨日オオカミを狩っていた森にいる。
クエスト内容は回復薬の原料になる薬草と、ここに生息しているゴブリンを3匹だ。
ゴブリンって様々なファンタジーモノに描写されるが、その物語によっては狂暴なのか人っぽく理性をもってるか変わるよね。
この世界ではどういう扱いなのだろう。
まぁ襲ってきたら容赦しないけど。
アリシアに触れていいのは俺だけなのだ。
探知魔法で魔物とか見つけることが出来るが、採取関係だと魔法で解決できない。
ゲームでは、素材入手にはモンスターのドロップか採取できる箇所がマップに表示されているので今回の場合は役に立たない。
スキルでは採取スキルとかあるが、取ってない。
事前に受付嬢さんからどういう薬草なのか教えてもらったので地道に探す。
こういう時、不意打ちが怖いので防御魔法の結界を発動する。
何故怖いのかって?
それはアリシアにダメージを与えるようなスキルや攻撃ができる魔物がいるかもしれないからだ。
まだこの世界こと知らないのに慢心するのは良くない。
警戒しとくに損はない。
◇
一時間経ってやっと必要分を採取できた。
似たような植物があちこちで生えてるから、ずっと薬草の特徴を確認するの疲れる……、もう採取クエストやりたくない。
残ってるのは討伐だけだ。
「”生命探知”」
周囲に魔物がいるか魔法を使って探す。
生物の反応はあるが単独行動を取っているみたいだ。
それを確認するために、便利な探知魔法で気配を消す。
「”気配消失”」
生命探知で反応した生物を確認すると、高さ1mほどの巨大な鼠だった。
とりあえず狩っとく。
さらに奥へと進み、生命探知を行う。
すると複数の反応がして、群がっているように生物を感知した。
反応の近くまで行くと、一つ大きな穴が空いていた。
穴に向かって歩いているのが、厳つい顔をして棍棒を持っている肌が緑色のゴブリンだ。
一匹にならず、人間のように班を組んで作り集団行動で狩りを行っているようだ。
3体ほどの兎を持ち、大穴に入っていく。
どうやら洞窟を住処にしてるみたいだ。
コミュニケーションが出来るのか、試してみるか。
気配消失の魔法を消して、洞窟に向かう。
急に出てきた俺に気づいたのか、臨戦態勢を取り始めた。
「オマエ、ナニシニキタ」
「ココワ、オレラノ、スミカ」
「ニンゲン、キタ、キタ、シカモメス」
カタコトだが人間と同じ言語で発してきた。
「ワタシ、ヨウスミニキタ」
俺はゴブリンに合わせるようカタコトで話す。
「ニンゲン、オレラヲナメテル」
「ジョウシツなメス、オウニケンジョウ、スル」
こいつら欲情してやがる……!
「テイコウスルト、コロス」
「イマ、オドシタナ? アリシアに欲情したな? 死刑」
「ナニイッテイル」
「”消音空間”」
ここら一帯に音が漏れない結界を張り、悲鳴や助けを呼ばないようにする。
「”魔力矢”」
魔力を固めて具現化した矢を頭に放ち、瞬殺する。
その後死体をアイテムボックスに入れて、結界を解除して街に向かった。
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