72ー 似たような文章
「ここから水がないんですか…… いてて……」
周りを見ると粉々になった床の残骸が転がっており、床が見事に水浸しになってしまっています。
どうやら排水のある部屋のようで、徐々に水かさが減っていっています。
『一応心配しておくけど大丈夫?』
「一応って何ですか、まったく」
『だって自分の体だもん。 わかるよ』
「そういうことですか……」
それよりここはどこでしょうかね。
『何か椅子みたいのがあるけど?』
リアに言われた方を見てみると確かにきらびやかで、豪華な椅子がおいてありました。
――誰かが座ってたみたいで、見事にがれきで潰されてしまっていますが。
「――もしかしてここのボスだったりします?」
『ありそう……』
まずいです。
ミロクの目的がこのボスだったら、取り返しがつきません。
私が倒したことにはなっていないみたいで、ボスドロップが無いので代わりにアイテムをあげることもできません。
「リア…… どうしましょう……」
『―――』
「リア?」
何かに集中しているみたいで、返事をくれません。
「リア! 何してるんですか」
『あ、ごめんごめん。 この椅子に刻まれた文字読んでた』
「この文字ですか……? なんて書いてあるんです?」
椅子のひじ掛けに刻まれた文字…… というより絵柄。
私には文字とも思えませんが、この世界の住民であるリアには読めるんですかね。
『――蒼き海、空。 世界は染まってしまった。 今の最前線はこの神殿だけである。 のちにここも沈むであろう。 だってさ』
「――何か聞いたことありますね」
惑星【アース】のオルドルと惑星国家【トラル】の関係性。
何となくですが、似ている気がします。
『流石にこの星も似たような結果で滅びるなんてことは無いでしょ…… ないよね?』
素晴らしいタイミングで、私の押し込んだ球が転がってきます。
――もしかして、もしかします?
【龍式動力増幅器 『偽造体』】
「『うわぁ……』」
多分、私の胸にある【龍血晶】。
おそらくこれと同じものです。
オルドルの時は【龍骨晶】の暴走でしたが、今回はこれが暴走して滅んだ……
そう考えるのが妥当でしょう。
「どうですか? 何かわかります?」
『今回の暴走は過剰循環で起きた水没だと思う。 ほら、水の循環ってあるでしょ?』
「【アース】も【アース】ですが、【サンドラ】も【サンドラ】ですね。 ……ということはオルドルみたいな大物がいるってことですかね?」
『でも今回は止まってたし、すんなりと入れたよ?』
「何がトリガーになってるか分かりませんねぇ……」
そんなこんなで色々と考えているうちに、外で物音が聞こえてきます。
ミロク? それともこの球をいじったことで出てきたボスモンスター?
どっちにしても少し警戒しておいた方がよさそうです。
すぐさまレーザーを撃てるようにしておきます。
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「どおりゃっそーい!」
「だ、団長! 早いです。 おいつけないです」
「――ミロクでしたか。 結構早かったですね」
「【聖剣】で突っ込めば早いに決まってるです」
「脳筋ですね……」
「あなたに言われたくはないかなぁ…… 後ろのアレ何?」
「ああ、あれですか。 私が出てきた場所がこの真上だったらしくて床をぶち抜いたらここに落ちてきました。 同時に瓦礫でボスが死んじゃいましたが」
「いや、あれ…… 明らかにおかしいよね?」
ミロクの指さした方を見るとさっき押し込んだ球が、黄色に光り輝いています。
『起動した……? でも何で?』
「わかりませんが面倒くさいのは勘弁です。 ネロ、お願いします」
「わかったです」
ネロの狙撃銃と私のレーザーで光り輝く球を攻撃するも、全く効いている気がしません。
「――そういえば何です? あれ」
「【龍式動力増幅器 『偽造体』】とか言う私の倒したボスの似た者同士ですね」
「――あのレーザーで倒せたボスをこんな低火力で倒せるとは思えないです」
そういえばそうですね。
攻撃を受けた球は、さらに光を強くし金切り音と共に白い靄が、龍の形を成していきました。
そして形作ると同時に、神殿が破壊されていきます。
「つかまって!」
「はいです!」
「それじゃ遠慮なく」
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高速で浮くミロクにつかまるときに見えたのは、オルドルと似たような見た目の半透明のドラゴン。
まだ完全に成長しきっているようではないですが、面倒くさいことになりそうなのは確かです。
「何かセツナと戦ったボスと似てるね」
「多分同種です。 少し行ってきますね」
私がいじったせいで起動したかもしれないボスです。
なに、1回倒したボスと似ていますし。
多分行けると思います。
「――たまには頼ってくれてもいいんじゃない?」
「――やりますか? ミロク」
「うん。 ボスを倒したのがセツナばっかりっていうのもどうかなって感じだし。 ネロ、援護よろしく」
「ハイです」
「じゃ、たまには私のかっこいいとこ見ててよ」
「負けるとは思いませんが、楽しみにしておきますよ」
ネロは狙撃銃を構え、ミロクは空を飛び、ドラゴンに向かっていきました。