59- ゆがんだ秩序
「ん…… あ……」
どうやら生きているみたいです。
頼みの綱の【仮初の心臓】はズタズタになっていますが、うまく発動してくれたみたいです。
『セツナ! よがっだぁ! 生きてるぅ……!』
いやまあ、【仮初の心臓】が発動しているので死んではいるんですけど……
「というか何でリアの声が私の胸から…… って、え?」
あのブロックから出た杭の刺さった場所に赤く輝く球体が埋め込まれています。
つついてみてもカチカチという心地いい音が響いています。
「特に問題はない……? むしろ体が動かしやすい?」
何か今までの体とは違って現実の体により近づいたような気がします。
球体が埋め込まれる前もほとんど違和感なしで動かせてましたが、今の方が何かスムーズです。
――ぶっちゃけ戦闘に支障が出るかというと出ない気がしますが。
『どう? どう? どうなった? どうなった?』
「落ち着いてくださいリア。 というかあなたも何が変わったか報告してくださいよ」
『私? えっとね、常にエネルギーを増幅してるみたい。 倍率はそこまで高くないかなぁ? どこに流してるかは知らない』
「なるほど、ありがとうございます」
どうやら【龍血晶】も動いてはいるみたいですが、そもそも【龍血晶】に流れることができるエネルギー量が結構多いので、その量が体の中に流れているとなると結構恐ろしいですね。
とりあえず今わかるのは、私は【龍血晶】を埋め込まれてしまったということですか……
「うーん…… ていうかビルドアーマーもないですね」
そういえば腕と足も治っています。
そういえば【龍骨晶】はどこ行ったんでしょう。
「リア、一緒に入れた【龍骨晶】を知りませんか?」
『【龍骨晶】? ああ、秩序のコアのことね。 えっとね…… そこからエネルギーが私に流れ込んでいるみたい。 場所はどうも私の真下……?』
「真下ってことは私のお腹の中ってことですか!?」
『そういうことになるかなぁ』
確かにお腹に力を入れれば、お腹がポカポカしてきます。
源泉の出力調整は私ができそうですね。
「でも、これ明らかに人間じゃないですよねぇ」
一応確認してみますか?
ステータス
名前:セツナ
種族:マキナウス LVEX
職業 メカニック
スキル:SP 30
【散弾銃術】 【高速作成 Ⅱ】 【体術 Ⅱ】【レーザー銃術】 【長剣術】
【二刀流】【鑑定】【調査】
やっぱり種族が変わっています。
しかもレベルがEXと特殊表記になってますし。
「一応実験は成功してるみたいですね…… ここの前任者は2つのコアと一体化して何がしたかったんでしょう。 失敗したときは全人類機械になって【アンドロイドの墓場】なんて惨状になっているっていうのに」
少し成果というか、失敗したときのデメリットの方が大きすぎる気がします。
『――多分、秩序の力で住民を機械にした後、私の【円環之龍】で機械としての生活を循環させる…… これが科学者のしたかったことなんじゃないかな?』
「そうですか…… 確かに機械なら絶対に命令には忠実ですし、ルールも守ります。 確かに秩序はあるでしょうが幸福なんですかね?」
『さぁ? まあでもそれがあの科学者にとっての幸福だったんでしょ。 実際みんな死んじゃったから幸福とかそんなのも関係ないし』
「ふふ、そういうことですか」
成功は機械が機械を制御する秩序溢れるディストピア。
失敗は死という名の幸福。
まさに【幸福、そして秩序】というわけです。
【ダンジョンクエスト 『トラル国営研究所』 のエクストラクリアを達成しました】
「報酬は新種族の獲得だけですか…… 帰りましょうか、リア」
『さんせーい』
帰りに石化した前任者に合掌していきますか。